凶報三連 第二弾(中段)
一番聞きたくない言葉がリューヒの口から紡がれて、俺はもー何回目とも知れん絶句をさせられた。
人間を喰う化身がこの世に居るなんて、
「龍彦―――昔話でも人を襲う化身の話は
ばあちゃんの補足に、俺は妙な納得を覚えた。
確かに昔から人を襲う、もっと露骨に人を食べるっちゅー妖怪の話は、この日本にゴロゴロしとる。
「じ、じゃあ、最近起こってる、連続失踪事件っちゅーのも……」
「おそらくは―――その化身の―――仕業やろね―――」
リューヒは事も無げに言った。
それは「このいたずらの犯人はこの子よー」と、子供が起こしたイタズラの犯人を大人に告げ口する様に軽い物言いやった。
流石にその言い方には、俺もカチンときた。
「リューヒ! 人が死んでる……食われてるっちゅーのに、なんであんたは平気そうにものゆーねん!」
別に俺は、正義の使徒でもなんでもない。
けど、そんな極悪非道は、多分人間やったら許されへん筈や。
「でも―――うちは―――神様やからね―――」
その言葉と、さっき自分で思った事の齟齬に気ーついた。
そうや……リューヒは人間臭いだけで、神様やった。人間やない。
「龍彦―――リューヒは神様やからな―――。人間の世で起こりおる揉め事に―――イチイチ干渉せーへんねんで―――。寧ろ他の神様より―――協力的な方やねんで―――」
ばあちゃんの言葉で、大体理解できた。
人間も化身も現世の生き物で、その二つの種族が起こす“いざこざ”も、やっぱり現世での事。
神であるリューヒには、基本的に預かり知らん事なんや。
リューヒにとっては、化身が人間を補食する事には興味が薄くても、俺の抱えてる悩みには強く興味が湧いた。
ただそれだけの事やったんや。
「……ゴメン……リューヒ。俺、何も知らんと……。」
そんなリューヒを、頭ごなしに怒鳴った事を俺は詫びた。
所謂自分の価値観を押し付けたような物やったからや。
「えーよ―――気にせんとってな―――」
でもそんな俺を、リューヒはにこやかに許してくれた。
ホッとしたのも束の間、新しい疑問がすぐに湧いた。
「でも、ばあちゃん。そんだけ凶悪な化身がこの街に来てたのに、ばあちゃん気付かんかったんか?」
この御山を、この街を長年守ってきたばあちゃんや。
しかも、神様でさえ心を許してる節がある程の実力者。
そんなばあちゃんが、そこまで凶悪な化身の侵入に気付かんかったとは思えんかった。
「化身かて普段は当然―――気配を殺しとるからな―――。人を襲う時と―――補食する時なんかは―――流石に霊気が漏れるはずなんやけど―――……」
珍しくばあちゃんが、言葉を続けるのに言い淀んだ。
けど、っちゅーことは、ばあちゃんにも察知が難しい事やったっちゅーこっちゃ。
「この化身と一緒に行動しとった
「じゃーこの街に来た人食い化身は、二匹居ったっちゅーことか!?」
ばあちゃんの目を盗める化身が二匹……。
俺の勘では、ばあちゃんはかなり強力な接続師であり封印師や。
少なくともこの街の事に限っては、他の術師やら化身に後れを取るとは、到底思えんかった。
「……二匹のうちの一匹はな―――……
「な……なんやて!」
蓬が……人食い化身……!?
じゃあ俺は、人食い化身を助けてもーたんか!?
「……俺は……俺が……」
―――ショックやった……流石にこれはショックや……。
何も知らんかったとは言え、人を喰う化身を、よりにもよって助けてまうとは……。
「龍彦―――蓬は化身やけどな―――厳密には
自分の迂闊さ、情けなさに、声も出せず後悔してた俺に、ばあちゃんが言葉を続けた。
でもそれは、慰めとかやなくて、違う事への訂正やった。
「じんきつ……って、何や?」
色々疑問があったけど、自然と聞いたことの無い言葉に俺は質問を投げ掛けてた。
人間パニクったら、どうでも良い事が気になるんかもしれん。
「人喫と言うのは“人喰い”っちゅー意味やで―――。蓬は人喫の化身やのーて―――ほんまは
また解らん言葉が出てきた。
尸解仙って……何やねん?
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