第23話 クリスマス ディナー - 2

 プレゼントはシンプルなトップにダイヤをあしらった清楚感のあるネックレスにした。ブランドに疎い私はとりあえず、名だたる百貨店に赴いて見て回り、好意的に品選びに協力してくれた店員さんの居るジュエリー店で購入した。


 彼女は「私、本当に用意してないのに、こんなのサプライズ過ぎるよ」と譫言のように繰り返しながら、慎重に包装を解いて行った。


「本当にありがとう」


 幾分か潤んだ瞳がでこちらを向けながら、彼女は白い箱に姿よく収められたネックレスを見せながら私に言った。


「喜んでもらえたなら、選んだ甲斐がありましたとも」


 私は頭を掻きながらやっとそう言えた。


 その後、彼女はしばらくの間、箱におさめられたその姿を見ていたが、やがて、思い出したようにネックレスを取り出すと、慣れない手付きで自分の首元に飾った。 


「どうかな」


 ブラウスのボタンをもう一つ開けて聞く彼女。


「すごく似合ってる」照れる私。


 私の想定では、すでに料理が運ばれてきているはずだったのだが、混み合っているせいか、まだ料理は運ばれてきていない。


 この沈黙をどうしようか困ってしまった。


「ネックレスしてきてなくてよかったよ」私はふと思い浮かんだことを言った。



「この服に合うの持ってなくて。と言うより、普段アクセサリーつけないから持ってないんだよね」


「なんかそんな気はした」


「イヤリングくらいは買おうかな」周りを小さく見回してから、彼女が言った。


「ピアスじゃないんだ、イヤリングって久しぶりに聞いた気がする」


 私がそう言うと、彼女は自分の耳たぶを触りながら「だって、痛いでしょ。私、耳たぶ分厚いから絶対、開ける時痛いし、すぐに塞がると思うの」と言うのである。


「そうかな?普通だと思うけどな」


「絶対そうなんだって」


 断固として彼女が言うので、私が身を乗り出して彼女の耳たぶを見ようとしたタイミングで前菜が運ばれて来た。


 ほぐれてきた彼女と私の緊張が俄かに高まったことは言う間でもなく、私は彼女の耳たぶを見る機会を失ってしまった。

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