第16話 夜のウソ発見器


ライトが落ちた店内に流れるのは

心地良い ピアノの音色


窓際のカウンターに腰を降ろすと

眼下には 宝石を散りばめた夜の街


ぼんやりと浮かび上がる あなたの横顔

オフィスのそれとはどこか違う


いつもは仕事の話題で盛り上がる私たち

でも 今夜はそんな話題が似つかわしくない


一日が終わりを告げる時刻

ピアノの音と二人の会話しか聞こえない空間

肩が触れあうのが自然な距離


夜空に手が届きそうなラウンジ

私たちにとって初めてづくしの場所


言葉が少ないのはなぜ?

瞳をそらすのはなぜ?

時間を気にするのはなぜ?


心の中で「なぜ」を繰り返す私

答えはわかっているくせに


――カチッ――


頭の中で聞こえたのは

何かのスイッチが「ON」になる音


夜のウソ発見器が動き出す


自分についてきたウソは もうつき通せない

心に秘めた思いは もう隠しきれない


今日が昨日となったとき

あなたの隣にいるのは 今日の私とは違う 別の私



RAY





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る