(IV)

第23話

「勉強会しようぜ! 浩一、祐佳里と隣の七星連れてこい!!」

 いつもどおり夕方遅く、食事の準備に取りかかろうかと考えていると、案の定電話が鳴る。自動で留守番電話モードになると、スピーカーから金平先輩の声が流れるのはいつもどおり。ただ一つ違うのは、随伴者を要求してきたことだった。

 その一通りのセリフが終わると、電話切れる。

「はぁ」

 俺は深いため息をついた。なんて言っても始まらない。勉強会と言っても口実であり、実際には俺が作った夕食を肴にドンチャン騒ぎ。ま、未成年故に酒盛りパーティーになったことがないのが唯一の救いであったが。

 祐佳里の方を向くと、従妹は、今日受け取った教科書や副読本などを整理していた。

「祐佳里の方がよほど勉強会をしているよ」

 ふいに口をつく。

「何か言った?」

「いや、先輩たちに呼び出されたんだが……祐佳里、行くか?」

 祐佳里はちょっと考えて、……指を立てて首をかしげ、考えている仕草がちょっとかわいい。

「いいけど……」

 考えていた割には適当な答えだな、と苦笑いしつつ、もう一人のほうを、なんて考えていると、

「ぉ兄ちゃんに変な虫が付かないように、見とかないと」

と祐佳里が呟く。

「七星……莉紗も呼ばないとな」

「別に呼ばなくていいじゃん」

 そんな、ちょっと冷めた会話を交わしていた所に、ドアを叩く音が混じる。

「こーいち、こーいち、花村浩一ーーーーっ!」

「そんなに叩くな、莉紗」

 玄関ドアのほうに俺は駆け寄って、スコープを覗く。真っ黒、って莉紗の瞳か。

「そんなに近付いたら、ドアも開けられないじゃないか」

「こーいちが私の顔に傷つけたなら、一生かけて面倒見て貰うんだからね! 一生、大切に扱ってよね」

「ドア開けるから、ちょっと離れてよ」

 ちっ、と舌打ちする音がドア越しに聞こえてくる。スコープで充分離れたことを確認してから、ゆっくりとドアを開く

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