48話 例の袋
「えっ!? 明日パーティーなの?」
「結構前からその事は話した筈なんだけど?」
「お、おう。分かってる分かってる」
「………」
「はは……」
黙り混んだヒルダはルルに何かを言うとルルは音もなく消え一分も経たない内に黒い服を一着持ってきた。
「礼服よ、流石にいつもの服で貴族達の中に放り込むのはね」
「あぁ…、なるほどね」
「取り合えず着てみて」
「結構似合ってるじゃない」
「はい!カッコいいですよ!」
「そ、そうか?」
普段着ない為か物凄い違和感が……。
「てか、俺はお前の護衛だぞ? こんな動きづらい格好じゃ……あれ?」
動きやすい…、これなら問題なく剣を振れるし全力で走っても大丈夫そうだ。
「なぁ…、これって……」
「オーダーメイドよ」
「高かったろ、これ……」
「コウタの功績と護衛の給料やらを考えても、その礼服に金貨を数十枚積んでも足りないわよ」
「給料どんだけあんだよ……、てか功績って?」
「裏路地の話よ」
「あー、つっても偶々居合わせて、しかも記憶も無いしなぁ」
「皇族を助けたんだからそれだけ貰っても責めないわよ」
「いらないって言ったら?」
「こっちの顔に泥を塗ることになるわね」
「えー…」
「でもコウタさんたまに、お金ほしぃーなぁー。とか言ってるじゃないですか」
「いや、ほら…。徐々に集まるのは良いんだけど急にドン、と来られるとビビるというか……」
「うわ、めんど……」
「なんでそんなことを言うの!」
本当にこいつは姫様って感じがしないな…、俺としては話しやすいけども。
すると目の前のテーブルにほんの少し装飾の施された袋が置かれた。
「これは?」
「報酬の一つよ、魔法が付与された袋」
「…こんな見た目だけど実はかなり容量がある、みたいな?」
「知ってたの?、そうよそれなりの物だから容量もあるし戦闘にも耐えられる様に丈夫にしてあるわ」
「この礼服といい、貰いすぎな気がするんだが………」
「こんなのまだ一部よ、自分がどんな事をしたのか分かってるの?」
「お前とジークを助けただけだろ」
「私たちの立場、そして襲ってきた奴にも問題があるからこうなってるのよ」
「立場は分かるけど、襲った奴って?」
「セリエという女よ、かなり有名ね」
「そんなにヤバい奴なのか」
「過去のデカい事件にも関わったりしてるし。でも、これからはコウタの事を狙うでしょうね」
「は!?なんで!」
「仕事の邪魔をし、魔剣を二本取られたんだから」
「あ、あ"あ"ぁ"~………」
あれかぁ~!?、まさか取ってきたとは聞いてはいたけど、そんなヤバい奴から取ってきたとは思わなかったぞ!。
「今日はこれで終わり、明日は朝からパーティーに向けて色々話があるから準備しときなさい」
「おぉー……」
午後の時間が丸々空いた為、メイルと街を散歩しながら明日の事を考える。
「パーティーかぁ……」
前にパーティーに参加した時は護衛として、今回は一参加者としてか。
ーー何かトラブルが起きるだろうなぁ……。
こういう時の集いは何かしらの前兆だと思う、しかもセリエとかいう奴の話もされ勇者御一行も居る、フラグはバッチリ立っている。
「はぁ…、何も起きなければ良いけど……」
「わふ!」
「ん?おお、もう着いたか」
一緒に歩いていたメイルの声で意識を周りに向けるとギルドや武器屋等が集まっている区域に入っていた。
今日の目的は武器なので良さげな武器屋を探す。
「お、こことか良さそうだな」
そこは少し古びた感じの外観の武器屋だった、中に入ると意外にも数人の客が入っている。
いかにも頑固そうなオッサンとその娘なのであろう子が客の対応やらをしている。
取り合えず目的の武器、剣・槍・盾を買っていく。
「すいません、これを下さい」
「あ、はい。……随分色んなの買いますね」
「えぇ、まあ…」
「まさかそれを全部扱う積もりか?見たところその短剣は魔剣だと想うのだが」
「あ、お父さん」
店主であるおじさんが俺を怪しそうに見ながら問う、娘さんも実は聞きたかった様で「どうなの?」みたいな目で見てくる。
「あ…、あはは。使いを頼まれまして」
「何故目を剃らす」
「いや、えっと……。あの大剣他のに比べてかなり安いですけど何故です?」
「あぁ、あれは魔剣でな」
「なのにあの値段?」
普通の剣より3、4割位安いんだが……。
「あの、大剣は魔法を弾くんだよ」
「え?凄いじゃないですか」
「お前さんは強化の魔法が身体だけじゃなく武具にも影響してるってのは分かるか?」
「はぁ…、知ってますけど。……まさか」
「うむ、使用者の魔法すら受け付けない」
となると普通に武器をぶつけ合ってもこちらの方が消耗が激しいのか……。
「…まぁ、少し変わった盾代わりになるだろう……。おじさん、この大剣頂戴」
「おいおい、今の説明を聞いて何故そうなる。そもそもお前さんじゃ扱えないだろう」
「一応売り物何だから売る気概を見せてよ……。てか、使いですからね?」
「はぁ、もういい何処に届ける?」
「そのまま持って帰ります」
そう言いながら買った武器達をヒルダに貰った袋に入れる。
「すげぇな、本当に入っちゃったよ……、あれ?」
目の前の父娘と周りの客が驚いた様に俺を、というより腰に着けている袋を見ていた。
やべぇ、ヒルダはそこそこの物だとか言ってたけど普通の人からしたらそうそう御目にかかれる物では無いのだろう。その証拠に四人組の冒険者らしき人が嫌な笑顔を浮かべている。
「…やっちまった……」
「わふ?」
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