第403話「かたなき礫」
朝の団欒としては穏やかなものだった。
バニティーは終始無言だったが、このぎすぎすしたような空気の中ではむしろ好ましいとさえ言える。
意外だったのがディアナが最後まで眠っていたことだろう。
昨日何が有ったのか簡にな共有したまでにとどめておいたが深く掘り下げて聞いておくべきだったのか、今となっては切り出すタイミングがない。
時間の経過は問題を深刻化させてしまった時に取り返しがつかなくなるという危険性が伴う一方、うやむやにすることで保てる信頼関係があるのも事実である。
「後片付けは私がしておきますので、アマトさん達はは出発の準備でもしていてください」
「了解。こっちは任せるけど、急がなくていいから。戻って来たらすぐ出ることになるだろうし、タイミングは任せるよ」
「どっちが本当のアマトさんなんですか?」
「恥ずかしいことにどっちも俺さ。軽いホームシックだったって言ったら笑えるだろ? (……戻れる可能性は、まあ無いんだろうけどな)」
「それを言うなら私は常に戻るところに焦がれているんですよ。お相子ですね」
「秘密な」
「私も秘密でお願いしますね」
「長居をしてたらいつまでたっても出発できなさそうだな。じゃあ、頼むわ」
後ろ手に手を振って向かった先は簡易住居などではない。
バニティーの為に作った簡易工房だ。
武具の制作をするために作ったとはいえ衣食住には十分すぎる程全てが整っている。
俺の練習ということもあり今できうる技術の全てを注ぎ込んだ。
「首尾はどうだ?」
「次も頼むが」
「そうか。わかった」
どうやら、俺の仕事の甘さがバニティーの腕を満足さられていないらしい。
どれだけ優れた強者も獲物ががらくたでは本質は見いだせても形には出来ないと見た。
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