第12話 サズカタウンのロー
いつか見た夢の中で、全身に傷を負った少女は言った。
「一つだけ、人生をやり直す方法があります」
自分がその少女に何と答えたのかは覚えていない。
少女はこう言っていた。
「幸せになってください」
そこで夢は覚めてしまった。
ライドとレフトの二人は二人が来るときに通った森を通らないルートを選んだ。この二十五番道の先に「サズカタウン」がある。
「遠回りだけど、食料調達にはちょうどいい」
レフトが手帳片手に言った。
「二人の持っている食料でも全然足りなかったからね」
ライドは相槌を打った。
看板を確認しながら、分かれ道を選ぶ。
「ルート62。サズカタウンはこの先だ」
一線を超えると、雰囲気はがらりと一変する。
「ここが、“商人の聖地”サズカタウン……!」
遠くから大声が聞こえてくる、活気ある街。
「確か、西が食料市だったはずだ」
「ここは南側だね。この辺りは家かな……?」
道の傍には壁があり、窓が沢山ついている。
笑い声の響く小路があり、ときおりたくさんの子供やカゴを持った人とすれ違う。
かくかくと折れ曲がっていく道の先に、大勢の人がちらちらと見えている。
「あれが大通りだから、その先に行けば市場になるはず」
地図をしまって、レフトは言った。
「ああ……にぎわっているなぁ」
僕が感嘆をもらしたので、レフトが答えようと何かを言いかけたときだ。
「大変だ! みんな、聞いてくれ」
叫びながら僕らの前にある店に駆けこんでいく人がいた。
「どうしたココ」
「ロペロ村が大変なんだよぉ」
「詳しくはカールのテレビでぇ」
「はあ? なにがどうなったって?」
「“黒軍”だよ! 攻めてきたんだ。〈スター〉が戦っているが、もう持たない!」
ざわめく店内。
〈スター〉は自衛のための組織であり、警察や自衛隊などと例えれば似たようなもの。
「そ、そうだ!もっとたくさん〈スター〉や〈キッド〉を呼べ」
「スターなんか役に立つわけないだろ」
「こんなときこそ役に立つべきよ」
「黒軍」、それはかつて世界を恐怖に陥れた勢力。
十数年前、英雄によって倒されたはずの悪だった。
それらの恐怖はいまだ根付いている。
「行かないで、ロウさん!」
「放せ!喋っている暇はない、そこに弟もいるんだ!!」
ひときわ大きな怒号が発せられた。
「ろーさん、あぶないよ」
「ロウ、そんなの死にに行くのとおんなじだ」
「ロー、オレも行くぜ。村を汚されてたまるか!」
大きな声と惜しむ声。
レフトが声を出す。
「ライド、実はツリーハウスタウンを襲った者も黒軍なんじゃないかって考えていたんだ」
「じゃあ、襲ったやつがそのロペロ村にって可能性も?」
木の実の渋みを思い出したような顔でレフトは肯定する。
「何も不思議じゃない。距離も遠くない」
そして僕に聞いた。
「行くか?」
「うん。行こう」
無視はできないハナシだ。
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