第158話「直感を信じて」

 しかし、スペラだからこそこの場面に対応する手段を持ち合わせていた。

 ユイナ、アマトでは現状退路を防がれた状態での手段はないが、依然森の中で巨人と一戦交えたときの手段を使えば脱出は不可能ではない。

 テーブルから壁に向かい圧縮した電撃をを放ち壁に人二人が辛うじて通れる程度の穴を開けると水面に電気の膜を張りその表面を高速移動し、建物の外へと抜ける。


 手近な住居の屋根だったものを見つけるとひとまずこしを落ち着かせることにした。数分もしないうちに先程までいた診療所は崩れて濁流にのまれてしまった。

 あのままとどまっていたら今は崩れた建物に飲み込まれてただでは済まなかったに違いない。


 そんな事を思っていると濁流の根源たる上空から降り注ぐ雨が突然ぴたりと止んだ。

 空も分厚い雲が嘘のように消えてなくなり、赤い夕陽が差し込み一面真っ赤に照らされていた。

 それがあまりにも急激な変化だったためアマト達の誰かが元凶を絶ったのだと思った。

 根拠などなかったが不思議とそう思う事に違和感などなく、まるで神か何かの奇跡のように受け止めていた。


「ディアナ、早く目を覚ますにゃ……」


 空が晴天だというのならば、もうここに留まる理由はない、すなわち残す問題は未だに目を覚まさない少女の現状のみ。

 今襲われるようなことがあれば、とてもではないが守ることなどできはしない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る