ACT17 オープニングフェイズ 白井銀造『おめーら! 今日の新聞使ってんじゃねーよ!』

GM:では。次。銀造のオープニングだね。


銀造:ああ。


GM:あなたは、ガーデンの一員ですが、相棒バディを持たず、ただ一人活動を続けているオーダーです。


銀造:まあ、「活動」って言っても、たいした活動してないんじゃないかな。一人だと。あんまり戦闘能力のない《精神投影イメージリアライズだからなー。微妙な感じかと。


GM:うん、まあ、そうだね。で、あなたは、学校で、いつものような日常を過ごしていますが。


銀造:じゃあ、まあ、普通に授業やってー。「じゃあ、今日も、書道部、面倒見ないとなー」って感じかな。


GM:で、虚ろな目をした書道部の女生徒が「ア、ハイ。センセー」みたいな。そういいう。


銀造:「よおーし! 部員でも増やすかー!」


GM:では、全員マインドコントロールされた生徒が……。


クルミ:ちょっと、何やってんの!?


GM:いや、ホラ、《†ブレインウォッシュ》で洗脳されてるから。エ!? 違うんですか?


銀造:いや、普通に違うけど。


GM:あ、違うんだ。


銀造:あのさー、マインドコントロールって、しても良いことなの?


GM:ハァ!? 悪に決まってんでしょ!?


銀造:いや、GMが積極的にマインドコントロールを勧めてくるから。推奨しているのかと。


GM:してません。


銀造:じゃあ、何、このくだり。単にGMがやってみたいだけだったんじゃ……。


GM:コホン。で、まあ、ガーデンの一員で、いつもどおりの日常を送っているよ、と。


銀造:多分、とても無害な感じの人に見えると思うよ。


ふうか:無害?


銀造:生徒たちから「ぎんぞーせんせー!」とか「銀ちゃーん!」って呼ばれてー。


影介:そう言えば、学校の先生をしているのに、任務があったらどうするの? 確か、1週間とかだよね?


GM:その場合は、有給休暇かな。


銀造:有給、すぐになくなりそうだなー。


影介:確かに。


GM:じゃあ、まあ、そんな生活をしている訳だけど。あなたの嫌な過去が思い出されます。


銀造:嫌な過去?


GM:あなたには……、「弟」もしくは「妹」がいました。


影介:かつて?


GM:うん、かつて。


銀造:……うーん。じゃあ、「妹」かな


GM:了解。「妹」だね。あなたが若いころ……、とある高校に通っていたんですけどね。あなたの妹も同じ学校に通っていました。


銀造:うん。


ふうか:(小声で)……まさか!?


銀造:何だよ、不吉だなー。


GM:あなたは卒業できました。……でも、あなたの妹は卒業できませんでした。


銀造:え? 何かよくわかんないけど……まさか、俺が殺したのは妹なの!?


GM:……どうでしょう(ニヤリ)。


銀造:ヒドいや、勝手にぃー。あ、そうか! 妹は留年した上に退学的な……!


GM:あのさー、「生きて卒業できなかった」って言ったよね?


銀造:そんなことは言ってなかった!


GM:そうでしたっけ? でもまあ、それは十何年も前の話ですからね。


銀造:えーと……妹は何で死んじゃったの?


影介:キャンプファイアー?


銀造:え!? キャンプファイアー!?


GM:……それはあなたにとって思い出したくない過去です。あなたは、教職員室で、机の上に置かれている新聞の記事―――『キャンプファイアー大惨事!』に釘付けになります。……そこに出ている高校の名前は、あなたと妹の母校です。


銀造:なるほどー。「……あの偏差値が低い学校かー」みたいな?


クルミ:まあ、偏差値とかは関係ないんじゃない?


銀造:まあ、そうだね。でも学校の先生になってるから、それなりの進学校か。やはり。


GM:……あなたは―――今にして思えば、まったくと言っていいほど、目立たない学生でした。それに引き替え、妹の方は……。


銀造:美人で。


GM:いや、美人かどうかはわかりませんが。


銀造:そこは、美人で!


GM:……美人で、才色兼備で、スポーツ万能で。


銀造:それって「お兄ちゃんの方が代わりに死ねば良かったのに!」とか言われる感じなくらい?


GM:そうそう。


影介:健康的で、家庭的で。


銀造:能力値的には全部18で。それからメンヘラで。


GM:まあ、メンヘラではありませんでしたが。


銀造:そっかー(残念)。


GM:あなたはその高校の名前が目に付くと、あのころの記憶が思い出されます。


銀造:どんな?


GM:懐かしい記憶ですよ。そのころは、あなたも幸か不幸か人の心を操ることも出来ず。妹と無邪気に過ごしていたころですよ。


影介:平和な日々を。


銀造:妹を操りたかったぁぁぁーーー!(絶叫)


影介:妹を操る!?


クルミ:マジか!?


GM:妹を操るとか、どうなの!? ……しかし、「妹がもう何年か生きていれば、好き放題操ってあんなことやこんなことを……。くっくー」みたいな? 銀造さん、最低ですね。


ふうか:妹、大好きだったんだね。キモイ感じに。


GM:今ので一気にクソ野郎になりましたね。


銀造:ハァ!? 勝手に決めたんでしょ? 君らが。


GM:君が言い出したコトだよね?


銀造:言ってないよ。


影介:言ってたよ。「妹をもっと操りたかった」って。


ふうか:言ってたよね。


クルミ:うん。


銀造:言ってない!(断言)





 このようにTRPGの最中に「言った」「言わない」で揉めた時は、強く言い切った者の勝ちである。


 実際、当時、私は強い確信―――信念と言ってもいい―――を持って、こう申し立てていたわけだが。

 改めて録音したものを文章化してみたところ、「何だよ、俺が最初に言い出してるじゃん!」とかわかってしまった。

 しかし、こうして正々堂々と文章化するあたり、私こと下げ友は、漢気(おとこぎ)に溢れていると評価できる。自己評価だけど。





銀造:結局、妹はどうなったの?


GM:あなたの妹は、まったく理由がわからないまま、あの高校で……。とあなたはそれを思い出そうとします。【意志】判定を。いわゆるSANチェック(狂気判定)。


影介:それ、ゲーム違うけどね。


銀造:ハァーーー! 思い出したくないんだよぉぉぉーーー! ……(コロコロ)……。成功! 普通に思い出したよー!


ふうか:どっちだよ!?


GM:了解。そうすると、あなたは拳をブルブルと振るわせながら思い出し、そばにいた書道部の生徒たちが、あなたの周りから離れていきます。


銀造:一応、言っておくと、普通に感じがいいキャラだから。


GM:ホラ、回想モードに入ると、周りの人が「うわ、キモッ!」みたいな。


銀造:何で、そんなにキモいキャラにしたいわけ?


GM:じゃあ、「うわ、怖っ!」で。


銀造:まあ、いいや。


GM:あなたが思い出したのは、あの無残な妹の亡骸……。まさか自分で焼却炉に飛び込むなんて……。


ふうか:自殺……。


銀造:……えっと「自殺じゃ、しょうがないよね!」


GM:うわ、最低のお兄ちゃんですね。


影介:! まさか、妹を操って……!(驚)


銀造:違うわ!


ふうか:じゃあどんな……。


銀造:「……そんな子じゃない。……理由がない」


GM:おおー。


銀造:「……だって、翌日は俺の誕生日だったんだから!」


クルミ:何で、「妹の誕生日」じゃなくて、「俺の誕生日」なんだよー。


GM:それはアレだよ。「お兄ちゃん子」だったっていう……。


ふうか:ないわー。それはないわー。


銀造:まあ、確かに、それはないか。


GM:いやー、キモいですねー。で、あなたはそれを思い出してどうする?


銀造:「どうする?」って言うのは、「『キャンプファイアー事件』も『妹の焼身自殺』も同じネフィリムの仕業かもしれない……」とか思っていいの?


GM:もちろん。そりゃあ、あなたはガーデンの一員ですからね。


銀造:じゃあ、スッと立ち上がって「(抑揚のない口調で)……今日の部活はここまでにします。……先生はこれから1週間ほど休みます」


クルミ:何か、怖いんだけどー……。


GM:生徒たちも「えーーー!?」みたいな反応ですが。


ふうか:怖いね……。


銀造:ん!? え!? 気持ち悪い!?(驚)


ふうか:いや、コワイ。普通に。


銀造:じゃあ、ニコッと笑って……「(朗らかに)じゃあ、今日の部活はこれまで、これまでー!」


ふうか:いや、さっきので良いと思う。


銀造:何なの!? 俺は18なんだよ! 【魅力】が!


ふうか:いや、能力値の問題じゃないよね。


銀造:チクショウ! 何で【魅力】18もあるんだよ!(半ギレ)


クルミ:知らないってば(笑)。


GM:え? 生徒たちを操っているからでしょ? 「センセー、ダイスキー」


銀造:いや、違うけど(笑)。あとさー、そもそも新聞記事を見たのが、確か、教職員室だったような……。今、書道部の部室だよね? 新聞記事を見たのがそもそも部室だったってことでもいい?


ふうか:アレじゃない? 書道をやるために下に敷いた新聞紙がそうだったとか。


GM:ああ、なるほど! 教職員室から持ってきた……!


銀造:それ、今日の新聞じゃねえかよ! 何で下敷きにしちゃってんだよ!?


クルミ:ホントだ(笑)。


銀造:「おめーら! 今日の新聞使ってんじゃねーよ!」


クルミ:やっぱり、お家を出てくる時に一番上に重ねてあった新聞を持って来ちゃったんじゃないの?


GM:ああ! なるほどー!(納得)


銀造:じゃあ、それで(笑)。ん!? そう言えば、俺も書いてんのかな? 書道。


GM:まさか、偉そうなこと言って、自分は書けないとか!?


クルミ:でも書道部の顧問だとさぁ、自分は出来ない人とか普通にいそうだよねー。


銀造:まあ、だけど、俺は《芸術:書道》があるから出来るのか。そうか、俺は出来る。出来るんだ。


クルミ:何でそんなに自分に言い聞かせてるのかわかんないけど。


銀造:うむ。やはり立ち上がって「……今日の部活はこれまでにします。……みなさん、申し訳ありませんが、先生は急用が出来てしまいました。……多分、1週間くらい休みます」


クルミ:結局! おかしー(笑)。


銀造:「その間、部活は……」あ、部長とかいるのかな?


GM:いるよ。


銀造:何さんかな? 多分、女生徒な気がするけど。って言うか、女の子しかいない気がする。


GM:女の子しかいないね。


銀造:えーと……何さんがいるんだ?


クルミ:知らないよ(笑)。


ふうか:A子さんじゃない?


影介:漢字で英子えいこさんだよ。


銀造:「……じゃあ、その間、柿沼かきぬまさん」


GM:「柿沼さん」なんだ。


銀造:「……柿沼英子さん。……今度の大会に出す作品を、帰ってきた時にみんなで私に見せて下さい」


GM:そうすると、生徒たちは喜んで「ハイ」と言いますが……。しかし、あなたには、この後、校長とかを言いくるめる仕事が残っているわけですよ。


銀造:え? そんなの簡単ですよ。《†ブレインウォッシュ》でチョチョイノチョイですよ(ニヤリ)。


GM:うわー、使うんだ。


銀造:まあ、最初は使うつもりはないけど。あ、でもダメだったら使うけど。


クルミ:使うんだ……。


銀造:まあ、普通に校長先生のところに行って「……校長先生、申し訳ありません。……故郷くにの母親が、体調を崩してしまったものですから」と。


クルミ:え、まさか、毎回、この口実?


銀造:いやー、ホラ。〈交渉〉100%あるでしょ? それにダメだったら《†ブレインウォッシュ》で洗脳してー。


GM:何だ、失敗したらC4で学校を吹っ飛ばすかと思ったよ。


銀造:まあ、まだ今はその時じゃないってことで。


ふうか:今だけ!?


銀造:「……あ、授業のプリントなどは、ここに用意しておきました」


GM:じゃあ、〈交渉〉振ってみ?


銀造:……(コロコロ)……。成功。「……そういうことなので、お願いします」


GM:了解。じゃあ、校長先生を言いくるめて出て行くんですね。


銀造:うん。あ、そう言えば、これから行く予定の、事故があった学校って、いきなり部外者が入り込めるの? 関係のない教師が。


GM:多分。何人かの人に「新任で来ました」とか、能力チカラを使って言えば、入れるんじゃないですか?


銀造:ソレだな。


GM:ねー、どこのいかがわしいゲームの主人公だよ、お前は!?


銀造:あと、その学校と、ここの学校ってどのくらい離れてるの?


GM:それなりの距離だけど。車なら2時間とか。


銀造:車がないから、電車かなー。


GM:じゃあ、プラス1時間。


クルミ:結構、遠いね。


銀造:……これって、ガーデンの仕事とは関係がないんだよね?


GM:はい、関係ありません。


銀造:勝手にやっても大丈夫なの?


GM:はい。道端でいきなり関係もなく能力を使うのは問題ありますが。今回の場合は大丈夫じゃないですか?


銀造:何だ、てっきり『第二臨教特命教師』的な感じで派遣されるのかと思ってたよー。


GM:お前は、『低俗霊狩り』の『田中源一郎』かよ!?


銀造:だって、アレ、カッコイイじゃん。俺もメガネかけてるし。


ふうか:あ、メガネ、かけてるんだ。





 ―――そう。

 かの偉大な漫画家『奥瀬早紀おくせ・さき』先生(現在は『奥瀬サキ』)が描いた初期の名作『低俗霊狩り』。

 そこに登場する冴えない臨時教員(メガネ男子)の『田中源一郎』は、何と『第二臨教特命教師』だったのだ!


 きっと、田中源一郎も生徒を《†ブレインウォッシュ》していたに違いない!(←違)


 それはともかく、面白いから読んでみてね!





GM:まあ、今回の君のPC④というのは、「ガーデンの依頼ではなく、自分で勝手にやる」という関わり方なので。


銀造:なるほどー。じゃあ、ガーデンの仕事とは関係なく、新聞記事を読んで、自分の過去の苦い思い出をほじくり出されたので、気になって高校まで確認に行く、と。


GM:了解。じゃあ、銀造のシーンは、高校を去るところでカットです。


銀造:りょうかーい!

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