第379話「言霊」
永遠にも感じるほど心地の良い時間。
樹木がなぎ倒され月明かりが照らし出す二人の影は目に見えて変化はみられない。
静謐なる森はまるで切り離された絵画のように二人だけの世界を作り出す。
立ち寄ることなど出来ようはずもない。それを理解しているんだろうか、ネズミの一匹ですら曽於の空間に立ち入ることは許されない。
「もう、大丈夫……にゃ」
「少し、ゆっくりしてから戻ったほうがいいわね。あんまり、心配させるようなことはしないで」
「わかった……にゃ」
スペラは一言一言絞り出すように言葉を選んで呟く。
感情がこもっていないという事はその言葉に言霊は宿らない。
あくまで音声信号でしかないのだ。
重みのない言葉ほど意味をなさないものはない。
それは操り人形のような人間と共に過ごしてきたディアナには、堪えるのだった。
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