第745話「孤高と孤独」

俺は二人と別れてゆっくりと真南に向かって歩いて行く。

 少しでも時間をかけて、一人の時間を過ごしたかった。

 今になって思い出したかのように怒りがこみあげてくる。


 しかし、それは鎧を纏った騎士にではない。

 己自身の弱い心に憎しみを覚えていた。

 素直にそう受けとめることができたのは仲間たちがいたからに他ならない。


 誰かを憎むことは簡単であるが故に自分のこれからの未来を閉ざすことになる。

 復讐者は絶対に限界を越えられない。

 執着心に囚われている限り。


 しかし、あの漆黒の騎士からは確かに俺への憎しみを感じた。

 だが、今自分自身に抱いているもどかしさに似ている。

 この行き場のない感情そのもののように。





 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る