第38話『モノリネ』
ぶわぷわ、ぷるる。
目覚めると全身真っ白い《はんぺん》になっていた。
まあ、よくあることで今更驚くことでもないが。
なぜ私は今回、《ちくわぶ》になれなかったのか?
そのことの方がむしろ由々しき問題だ。
外は今ごろ《串男》が歩き回っている頃だろう。
今日はさすがに外出は控えた方が良さそうだ。
ぶわぷわ、ぷるる。
「田仲のやつ、ちくわぶになれたのかな」
人と自分を比べるのはよくないし、
不安になるだけで何の役にも立たないことは
知ってる。
だが、同期の出世頭と言われてる田仲の動向だけは
いくら頭から追い払おうとしても、
しつこいからしの辛味のようにヒリヒリと脳内に
残り続け、劣等感が刺激されるのだ。
ぶわぷわ、ぷるる。
トゥルル……トゥルル……
《かまぼこ》からだな。
直感でわかった。
おおかた、さしみ醤油の件だろう。
私は居留守を決めて、ベッドに身を投げ出した。
ぶわぷわ、ぷるる。
今日がどんなにはんぺん日和だとしても
どこにもいかんぞ。
そうひとりごち、私は再び夢の世界へと
舞い戻っていった。
ぶわぷわ、ぷるる……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます