第18話 幼竜少女
女の子の名前。一生モノだし、ちゃんと考えないと駄目だよね。さて、どうしようか? う~ん、
「なんじゃ、悩んどるんだったら先に移動するぞ」
「あ、その前に服を着せないと」
「そうじゃったな。ほれ、これを着せなさい」
老師から受け取った黒いワンピースを女の子に着せる。彼女はまるで人形のようにされるがままだった。
「大丈夫なのかな?」
「ああ、大丈夫じゃよ。名前をつけておらんから、まだ意識と身体が覚醒しておらんのじゃ。少しすれば問題なくなるわい」
「そっか。それなら良かった」
彼女の手を掴んで一緒に歩いていく。昔の妹二人みたいな感じがして少し楽しい。
※※※
外に出て老師についていく。すると、庭園みたいな場所に連れていかれた。そこではブリュンヒルデさんと、メイシアが紅茶を飲んでいる。
「来ましたね」
「うむ」
「こんにちはです」
「こんにちは」
挨拶をしてメイシアに近づく。すると、女の子がメイシアに抱き着いた。
「ごめん」
「構いませんが……あの、この子は?」
「えっと……」
「その娘は貴女達の娘ですよ」
「「ええっ!?」」
ボクとメイシアが同時に驚きの声をあげる。この子がボクとメイシアの子供? それってもしかして、あの提供された身体って……メイシアの? そう思うと顔が真っ赤になってくる。
「ど、どういうことですかっ!?」
「簡単なことです。彼女は私が提供した貴女の死体とユーリ君の死体を素材にし、作り上げた身体を基礎として転生した存在です」
「まあ、ユーリの使い魔とかそんな感じじゃな」
「何勝手に使ってるんですか!?」
「いえ、聞きましたよ? 残った死体はどうしますか? と。そしたら、好きに処分してくださいと言ったじゃないですか。だから、必要としていた老師に譲りました。それにメイシアにも得がありますかね」
「ななななっ」
「これに懲りたら、しっかりと片付けるんじゃな。燃やすのがベストじゃ」
「ネクロマンサーに死体を使われる場合もありますからね。ましてや、ネクロフィリアなんかにあたったら目もあてられません。女の子なら、それぐらいしっかりと警戒しなさい」
「……わ、わかりました……って、もしかしてユーリ……見ました?」
「み、見た……ごめんなさい……」
「っ~~」
メイシアも顔が真っ赤になった。ボク達は互いに顔を赤くして視線を合わせられない。
「初々しいですね~」
「うむ。若返る気がするの~」
ボク達が一緒に視線を向けると、二人はそっぽを向いた。
「それよりも、その女子に名前をつけてやるといいぞ。ユーリが一人では決めかねておるようじゃしな」
「ええ。二人で相談してしっかりと悔いのない名前をつけてあげてくださいね。私達は別の場所に行っていますから」
「頑張るんじゃぞ」
そう言って、二人は去っていくのを見送る。残ったボク達はしばらく唖然としてしまっていた。
「と、取り敢えず……座ったらどうですか?」
「う、うん」
「あと、あったことを教えてください」
それから、メイシアに説明していく。
「なるほど。でも、それって近親交配になりませんか?」
「どうなんだろ? 竜族の王族だから、それもありなのかな? まあ、する気はないけど」
「確かにそういう話は聞きますね。でも、そもそも竜族は種類の違いが結構ありますし」
「そうなの?」
「はい。掲示板で確認されている竜族は色々とありますよ。火竜、水竜などを始め、レアなら雷竜とかですね」
掲示板とか、全然見てないな。攻略サイトとかもあるんだよね。
「それは会うのが楽しみだね」
「そうですね。それよりも、名前はどうしますか?」
「えっと、その、前に……ボクとメイシアの子ってことになってるけれど……その、いいの?」
「はっ、恥ずかしいですけど、現実じゃないので……ユーリなら、その、助けてもらったから……いいかなって……」
「あ、ありがとう……」
顔を赤くしながら、両手の指をくっつけて可愛いらしいことを言ってくれるメイシアに、ボクまで恥ずかしくなる。
「か、勘違いしないでくださいね! 師匠に得があるみたいなことを言ってたからですよっ!」
「う、うん。じゃあ、早く名前を決めよう。このままじゃ可哀想だし」
「そ、そうですね……単純に私達の名前から取りましょう」
「それだと、ユーリとメイシアからだね」
「はい。ユイ、リア、アイリ、ユメ、イリア、ユリアぐらいですか?」
「そうだね。イリアかアイリくらい?」
「それだとアイリですね。愛するの愛で、りは理ですか?」
「それでいいかもアイリだと、愛称はアイでいいかな。アイだけだとボクのが入らないし」
「リアでいい気がしますね」
「子供の名前って難しいね」
「親に感謝ですね……」
色々と話し合った結果、名前はアイリに決定。愛称はアイとなった。
「えっと、それじゃあ君の名前はアイリ。愛称はアイだよ。いいかな?」
ボクが尋ねると、彼女が頷く。すると急に風が吹いてボク達の下に赤い魔法陣が現れた。そして、アイがボクとメイシアに手を差し出してくる。ボク達は互いの顔を見てから、彼女の手を握る。握ったボク達の手に何かが入り込んでくるような感じがした。
【プレイヤー・メイシアと婚姻関係が成立しました】
【プレイヤー・メイシアとの間に子供(アイリ)が産まれました】
【従魔:アイリが産まれました】
【ワールド:婚姻が成立したプレイヤーが現れました。婚姻システムを解放します。婚姻を行うとアイテムストレージ、所持金、倉庫が共有され1.5倍化されます。また、夫婦間での装備の変更が可能になり、特殊スキルを覚えることができます】
【ワールド:子供を作製したプレイヤーが現れました。子供システム、養子システムを解放します。子供とパーティーを組んでいると経験値が2倍になります。また両親のスキルを家族内で習得できるようになります】
【ワールド:従魔を得たプレイヤーが現れました。従魔システムを解放致します】
「なにこれ?」
「ええっと……」
「パパ、ママ、アイを産んでくれてありがとうなの、です」
ボク達の片手を抱きしめて嬉しそうに言ってくるアイ。遠くにはこちらを見てニヤニヤしている大人二人。ボク達が思うことは一つ。
「「嵌められた(ました)」」
「?」
「それで、その……どうする? 多分、離婚とかもできるだろうけど……」
「それは……」
「駄目なの、です」
「「え?」」
アイが拒否してきた。
「産まれて速攻で両親の離婚とか、許されると思ってるのか、です」
「あ~」
「そうですよね……」
「ボクはメイシアさえ良ければいいけど……」
「私もユーリがいいなら……」
「じゃあ、このままでいこうか。ごめんね、アイ」
「アイちゃん、ごめんね」
「わかればいいのです」
とりあえず、このままでいよう。離婚もすぐにできるみたいだしね。
「えっと、それでどうします?」
メイシアがアイを抱いて膝の上に乗せながら聞いてくる。といっても身長差は殆どないんだけどね。
「じゃあ、色々と決めとこうか。お金のこととかもあるし」
「そうですね。家計簿みたいなのをつけましょうか」
「素材もそうしよう」
紅茶を飲みながら、色々と取り決めを決めておく。それとボクとメイシアがログアウトしていると、アイの意識は凍結されるみたいだ。どちらかがログインすると、解凍されて一緒に行動できるみたいだ。
アイはボク達のどちらでも呼び出せて、送り返すことも可能みたいだ。けど、どちらかが呼び出していたらもう一人は呼べないみたいだ。それと普通のNPCと違って、ボク達と同じように何度死んでも蘇ると説明に書かれていたので、助かる。
「ああ、そうだ。メイシアにお願いがあるんだよ」
「なんですか?」
「今、アイはワンピースしか着てないんだよね。だから、色々と買ってきてほしい。服ならまだボクでもなんとかいけるけど……その、下着は……」
「わかりました。じゃあ、ちょっと買い物に行ってきます。ですが、ユーリも付き合ってくださいね」
「は、はい」
「家族でお買い物なの、です」
二人でアイを挟んで手を繋いで街で買い物をしていく。デートみたいだけど、気にしないようにしておく。それが終ったら、頑張って修行の再開だ。嵌められた恨みも込めて、老師に絶対一発は入れてやる。
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