40話 お出掛け、からの……

「コウタ、出掛けるわよ」


ヒルダの声が掛かり出掛ける準備をする。

説明のお陰か見張りを付けるという条件で外出が出来るようになった、ちなみに見張りはミランダさんだ。


「おはよー」

「えぇ、おはよう。ーーじゃあ行きましょうか」



歩いていると後ろから視線を感じる、チラッと肩越しに後ろを見ればミランダさんが俺をガン見していた。


「な、なんすか……」

「見張りよ」

「そんなガン見しなくても……」

「まぁ、反応が面白いかと思ったけど……。普通ね」

「………」


意外と軽いノリの人なのか?、しょうがないとは言えずっと見られるのも落ち着かないしどうしたものか……。


「…そういえば、今日はどこに行くんだ?」

「お客様のお迎えよ」

「へー、誰?」

「王子様と勇者様」

「ふぉ、ふぉーん~……」


ヒルダは肩越しにこちらを見て楽しそうに言う。


ーーーこんちくしょう………。


「あっ、それじゃあ俺は行かない方が……」

「知り合い何だから平気でしょ」

「ぐぁ~、会いたくねぇ……」


こんな事だったら手紙をもっと真面目に書くんだった……。




街の正門まで来たがまだ居ないらしいのでヒルダ達は買い物、俺はタクト達を待つことになった。


「ふぁ~……眠い…」


良い感じに暖かくついつい草むらに寝てしまった。


ん?なんか腹部に微かな重みと温もりが……。


お腹を首を動かし見ると白い毛の子犬がスヤスヤと寝ていた、忘れるはずもないその姿はーーー。


「…メイルか?」


俺の声が聞こえたからか目を開けてあくびをした後に俺に『おはよう』という様に鳴いた。


「にゃー」

「おぉ!やっぱりメイーーーにゃーぁ!?」

「にゃ」

「えぇ……、お前いつも『わふ』とか言ってるじゃん。ほら、わふって」

「にゃーにゃー」

「うわぁー!メイルがグレたー!」

「にゃ?」

「ぐぁー!でも可愛いー!」

「にゃー!」

「相変わらずですね、コウタさん……」

「え?」


懐かしい声に思わず振り返ると、呆れた顔でこっちを見ているタクト達がいた。


「お、お~久しぶりみんな!……ん?いた!?ちょっ……なんで蹴られた……?」


ちょっと挨拶をしようとしたらユミが突然こちらに近づき脛を蹴りそのまま俺も私も、と言うようにみんな俺を蹴り始めた。


「うふふ、じゃあ私も」

「いたっ!……なんで?」

「そういう流れでしたので」

「いや…まぁ……、だれ?」


最後に俺を蹴ったのは綺麗な金髪のロング、スタイルも良く清楚なお姉さんと言った感じだ。

しかしその女性は一つ普通と違うのが付いていた。

ーーー羽衣だ、明らかに特別なキャラ感がする。

タクトを見ながら誰かを聞くととんでもない事を言い出した。


「精霊王です」

「あっ……、せいっうぉうぇ?」

「リーリャと申します」

「あ、はい…コウタって言います……」


意味が分からない、久しぶりに会ったと思ったら精霊王とか仲間になってるし。しかも美人だし……。


主人公やってるなぁ~、と考えているとフードを被っている子が俺の傍までやってきた。


「えーっと?」

「……心配した……」

「その声……、ミミルか?」


フードを捲ると涙目のミミルの顔があり少し動揺する。


「え、えっと…、泣いてる?」

「心配してたんだから当然でしょ!?」

「いてて!ごめん!ごめんって、だからつねるのは止めて!」


謝るとミミルはつねるのを止めて不機嫌そうな顔をしてタクト達の所に戻って行った。


「ふぅ…、ヘリックやミミルはよく遠出する許可かが貰えたな」

「「………」」

「……おい」


聞くとヘリックは笑顔で、ミミルは少しばつが悪そうな顔をして視線を逸らした。


「お前らも止めろよ……」

「俺達も行くつもりでしたし、何よりも心配させといてあんな手紙を書いたコウタさんには言われたくないです」

「おぉう……」


しばらくそこでお互いに今まで何があったのか報告しあっていたら用事を済ませたヒルダがやってきた。


「おー、ヒルダ遅かったな」

「ごめんなさい、ちょっと長引いて……。それで後ろの方達が?」

「おう、ヘリックは分かるよな?」

「えぇ」

「左から精霊王のリーリャ、聖騎士のラウルさんに聖女のミスティ。それで勇者のユミとタクトだ」

「ちょっと待て」

「……ん?」

「分かってるわよね、今の間は分かっている間よね?」

「…だって勇者だし……」

「……はぁ、それでコウタが抱えてるその子は?」

「家の自慢の子の1人神狼のメイルだ!」

「わふ!」

「あんたも大概よね………」


そう言ったヒルダは頭が痛そうにしながらタクト達に自己紹介をして城に案内をし始めた。

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