第38話『モノリネ』

ぶわぷわ、ぷるる。

目覚めると全身真っ白い《はんぺん》になっていた。


まあ、よくあることで今更驚くことでもないが。

なぜ私は今回、《ちくわぶ》になれなかったのか?

そのことの方がむしろ由々しき問題だ。


外は今ごろ《串男》が歩き回っている頃だろう。

今日はさすがに外出は控えた方が良さそうだ。

ぶわぷわ、ぷるる。


「田仲のやつ、ちくわぶになれたのかな」

人と自分を比べるのはよくないし、

不安になるだけで何の役にも立たないことは

知ってる。

だが、同期の出世頭と言われてる田仲の動向だけは

いくら頭から追い払おうとしても、

しつこいからしの辛味のようにヒリヒリと脳内に

残り続け、劣等感が刺激されるのだ。

ぶわぷわ、ぷるる。


トゥルル……トゥルル……


《かまぼこ》からだな。

直感でわかった。

おおかた、さしみ醤油の件だろう。

私は居留守を決めて、ベッドに身を投げ出した。

ぶわぷわ、ぷるる。

今日がどんなにはんぺん日和だとしても

どこにもいかんぞ。

そうひとりごち、私は再び夢の世界へと

舞い戻っていった。

ぶわぷわ、ぷるる……

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