少女アルカナ...find the honest

十文字兄人

episode0……愚者

 ある国の小さな町外れに建つ古いレンガ造りの家に、アルカナという名の12歳の少女が住んでいた。

 アルカナには両親がおらず、70歳のおばあちゃんとの二人暮らし。老体に鞭を打ちながら働くおばあちゃんの手伝いをしながら過ごしている。しかしそんな二人は、生活に困難しているというわけではない。


 その理由は、アルカナにあった。

 アルカナには不思議な力があり、町中の人々が彼女の不思議な力に頼りやっている。その度にお礼として様々な頂き物を得ていた。

 その不思議な力とは無くしたものを捜し当てるというものだった。


 そもそもという名は彼女の本当の名ではない。彼女がその力を発揮する際に、「あるかな?」と呟くことから彼女のことを皆、「アルカナ」と呼ぶようになったのだ。


 そしてこの日も、彼女の力を求めて一人のピエロが訪れた。


「アルカナちゃん、お願いします」


「何を捜して欲しいの?」


「僕が仕事で使ってるコインが盗まれたんだ。あれがないと仕事ができない」


 ピエロはとても慌てた様子だった。それを見かねてアルカナはすぐに頷き目を閉じた。


「う~ん、あるかな?」


 お決まりの呟きとともにアルカナは瞑想する。そして「あ」と声を上げたアルカナはピエロに言う。


「あったよ」


「本当! いったいどこに?」


「ほら、今あなたのポケットの中に入ってる」


「え?」


 ピエロが自らのポケットを確認すると、確かにそこには一枚のコインが入っていた。


「ああ、なんてこった。こんなところにあったのか!」


 少し大げさに頭をかくピエロのそれは、ひとつのパフォーマンスのようにも見えた。するとそこで、ふと疑問に思ったことをアルカナは聞いてみた。


「ねえ、ピエロさん。ちょっと聞いてもいい?」


「ええ、なんなりと」


「あなたはいつも笑いながら泣いているのね。だからわからないの。今あなたは無くしものが見つかって嬉しいの? それとも自分の間抜けさに呆れてしまって悲しんでるの?」


 そんな素朴な疑問に、ピエロは優しく答える。


「それは、どちらも違います。僕が笑いながら泣いているのは、僕がただ愚かな存在なだけです。それ以上でも、それ以下でもありません」


「なんだかよくわからないわ。……だけど、あなたの瞳は不思議なほど澄んでいるのね」


「ああ、わかってもらえますか。ありがとうございます。そんな言葉をおっしゃってくださったのはあなたが初めてです」


 ピエロはそのまま頭を下げると、感謝の気持ちと言って小さな袋に入った金貨を置いて帰ってしまった。



 その後、そのピエロは見つかったコインを使い、町の中心で達者な芸を披露していた。数枚のコインを天に放り投げまるで、そこに浮いているかのように魅せる。その芸は決して他のものには真似できない。彼唯一の芸だ。

 すると、その芸を見ていた一人の少年が言った。


「ピエロさん。それ、いつも使ってるコインと違うね」


 ピエロはその言葉に笑いながら泣くだけで、肯定も否定もしなかった。

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