第533話「今なら間に合うはずだと?」

「モンスターがいないからってここにいるのもなんだか気持ち悪いかな。まだ日が沈むにも早いし、それに……」


「まあ、それが問題だってことはわかってるさ。まさか地割れが海まで続いてたってんだから笑えないよな」


「泳いで渡ればいいんじゃないのかにゃ?」


 二人の回復魔法で外傷は綺麗に無くなったスペラがすっとんきょんな顔で言ってくれる。

 それができれば何も頭を悩ます必要なんてないのだが、それが容易ではないのは近くまで行って確認するまでもないのは明らかである。

 無論状況というものは刻々と変わりゆくものではあるのだが、まだその時ではないことはわかっている。


 亀裂は海に近づくにつれて狭くなっている以上海水が地割れを満たすには時間がかかりすぎるのだ。

 また、流れ込む水流によってとてもではないが生身の人間が力ずくで渡るなぞ不可能である。

 海水が満ちるのを待つという選択肢もあるにはあるがいつになるか予想も出来ない。


 その間、ここに居座るなんてことを許してくれる世界ではない。

 ルナの話では20メートル程だというのだから、水流で岸が削られて幅が広がるよりも先にわたる手段を考えて強行した方が得策であろう。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る