第9回 客「俺が身分証明書だから手続きしろ」私「」



 皆さん、お疲れ様です。

 そして私と同じ携帯業界の方、今日もお疲れ様です。

 ふぁいぶです。

 いやぁ、夏が近づいてきたって感じですね!

 iphone7の問い合わせが増える増える!

 皆さん待ち望んでいるようですが、私としては何故あそこまで必死になってiphoneを求めるのかがさっぱりわかりません。

 いや、私がひねくれているだけかもしれないですね。皆が騒いで持ったり見ているものは自然と興味が薄れてしまうので。


 さて、今回は本人確認についてです。

 皆さんは経験した事ないでしょうか? 携帯ショップにプラン変更やら機種変更やら何かしらの手続きをする際、


「本人確認書類はお持ちですか?」


 こう尋ねられるはずです。

 通常なら常備しているはずなのですが、やっぱり人間、忘れる事ありますよね?

 それで普通なら、皆さんは取りに一度帰って、再度来店してくれるのですが、そうでない人が残念ながらいます。しかも激怒して。

 そもそも何故、本人確認をするのか?

 これは言わないでも理解されていると思うのですが、私達は個人情報を扱っているので、ホイホイ情報を提示する訳にはいきません。それが例え犯罪者であっても、警察に対してでも同様です。国家権力である警察に、


「実は先日、○○という指名手配犯がこの店で携帯を契約したみたいなので、情報を提供していただきたい」


 と言われても、


「申し訳御座いません、ご本人様以外に個人情報を提供出来かねます。警察専用窓口が御座いますので、正規の手順を踏んで頂いて宜しいでしょうか」


 とお断りする程なのです。

 それ程我々携帯スタッフは、個人情報を厳しく取り扱うルールがあるのです。

 まぁ、でもお客様にとってはそんなのどうでもいいんでしょうね。その場が凌げれば。

 今回は一番に多い事例と、その次に多い事例を紹介したいと思います。

 一度でもやってしまった方いらっしゃいましたら、恥じてください。


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 中年層のお客様が機種変更をしたいとご来店されました。

 見た目からして『ザ・ガンコ親父』な雰囲気を漂わせておりました。

 実際の機種を見せながら機種が決まり、本人確認書類を求めると、


「は? そんなのある訳ないだろう」


 えっ、あなた車で来たよね!?

 ある訳ないってどういう事だよ!!

 心の中ではそう思ってしまっています。


「申し訳御座いません、本人確認書類がないと手続きは出来ません」


「は? そんなのお前らのルールだろう? 俺が機種を変えたいって言ってるんだから、さっさとやればいいだろう」


「申し訳御座いませんが、ご提示して頂かない限りは一切の手続きは出来ません」


「お前、俺を見てわからないのか? どう見ても俺が本人だろう?」


 わかる訳ねぇだろう!!

 心の中でツッコミを入れつつ、断りを入れるがまだ粘ります。


「お前さぁ、何でわからねぇんだよ。俺が本人って言ったら本人なの!! 俺が身分証明書なの! わかる? Do you understand?」


 何で急に英語なんだよ(笑)

 ここまで来ると、内心哀れとしか思っていないので、逆に強気に出たりします。


「お客様、私達はお客様の大事な個人情報を扱っております。もしお客様が仰る通りの形で業務をしますと、誰でもお客様の情報で機種変更が出来てしまいます。つまり悪用し放題になってしまいますので、本人確認書類を拝見させて頂かない限りはできないのです」


「ちっ、わかったわかった。見せればいいんだろう?」


 ようやくポケットからごそごそ何かを探り、カード上の物を出したのですが……。

 見えない位の速さで右から左へカードを移動させました。


「はい、見せた。これでいいんだろう?(笑)」


 正直私もカチンと来ました。

 徹底的に対抗しましたが、お客様はついに机を蹴ったり大声を出し始めたり。

 その方は、警察にお世話になりました。


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 これ極端だろうと思われますよね?

 でも、月に一度位遭遇します。流石に警察にお世話になる人は少なめなんですけどね(ほぼないとは言っていない)。

 ここまでしてまで見せたくないものなんでしょうかね、本人確認書類。

 それとも、意地でも突き通そうとしたのでしょうか?

 どちらにしても、警察にお世話になったという箔が付いたので、何となくそのときは気分が落ち着きました。すっごいしょんぼりしながらパトカーに乗っていきましたからね。


 さて、次の事例です。

 これも非常に多いです。


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 中年男性がご来店され、お子様の携帯のプラン変更をしたいとの事。

 まず契約名義がご本人様かどうかを確認すると、どうやらお子様が契約者との事。

 となると、ご本人様がご記入した委任状か、お子様が使用されている携帯を持って誓約書を記入していただくかのどちらかになる旨を説明。どちらも持っていらっしゃらないので、手続きはできない事をお伝えするとムカ着火ファイヤー状態。


「何で家族のを手続きできないんだよ!」


「申し訳御座いません、ご家族であったとしても、個人情報は基本的にご本人様以外にはご提示できません」


「おかしいだろう? 金払ってるのは俺なんだぞ? その金払ってる俺が手続きしたいって言ってるんだから、普通手続きするだろうよ!」


「申し訳御座いません、どの方が料金を支払っていようとも、個人情報はご本人様意外にご提示できませんし、プラン変更も受け付けられません」


「あのなぁ、俺は家族の代表なの。大黒柱なの! だから、家族の個人情報は俺が全部握ってるんだからいいんだよ!」


 うわっ、すっげぇ発言!

 ちなみに法律上では家族でも個人情報があり、実際に親でも子でもプライバシー侵害で裁判を起こせます。事例はあるようです。

 つまり、法律上この人はアウトな発言を大声で堂々としている訳ですね。

 こりゃお子様が女の子だったら、何かと嫌われそうだなぁ…。


「もういい、お前の所がこんな酷い所だとは思わなかった。○○○だときっとやってくれるだろうから乗り換えてやる」


「お役に立てず申し訳御座いません。ですが、他のキャリアでも同様のルールとなっておりまして、全ては法律の元の決まり事で御座いますので……」


「そんなのはどうでもいい! 今から乗り換えるから予約番号を出せ!!」


「こちらもご本人様確認書類が必要になりますが」


「あぁぁぁぁぁぁ!! くっそ面倒だなお前!! 何でわからないのかなぁ? 何で俺が親だから閲覧権限があるのがわからないのかな!?」


「いえ、御座いません、法律上」


「はいはいはいはい、法律法律法律法律! 法律が大事だから客の事なんてどうでもいいんだろう? わかりましたわかりましたぁ!」


「申し訳御座いませんが、何卒ご理解をお願い致します」


 最後にF○ckと大声を上げて退店されました。

 何で皆様、途中で英語になるんでしょう。


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 これも非常に多い例です。

 何で自分は金払ってるから家族の情報も俺が見れるって思えるのでしょうか?

 金を払っている事は偉い訳でもないんですけれども……。


 恐らくなのですが、やっぱりまだお客様は神様という認識が抜けていない方が多いのではないでしょうか?

 昔はそうでしたが、今はそうではないです。

 今はお客様と言えど、ほぼ対等なのです。

 私達スタッフは色々提案する、お客様は料金を安くする為に色々と探っていく。

 つまり、今の契約は商談なのです。

 私達はあくまで、お客様に不快を与えない為に敬語を使っているだけであって、決して神様みたいに扱っている訳でもないです。

 そこを理解していない方があまりにも多いので、そう思っている数少ない読者の方は認識を改めて欲しいです。


 言っておきますが、これは本当にある事ですからね?

 他にもお客様がたくさんいる中、こんな事しているんですから。他のお客様に笑われている事を理解してください。


 最後に一言。

 もしかしたら今回の内容で私が何処に所属しているかばれるかもしれません。

 でも、絶対に胸の内に秘めておいてくださいね?

 いいか、ばらすなよ!? ばらすなよ!!?


 以上、最近ガチャ運がまるっきり低迷気味なふぁいぶでした。

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