初めてのご帰宅 (1)
「今日、仕事終わったらメイドカフェ行ってみない?」
金曜日の昼間、同僚のS君に問いかけた。
「いいよ。オレも行ってみたい。」
オレからの意外な提案に少しびっくりした表情をしていたが、本人にも興味があったらしく快諾してくれた。
当時20代前半のS君は、ニコニコ動画が大好き。たしか、あの頃はウマウマとかいうダンスなんかが流行ってたっけな。
まぁそんな話は置いといて、
オレとS君は、その日の仕事を急いで片づけると、同じく同僚の元ホストKさんを誘い夜のアキバへとくりだした。
◆
「もう8時半だけど大丈夫かな?」
S君の問いかけにオレは不安になった。
当時のアキバは夜の8時を過ぎると、多くの店舗から灯りが消え、人通りもぐっと少なくなる。せっかく仕事を早く終わらせ、逃げる様に会社を出たのに、メイドさんに会えないかも知れない。
オレ達3人は秋葉原駅の改札を飛び出ると、早歩きで目的の店舗に向かった。
「はぁはぁ、あった、ここだ…しんどい…」
大通り沿いの雑居ビルの入り口に、可憐なメイドさんの看板を発見。
その店はビル内に3,4店舗を構えており、俺たちは一番上のフロアに”ご帰宅”すると決めるとエレベーターに乗り込んだ。
「お店、9時までって書いてたけど大丈夫かな?」
「あー、どうすかねー。入れるといいすね。」
S君の問いかけに冷静に答えるKさん。
さすが元ホスト。
エレベーターが止まり、ドアがゆっくりと開く。
やっと会える!メイドさんに!
そんな希望を抱いてエレベーターを出たオレ達を待っていたのは、メイドさんではなく、向かい合った2人のおっさんだった。
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