第3話「女の子の身だしなみ」

 魔女ヤヒュニアによって女の子となり、克巳から克美になった大津克巳。

 周囲は魔法により何の違和感もなく彼女を受け入れていた。

 それだけでなく、彼の母親が実は娘を欲していたというテンプレな状況に陥っていた。

「ふう。風呂は気をつけなきゃいけないしトイレしたあとに拭かなきゃいけない」

 女の子ってのも大変だ、と克美は思った。

 パジャマはフリーサイズで男女どっちでも着れるものだったので、

昔着ていた物をそのまま着ることにした。

 何せパジャマはセットに入ってなかったからだ。

「まあ、入ってても着ないんだけどね」

 克美はそういいつつ歯を磨き、ベットへと向かうのだった。

 そして、その翌日。

「ふう。とりあえず学校にいかないと」

 すると、彼女の行く手には母親が立ちふさがる。

「メイクの仕方とかブラの付け方とか学んでからにして。女の子は身だしなみが大事なの」

「とほほ、やっぱりこうなったよ。けど、僕の学校メイク許可されてたっけ?」

「されてないけど、落とせばいいだけよ。メイク不許可を理由に逃げても困るわ」

「だよねー……」

 というわけで、克美は母親にメイクされながらこういわれる。

「いい?メイクは闇雲にやればいいってものでもないのよ。あくまで素材を引き立てるだけ」

「まるで料理みたいだな……」

「話が分かるわね」

「一番分かりやすかっただけだけどね」

 そうしてメイクについてのレクチャーを終えると、克美は母親にこういわれる。

「さて、とりあえずパジャマを脱いで」

「分かったよ。それじゃあ、そおい!」

 母親に急かされてすっぽんぽんになった彼女であった。

 すると、彼女はこういわれる。

「まず、ブラは後ろからこう回して。寄せて上げるのよ」

「ホック付きだから、結ぶことは気にしなくてもいいけどけっこうきついね」

「そういうものよ。無かったら胸が擦れて痛いんだから」

「着物にはブラみたいな物は無さそうだったから、昔の人はどうしてたんだろう……」

 克美の疑問は明後日の方向にぶっ飛んだ物だったが、母親はこう答えた。

「江戸時代の人とかはさらしをブラ代わりに使ってたんじゃないかな?」

「さらしは胸を隠すために男装女性がよく使うアイテムだけど、そんな使い方があったわけだね」

「あくまでも予想だし、本題じゃないわ。次は服の着方ね」

 そういわれた彼女はこういう。

「着方は大体男の時と変わらないんじゃないかな?スカートは後からってことは見れば分かるし」

「あなたも鈍感ってわけじゃないのね」

「女の子になったのは恥ずかしいけどね」

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