第91話 浅い眠り


 転寝うたたねをしていた

 時間にすれば ほんの数分

 短くて浅い眠り

 でも とても長く感じられた

 

 夢を見ていた

 懐かしい顔があった

 ずっと会いたかった 大切な親友

 親友が正しい

 

「ごめんなさい」


 躊躇ためらいがちにボクが口にした言葉

 ずっと彼女あのこに言いたかった言葉

 彼女あのこは首を何度も横に振る

 ボクに向けた笑顔はあの頃と同じ


 それは ボクの願望が夢に現れただけ

 そんなことはわかっている

 彼女あのこはもういないのだから

 この世には存在しないのだから

 

 でも つながっていたと思いたい

 浅い眠りなら会えてもおかしくない

 それは 夢とうつつの間にある世界だから

 いろんな世界のいろんな思いが交錯する空間だから


 彼女あのこにはもう会えない

 でも 思いは伝わった

 そう自分に言い聞かせるのはすごくズルイこと

 そんなことはわかっている

 

 でも 他に思いつかないの 

 自分を救うすべ



 RAY

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