第10話
「それでは、こちらの書類の太枠をご記入ください」
1番窓口で渡されたのは、横長の羊皮紙であった。少し斜めに、スタンプで枠が施されており、勇者と司祭は羽根ペンで書き込んでいく。
「職業は『司祭』でいいかしら?」
「国際基準となっております。回復魔法の使い手であれば『白魔導士』になります」
「『司祭』、もしくは『僧侶』って書きたいのに……」
司祭と書けなかったのでしぶしぶ『白魔導士』に就職してうなだれる司祭を横目に、勇者も質問した。
「いちおう『勇者』なのですけど」
「『無職』とお書きください」
「いやです。家電量販店員でもマジックアイテム・チェーン店の店員にはならないので」
言うなり、リストの最上段にある『戦士』と書き込む。
窓口の係員は書類を一読すると、
「では、2番の窓口へお進みください」
と誘導する。
「こちらの窓口では負傷時や緊急時の連絡先の登録を行っております」
「教会にしておけばいいわねっ!」
独り身の勇者に勝ち誇ったようにのけぞる司祭。
「なお、破壊した壺や建物、故意に怪我をさせた場合の補償の請求がまいりますので」
「「コイツにしてくださいっ!!」」
二人は一斉に、後ろに控える王女を指す。
「コイツとは……まぁ、仕方ないのじゃ」
勇者の羽根ペンを奪い、達筆で書き込む王女。最後に、
『
の判を押す。
「妾の用は終わったのじゃ」
王女は脱兎のごとく立ち去った。
「出発前に妾のところへ来るのじゃ」
去りゆく王女を見届けて勇者がぽつり。
「なんで私たち、漢字で書いているんだろう?」
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