アスペとADHDの俺が再就職をするまで

真下 達矢

第1章 アスペとADHD発覚

第1話 ADHD発覚

「結果から申し上げるとADHDで間違い無いですね」

とウェクスラー成人知能検査※1 の結果を見ながら、精神科の先生からの突然の申告。

「ハハハ……いや、冗談……冗談ですよね?」

乾いた笑いが診察室に木霊するが、誰も俺の意見を肯定してくれない。

「ちなみに……どの辺りにADHDの特徴が出てました?」

と俺は先生に問う。只の興味本位だ。約2時間のテストでそう簡単に見破られた理由を俺は知りたかった。

「まず、貴方の相談内容です。会社内でのちょっとしたミスが多い。これはADHDの特徴ですね」

確かにそれは俺が前、相談した内容だった。でも改めてここでそう伝えられると云う事は判断材料はそれだけでは無かった、と云うことだろう。

「また、検査の教示をしている際に『もう(やっても)いいですか?』と何度もそわそわしながら聞いていたでしょう。そこで、ADHDだと判断しました」

なるほど……。そこか……。実際俺はその言葉を何度も口にした。理由は簡単だ。俺は長時間の集中があまり出来ない。それはADHDの症状であり、下手するとそこからADHDと診断されてしまう恐れがあった。なので1分でも早く終わらせようと頑張ったのだが、その頑張りがADHDと診断されてしまったのだから皮肉なものだ。

「そうですか、ありがとうございます。あと、もう一つ聞きたいのですが……仮にアスペだと、どのような結果になるのでしょうか?」

と本心を悟られないように、あくまで興味本位の質問として聞く。

「そうですね……。一般的なアスペルガー症候群だと、『言語性』『動作性』のIQに大きな差があります」

「という事は、私は両方共平均値より高いと云うことですから、アスペでは無い、と?」

「えぇ、IQの面ではアスペルガー症候群ではありませんね」

と先生。俺はこの発言を聞いて、バレないように小さくガッツポーズを決めた。アスペでは無い。この事実がとても嬉しかった。これでまだ、会社で働けるのだ。せっかくニートを脱却したのだ。たった1年でクビになっちゃあ、たまったもんじゃ無い。

「そうですか、ありがとうございます。それと……最後の質問なのですが、ADHDって確か薬で症状を軽くすることが出来ますよね?」

ネットで見た情報だ。ネットには嘘の情報も転がっている為、それを鵜呑みにするのは愚か者のやる事である。餅は餅屋。専門家に確かめるに越した事は無い。

「えぇありますよ。でしたらそれも処方しておきましょうか?」

「よろしくおねがいします」

「大体効果が出るのが2週間~1ヶ月後位ですので、効果が出なくても飲み続けて下さい」

「はい、分かりました」

どうやらネットに転がっていた情報は嘘では無かったらしい。偶にはネットも役に立つものだ。

「ウェクスラー成人知能検査の詳しい結果は2週間後に来院した時に渡しますので……ではお大事に」

と先生に見送られ、診察室を後にする俺。ADHDと診断されたにも関わらず、その足は軽やかであった。



※1 ウェクスラー成人知能検査:簡単に言うと、一般的なIQ測定。詳しくはWikipediaに書いてあります。1回6,000円位かかりました。

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