第792話「モブ兵士」
よく似た姿の人間は世界に3人いると言われている。
しかし、背格好が似たり寄ったりの人間を探すのは容易い。
まして全身覆い隠す鎧を着こんでしまえば、判別することは非常にこんなにになる。
鎧そのものは金属を用いる都合上、一部のオーダーメイドを要する者を除けば皆一様である。
目の前の割って入った兵士もまた、一般の巡回している兵士の一人に過ぎない。
そのはずなのだが、今までに見た事のない動きをしていた。
無関係な人間かが人質に取られることも限りなく皆無に等しい昨今ですべてを予知していたかのような無 駄のない動きは思わず見入ってしまうには十分過ぎた。
仲間の兵士に人質と盗賊を引き渡すと、金属音を鈍く鳴らして歩み寄ってくる。
「怪我はしていないようだね、よかった。国民は国の宝だからね」
「ありがとう……」
「どうしたんだい? 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして。あーなるほどなるほど、俺はまだ新米だからね。皆さんとは統率が上手く取れていないようなんだ。自覚はあるけど、なかなか慣れなくてね。これは内緒にしてくれよ」
「大丈夫、口は堅い方だから。これからも頑張ってください」
「はは、サンキューな。それから一つ、まだ無理はしない方がいい」
「……」
「まあ、気にすることはないって。夜はあまり出歩かない方がいいってことさ」
まだ、その時ではないということを目で語られたように感じた。
声には出さなくとも、フルフェイスの兜のせいで顔なんて見えもしないのに。
一つだけ言えるのは、彼は才能ある者の一人であるという事実が明白になったことである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます