第885話「俺も人ということか」

 人ごみを縫うように歩いているというのに、人とぶつかることはなく宿にたどり着けた。

 俺がぐったりと力なく眠っている少女を抱えていることで、気を使ってくれていたのか余計な問題になるような事態を回避しようとしているのかは定かではないが、良い方向に動いているのは間違いではなかった。

 少なくとも限られた世界では小さな平和は存在している。


 宿に戻ると部屋の前にルナが俺たちを待っていた。

 ルナが部屋の中ではなく、あえてエレベーターと部屋の間の誰の侵入にもすぐにわかる場所にいたのは偶然ではないだろう、

 奴隷の存在も知っていて、それでいてこの結果も恐らくわかっていた、


「ダーリン、奴隷は人の咎だよ」


「俺も人ということか」


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