第25話 その理由 - 2
静寂に包まれたその道に、私達以外に人影はなく、規則的に並ぶ街灯は立ち止まったままの彼女を照らし続けていた。
「クリスマスイヴに伊勢神宮とか、やっぱり変だよ」彼女は、私が何を言っても、そんなことを繰り返して言った。
する方にも思うところがある。
される方にも思うところがある。
「今日は楽しくなかった?クリスマスに伊勢神宮に出掛けて、ディナー行って。しかも、ホーム間違えたりのトラブル盛り沢山で、忘れられないクリスマスになったっしょ?」
「うん。楽しかったし、多分ずっと思い出すと思う」
「なら、もう泣くのやめなよ。こういうの憧れでもあったわけで…クリスマスに出掛けて、オシャレなお店でプレゼント渡したりって」
「そうなの……?」
「うん。男の憧れ?ってやつだと思う。だから、付き合ってくれて俺の方も感謝してるわけで。それに、あれだけイレギュラーなトラブルが連続したのに、ちゃんと最後まで計画通りにできたから、俺的には大団円だよ」
伝えたい気持ちが言葉を続ければ続ける程遠くなっている気がした。だから一度言葉を切ってから、一呼吸置いてから、
「だから、今日はありがとう」と言った。
「私も、ありがとう。もう言葉が出てこないけど、ありがとう。本当にありがとう」
と彼女はさらに泣き続けるのだった。
今日は色々と詰め込み過ぎた。経験値もないくせに背伸びをして頑張った。
彼女を送り届けた帰り道、澄んだ夜空に輝くオリオン座を見上げながら息を吹き上げながら何度となく想い返した。
「今日は色々ありすぎた。頑張った……頑張った……」本当に頑張ったと思う。
だが、
「……この意気地なし……」
一番伝えたかったことが伝えられなかった。
私はオリオン座を見上げながら、涙を堪えて夜道を歩いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます