51話 パーティー 1

結局あれこれ考えた結果、何も纏まらずそのままパーティーの時間になってしまった。


「ふぅ…… 、疲れた……」


前回のパーティーはヒルダの護衛としての参加だった為、基本はヒルダの後ろに居るだけで良かったのだが今回は客人として、しかもヒルダの命を助けたとかやらのせいで貴族やら富豪やらが話し掛けてくる。

中にはヒルダ辺りなんかと繋がりが欲しいのか娘はどうか? 等と薦めてくる始末、あまりにもキツかったのでタクト辺りに丸投げした。タクトの恨めしい目が最後まで俺に向いていたけど、まぁ、後で謝ろう。


飲み物と料理を持ち外でゆっくりとする、室内は若い人達が多かったが外は落ち着いた感じの大人が主な感じだった。


「やっと、落ち着いて食べれる……」


美味い料理を食べていると時折中から「流石勇者様ですー!」なんて言う若い子達の黄色い声が聞こえてくる、恐らくタクトは苦笑やらしてユミ辺りが無言で圧力を掛けてるんだろう。


平和だなー、と呑気に料理を食べていると目の前に誰かが止まった。上を向き顔を見ると若い男で何処かで見た顔だった、誰だったかなー? と思い出していると男はそんな俺の様子が気に入らないのか苛ついた様子で俺に話し掛けてくる。


「前回のパーティー振りだな」

「え? あ、はぁ…… そっすね」


んー、この声聞いたことがあるなぁ…… 、後ちょっとで出てきそうなんだが…… 。


「…… まさか俺の事を覚えていないのか?」

「あ、あははは…… 」

「貴様ァ……!」


貴様? 、貴様…… あっ!


「おもしろ伯爵!」

「違うわ!」

「いや~、久しぶり元気だった?」


肩に手を回しながら聞くと伯爵は手を払い除けこちらを睨む。


「俺は貴様の友達か! それに俺の名前はグリム・ゾールだ、覚えておけ!」

「グリムね、わかった」

「~っ!」

「友達が出来て良かったですわね、グリム」


お嬢様言葉が聞こえそちらに視線を向けると何とーーー。


「き………… 、……… ル」

「ん? 何だ?」


隣でボソッと何かを言ってるのが心配なのかグリムが俺に問い掛ける。


「金髪ドリルゥゥゥ…… !」

「痛い痛い、ーーっ何なんだいったい!?」


ついテンションが上がりグリムの背中をバンバン叩きながら喜んでしまった、ごめんよグリム。


「どうかしまして?」

「~~っ !」

「痛い痛いっ!」


お嬢様口調まで来た! 後は高飛車まで来たら完璧だ。


「その……」

「はい、どうかしまして?」

「良い、縦巻きですね」


アアアア! 違うだろ、初対面の人に言う言葉じゃねぇぇ!

恐る恐る金髪の娘を見ると嬉しそうな顔で鼻息を荒くしていた。


「わかりますの!?」

「えぇ!? あ、はいィ……」

「あぁ…… 、この髪の良さを分かってくれる御方は貴方が初めてですわ!」

「ワカリマストモ」


まさかこの選択が当たりだとは思わなかった、隣のグリムも驚いている。


「嬉しそうだな……」

「ええ、嬉しいですわ! 誰も私の髪型に触れて下さらないですもの、そして初めてその事に触れてくださった方はこの髪を素晴らしいーーー「分かった! 悪かったから!」……そうですの……」


グリムは疲れた様に溜め息を吐き俺に金髪ドリル娘を紹介する。


「…… 彼女はフラン、俺と同じ伯爵位の者だ」

「あ、申し遅れました。フラン・ベレットと申しますわ」


彼女はそう言い綺麗な礼をする、ゆらゆらと揺れるドリル…… 見事。


「えっと、コウタです宜しく。…… 二人は仲が良いみたいだけど?」

「えぇ、グリムとは幼なじみですの」

「へー、じゃあグリムの小さい頃の話とかも?」

「勿論、恥ずかしい話からドジをした話まで何でも」

「話さんでいいわ! てか、ドジった話は恥ずかしい話と一緒だろ!」

「ぷりぷりすんなよグリム~」

「そうですわよ、失敗は誰にでも有りますわグリム」

「わざわざ話すことでも無いだろ!?」


顔を真っ赤にして声を張り上げるグリム、それを上品に笑いながら更なる追い討ちをするフラン。

中々に面白い人達だ、やがて疲れはてたグリムがフランに問い掛ける。


「はぁ…… フランお前何でここに来たんだよ」

「勇者様達には挨拶はしたわよ? ここに来たのは暇になって辺りを見渡したら貴方とコウタさんがいたものですから」

「俺に用が? えっと…… フランさん?」

「ふふ、グリムと同じ様な感じでよろしいですわよコウタ?」

「おぉう、よろしくフラン…… ?」

「話は済んだか」

「あら? 嫉妬してるのグリム」

「しとらんわ!」





「本当か? お前がねぇ……」

「まぁ、大変だったよ」

「凄いですわね、あのユリアから逃げられるなんて」

「ユリアって言うのか、あの魔族」


歳が近かったお陰か最初の髪型を褒めたお陰かフランとはそのまま仲良くなり三人で中庭を散歩しながら魔族との事を話していた。


「俺も報告書を見たが、本当にお前が?」

「俺じゃないユリアだよ、あいつ魔力がたくさんあるからって目茶苦茶に撃って来やがって……」

「あれだけの惨状を造り出した奴を相手に時間稼ぎの後に逃げるか…… 、信じられんな」

「そこまで酷かったですの?」

「調査に来ていた騎士や冒険者のほとんどがこれは死んだと思ったらしい」

「運が良かったんだよ、運がーーー ん?」


歩いていると草木の陰から物音が聞こえた。


「どうかしまして?」

「いや、あそこから音が」

「誰かいるのか?」


ま、まさか!?


「逢い引き……」

「まぁ…… !」

「アホか」


こうしてはいられない、もしかしたらあの陰では男女の聖なる儀式が行われてるかもしれん!


俺は気配を消し音のした方へと行く、何故かグリムとフランも着いてきた。


「何だ気になるのか……」

「しゅ、淑女として後々の為に……」

「お、お前らが失礼の無いように「ムッツリ」何だと……!?」

「静かに」

「静かになさい」

「理不尽だ……」


物音は本当に静かな物で気付けたのも偶然だ、そして物音に近付きゆっくりと見るとーーー。


「な、に……?」

「どうした……? 、っ!?」

「え、何ですの…… これは」


見張りをしてたであろう衛兵数人が草むらに黒一色の服装の三人組に隠されてる場面だった。


これじゃまるで…… 。


突然の事に頭が回らなかったのかフランが思わず声を出してしまう。


「暗殺者?」


その声と共に三人組の視線は俺達に向いたーーー。

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