34話 勇者のその後

ーーーあれから2週間が経った。

ギルドに来て定期的に報告を聞いているがいまだにコウタさんはまだ見つからない、戦闘の痕がある場所はそこで激しい戦闘が行われた事が分かる程に荒れていた。だがコウタさんの死体等は見つかっていない。

魔族が回収したのか、死体も残らなかったのか逃げ切れたのかは分からない……。

あの時の助けようと思った気持ちは間違って無いと自信を持てる。だけどあの場の判断としては失格と言える、魔族はあの時のメンバーでは歯が立たないのは分かっていた。だからユミやコウタさんの判断が正しいのだろう、だからこそ悔しい……、守る為の力が欲しい……!。


「ここに居たのかい」

「ヘリックさん……」

「どうしたんだい?」

「いえ……その……」

「……コウタの事かい?」

「………」

「あれは君の責任じゃない」

「ですが……」

「コウタが選んだ事だし君も助けてくれようとした、だから充分さ」

「ヘリックさん……」

「僕だって、ミミルだって心配さ。僕達にとってコウタは身分とか関係無しに話し掛けてくれる大切な親友だ」

「そう…だったんですか」

「うん……、あっ!今のはコウタには言ったら駄目だよ?」

「は、はい!て、コウタさんが生きてるって信じてるんですね」

「そりゃあね、今はまだ見つかって無いけど何処かで元気にしてる。そんな気がするんだ」

「はは、何となく分かります」

「ーーーあの~……」


心配をしているのかしてないのか分からない会話をしていると、ギルドの職員が1枚の手紙を持ってきた。


「これは?」

「帝国のギルドからここ宛に送られた手紙何ですが……、取り敢えず見てください」

「はぁ…?」





ーーー皆様お元気でしょうか、僕は元気です。

魔族に襲われなんやかんやあって今は帝国に居ます。今は訳あって帝国の貴族に拾われ平和にやってます、今はその貴族の護衛をやってます。

仕事内容は美少女と街を散歩するだけでふかふかのベッドと旨い飯を食えるという最高にホワイトな内容。しばらくこっちで観光がてら情報収集とかするので心配しないで下さい。

後は……、特に無いや。



追伸 学園の出席数がヤバい気がするのでどうにかしてくださいお願いします。


ーーーコウタより





「「………」」

「タクー、ヘリックさーん戻ってき…… どうしたの?」

「あぁユミか……」


ユミ達が依頼から戻って来て俺達に話し掛けるが様子がおかしいのに気付きミスティとラウルさんも心配する。


「タクト様、ヘリック様大丈夫ですか?」

「ふむ……、その手紙が原因ですかな?」

「えぇ、まぁ……。ヘリックさん見せても?」

「うん、いいよ」

「何よ、悪いことでも書いてあるの?」

「「………」」


俺とヘリックさんは無言で3人に手紙を渡す、3人にそんな様子に少し警戒しながら手紙を読み始めた。


「何なのよ、もう……。えっと、なになに……」


読み進める事に3人の表情は抜け落ちていき、読み終えた頃には俺達5人は無表情になって手紙を見た。流石に気味が悪いのか職員も冒険者も遠目で見るだけで近づかない。


「ーーーふーん、コウタさんはこっちが心配してたのに帝国で旅行とかして楽しんでたんだぁ~」

『はぁ……』


思わずみんな溜め息を吐いてしまう。するとユミが突然なにかを閃いたのかこんなことを言い出した。


「帝国に行こう」

「…なに言ってるの?」

「私達が会いに行ってみんな一発づつ脛を蹴りましょう」

「中々エグいね……。でも帝国に行くのは良いかもね、魔族の事について話し合いたいし」

「うーん、いつ行きます?」

「今すぐ行きましょ」

「今すぐ… ですかな?」

「そ、だから準備を整えて昼前にここに集合」


そう言い残しさっさとギルドを出ていってしまったユミを呆然とみんな見送った。






「ーーーこ、コウタが生きてるって本当ですか!?」

「うん、僕達もさっき知ったばっかりでね。ほら、これがコウタからの手紙」


タクトくん達と別れ真っ先にミミルさんの元に行きコウタの事を報告した。


「……うっぐ…、よがったぁ……。よかったよぉ……」


手紙を読み終え涙を流しながら安心したような顔をする。そこで今から帝国にコウタを迎えに行くことを伝えると涙で濡れた瞳をこちらに向け。


「私も…、私も行きます!」

「許可は貰えるかい?」

「………説得します」


ミミルさんは涙を拭き領主である父親の部屋に向かった。




「駄目だ」

「で、でも!」

「他の国に気軽に行けるほど貴族は軽くないぞ」

「それ……は……」

「話は以上だ、戻りなさい」

「……はい」






ギルドに行くとみんな既に準備を終えていた様で俺が一番最後だった。


「タクト遅い」

「いや、ちょうど昼頃だろ」

「ま、それはどうでもいいけど」

「お前なぁ……」

「じゃあ行きましょう、コウタさんを殴りに!」

『お、おぉー…?』


目的が何やら物騒だがコウタさんだから大丈夫か、という謎の信頼がみんなにあったせいで誰もツッコミを入れず帝国へと向かった。

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