第7話「もう二度と来て欲しくない客」

といえば、ホームレスだ。

その店の近くに有る比較的大きな公園。

この公園は今でこそ名所だの何だの、持て囃されているが…。

筆者が小学校時代はホームレスの楽園と呼ばれていた公園だった。

園内のあちこちに青テントが建てられ、ホームレスがほとんど占拠している状態だった。筆者の学校では「子供同士では絶対に〇〇公園に行っちゃいけません!」と口を酸っぱくして何度も何度も先生たちが子供たちに注意を促していた。

だが、クラスでも不良の連中がその公園によく行くのだ。

それを見かけた子が「先生、昨日〇〇君が〇〇公園に行ってたー」とチクる。

それは終わりの会の議題になり、当事者だけでなく、全員がお説教を食らう事に。




今は市が行政代執行で園内のホームレスを強制的に立ち退きさせた。

ニュースになるぐらいの大混乱だったが、時間をかけて追い出した。

現在は1割程度しかおらず、公園は平和に戻った。

だが、その1割がたまにうちの店に来たりする…。




ホームレスのイメージはみなさんのイメージ通りだ。

身なりが汚く、汚れすぎて黒ずんだ服を着て、チャリを漕ぎ、ゴミ箱から空き缶を取り出して足で潰してから、ビニール袋に入れて集めている奴らだ。中には缶でパンパンになった袋をいくつも持ってチャリ漕いでるおっさんを見かけることも。たまに駅とかでよくわからない雑誌を持って立っている人も見たことがあるだろう。





そういうのがコンビニに来たらさあ、大変。

真面目で人情味のあるホームレスっていうのは物語だけの世界。

全員が悪い人だとは言わないが、実際はいいホームレスなんてほとんどいない。

最近では犯罪者が警察から逃げるためにホームレスをしているという話も。

世捨て人となり、自分の世界だけしか愛さない連中が他人に優しい訳が無い。

駅とかで叫んでいる奴もたまに見かけるが、ああいうのも自分の世界に孤立していて、世間に何かを叫びたい、でも何を言えばいいかわからない…そういう成れの果てだと筆者は思っている。誰もがそいつらを汚物と同じように汚いものを見る目で蔑み、無視して去っていき、次の日には忘れる。





中でも一番来て欲しくないホームレスがいた。

そいつはいつも汚くなったビニール袋に汚れた小銭をたくさん入れて持ってくるのだ。それで会計しろと言ってくるのである…。

断ってもよかったが、混んでいる最中にそんなのが来たら他のお客さんが迷惑だ。

なので、仕方なく受け取り、値段分あればさっさと商品を渡してお引取り願うことに。汚れた袋は捨てて、中の小銭は後で一枚一枚拭いていく…。




たまにしか来なかったが、それが一番来て欲しくないホームレスだった。

今でもあの店にはホームレスが来ているのだろうか…。



















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