第4話 骨董屋にて

ネジの取れた時計を下さい


わたしの 妻がネジを持っているのです


それは異国の品 安くは譲られぬと云はれ


奥さんのネジを持って来なさい 取り付けてから話をしよう とのこと


妻を説得し、完成したのは、巧妙精緻な舶来の品 金銀宝石散りばめられた王侯に相応しい品である


では売って進ぜる。これこれで如何かなと、話まとまりかけ、私目を疑う


先程とは値が違います ネジが代金に含まれています。ネジは私の妻のものです。


時計は今や完成した。先程まで未完成ゆえあの値段、何も間違ってはいない


そ、そんな契約書などどこにも……、妻は、妻はどうなるのです。ネジを失った妻は


主人、金歯をむいて答えて曰く


これが、経済だ 奥さんのことは気の毒だが、早めに忘れることだね



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る