異世界からの便り

親愛なる花音へ



お元気ですか


私がこちらの世界に召喚されてから、もう2年になりますね


そちらはもう大学生になりましたか? 希望通り、保育士さんになれるといいですね


こっちは相変わらず、モンスターと戦ったりお城に詰めたりの単調な毎日です


当たり前だけど、夏は暑いし冬は寒いです


エアコンは偉大です こたつに入りたいです


あとこっち、すごく娯楽が少ないんです!


スマホはもちろん圏外、インターネットもテレビもない


みんなは、なんか小話? ダジャレ? みたいなこと言って笑ってますが私にはよく分かりません……


たまに、すごくたまーにお祭りがあるので、その時は道化師とかが来て楽しいですが


それに言いにくいんだけど、みんな臭いんです!(もしかしたら私も……)


シャンプーとか無いから


っていうかお風呂にそんなに入れないから


知り合いの錬金術師に頼んで、石鹸みたいなものを作ってもらったんですが


もう髪はギシギシです(泣)


美容師もいないし(なんか美容師が医者も兼ねてます、ハサミ上手いとかで。意味分かんなくないですか?)


モンスターも、最初はすごくて感動もあったんだけど


もう見飽きました(笑)


なんかね、実写版ジュラシック・パーク


それだけ


うん、USJとかで年に1回見れればそれでいいと思います……


こっちの人にも何回も言われたんですけど


鉄の鳥に乗って異国に数時間で行ける!?


離れたところにいる相手と話せて、


宮廷画家よりも上手い絵を瞬時に描いたり、


宮廷音楽師よりも上手い音楽も流せる小さな箱があって、


子どももみんなそれを持ってる!?


どんな魔法の国から来たんだ、お前は!? って


最近思うのですが


そっちの世界で当たり前にやってたことのほうが、よほど魔法みたいなことだったんじゃないかって


「科学」とか「文明」っていう、すごい昔からすごい頭の良い人たちが作ってきてくれた魔法に


私たちはただ乗りしてただけなんじゃないかって


体ひとつじゃ何もできなくて、こっちの人にがっかりされて、そう思いました


早くそちらに帰りたいです


この手紙、召喚士に頼んで私の家の近くに転送したのですが、届きますように……!


それでは



美雪より

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