グリプス・サーガ・オンライン

Yuyu*/柚ゆっき

プロローグ

ゲーム購入とキャラメイク

 VRシステム。日本語で言うなら仮想現実システムだったか。

 なんかそんな感じの、俺が中学の頃だったらライトノベルとかゲームの設定に過ぎない夢物語だったんだが。気づけば高2の春にその現物――それもフルダイブシステムっていう完全版が発売された。

 俺もゲーム好きとして欲しくはあったが、予約抽選にことごとく漏れてしまい、最速プレイは叶わなかったんだけどな。

 まあ、だがそんなことは些細な事だ。なぜなら俺は夏休みに入って半分くらいが過ぎた日の今日、そのゲームを手に入れることができたんだからな!

「早速、プレイだぜ」

 家での姿はジャージが安定、高校はなんだかんだいっているが友達はほとんどいない。引きこもりの「ヒッキー」のアダ名が、自分の知らぬ間に広がっている男の俺はそう呟いて、パソコンとVRシステム対応ハードゲーム機、《VRNEX》の電源ボタンを押した。

 説明書に書いてあったとおりに、ベッドの上に寝転がってな。


 ***


 スイッチを入れると、俺の意識は一時的に光りに包まれて真っ白になるが、次に目を開いた瞬間に、空を飛んでいた。

「うおっ!?」

 ゲーム内とはいえ、結構な驚きに襲われて声を上げてしまった。

「え、えっと、この後どうすればいいんだ?」

 操作がわからずあたふたしていると、目の前にタイトルがゆっくりと表れた。そして【手を空中にかざしてください】という案内がでたのでやってみると、【最初から】の文字がでてきた。メニューの開き方らしい。

「もちろん最初からだっての」

 そのままメニューをタッチしてみると、周りの景色が変わる。目の前には鏡があって、その他にもクローゼットとか武器が飾ってある部屋だ。

『キャラクターメイキングを始めます。この部屋にあるものからご自由に選択をどうぞ。現実の体をスキャンしたアバターを作る場合は鏡の横にあります水晶に手を触れてください』

 そんなアナウンスが部屋の中で流れる。

 俺はとりあえず水晶に触れると、体つきとか髪の長さ、顔の形とかがリアルのものになった。

「うえっ……髪型は変えたいな。身長はまあ低めだけどいいとして」

 髪何ヶ月ぐらい切ってねえっけな。目は隠れて後ろも首隠れて縛れるくらいにはなってる。

 あれ、でも髪型の変え方ってどうするんだ。

「すいませーん!」

 ヘルプを出してみる。

『ヘルプの際は内容を口頭でお伝え下さい。システムが一番近い答えを検索し返答させた頂きます。それでもわかない際は、本棚の説明書を参照ください』

「あぁ、口で言えばいいのな。髪型の変え方教えて下さい!」

『アバター髪型の変更ですね。ゲーム内のNPCショップか【美容師】のサブ職を使っているPCの技能で変更が可能です』

「あ、えっと、キャラクターメイキングの髪の変え方を教えて下さい!」

『キャラクターメイキング時の顔と髪型の変え方ですね。鏡を前に念じることで変更することができます。その他、メイキングルームにあるカタログからえらんでいただくこともできますのでお使いください』

 すごいな、たしかにこれは仮想現実だわ。現実って言葉使って大丈夫だわ。

 俺は言われたとおりに、鏡の前にたって「髪よ短くなれ」と少し口に出してしまいながら念じた。

 すると、髪は短くなったが……こう、本当に短くなっただけだった。

「短いのすきじゃないから、こんなに短くなくていいんだよな」

 パーマ屋とかに置いて有りそうな髪型のカタログを手にとって見てみる。ショートの欄は読み飛ばして、ミディアムの欄に行く。

「後ろ髪は長くていいか……」

 なんとなくそう思った。ボサボサじゃないけど、ストレートじゃなくてトゲトゲしい跳ねみたいな髪にして、前髪だ……。

「こういうのはさっぱりわからんし、目にかからないでいい感じのこの髪型にしておくか」

 完全に感覚だけで髪型選択を終えた。

 その後には、髪の色を少し青っぽくして、服装も初期で選べる中で一番気に入ったコートのような青い服装を選ぶ。

「そんで最後に……初期武器なわけだ」

 このゲームは《メイン職業》と《サブ職業》があり、サブ職業は条件を満たせばかなり多く取得できる。

 ただし《サブ職業》はプレイ中に使えるものは限られていて、拠点じゃないとその付け替えはできない。わかりやすくいうと学校の教科書は多くあるが、持っていくのはその日にある教科だけで、ほかは重いし持って行かないあの感じだ。

 置き勉してる奴についてはしらんが、このゲームでは置き勉はふかってことだな。

 まあそいつはいいとして、《メイン職業》は実は最初に決めるわけじゃなく、ゲームを初めて10レベルになるころにクエストで選ぶことになるらしい。

 だからこそ、初期武器はなんでもいいわけだが……それでも、影響が大きいと掲示板では書かれていた。なにせ仮想現実だから、慣れというものがシステムアシストがあったとしてもどうしても存在するらしい。

「剣はなんとなく嫌なんだよな……盾……よし、俺はこいつを選ぶ!」

 俺はそういって、一番右においてあった片手斧と片手盾を装備した。

 そしてキャラクターメイキングを終了させる。

『キャラクターメイキングお疲れ様でした。ようこそ“グリプス・サーガ・オンライン”へ』

 これから俺の冒険は始まる。

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