物語という名のライフストーリー

三谷晶子

【まえがき】運転ができない、あの子のドライブ

数年前に書いた原稿は、今はもうあっという間に色褪せて、何かしら公開するなら、すべて読み直して書き直すだろうと思っていた。完成している小説もあれば、断片的なストーリーもあり、それらのすべては物語であり、ライフストーリーだ。


2冊の本を出版して、よく聞かれることがある。


「これはフィクションですか? ノンフィクションですか?」


「実際に経験したことをモデルにしたところもあるけれど、物語として整理している部分もあります」


私は、いつも、そう答える。


ものとして形にするならば、きちんと整えなければいけない。当時の私はそう思っていた。もちろん、整えることで身に着いたものもある。けれど、本当は同時にこうも思っていたのだ。


ねえ、それって整えなきゃいけない? 私、ちゃんと、パッケージされなきゃいけない?


パッケージされた商品の美しさも、知っている。今まで出した本も、大好きだ。何一つ、後悔はしていない。


けれど、何だか、ドライブしたくなったのだ。無性に。


昔から、音楽に憧れていた。リアルタイムで聴き手がいて、同じ場所にいながら互いにドライブしていくそのさまは、小説や文章ではできないことだったから。


けれど、今なら、小説や文章でも、できるんじゃないかな。

ドライブしてもいいんじゃないかな。


物語という名のライフストーリーで。


ちなみに私は車の免許を合宿で取りに行った時、教官に「本当ならきみに免許はあげたくない」と言われるぐらいに運転ができない、ぴかぴかのゴールド免許の持ち主だ。


運転ができない、あの子のドライブ。


気の向くまま、お付き合いください。

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