第781話「接触の時」

「正義の味方になりたい……。あの人に会わなければこんなこと想いもしなかったのに、未知を教えてくれた。道を示してくれた……。失ったものもあるけど、得られたものの方が多いよね……兄ちゃん」


 無意識のうちに足が動き出す。

 まるで別の生き物のようだ。

 意味なんてものは後から、結果と共に生まれるものだ。


 道という道には誰もいないはずだ。

 本来ならばだ。

 どちらがただしいかなんて、誰が決めるかわからない。


 どちらも正しいのだから。 

 安全が保障された街にもかかわらず、奴らは存在する。


 街灯も等間隔であるにもかかわらず距離が有る為に、明るいとは言えない、暗くないだけだ。

 奴らの外套を薄暗く照らし出す事すらおぼろげである。

 その存在は互いの存在を打ち消しあう。


「子供がぁ、つーかこの時間に出歩く人間ってはろうなのがいねぇ。なんだてめぇ?」


 黒づくめの外套に身を包んだいかにも怪しい男が一人街路樹の影から現れるや否や、にらみを利かせる。

 これが、俗にいうからまれるって言うものなのか。

 今までに味わった事のない緊張感。


 

 

 

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