20話 恥ずかしい出逢い

前が見えない。あまりにも暇だったので庭でフェイ達と遊んでいたらメイルとレックスがよじ登り俺の顔に張り付いた、これはこれでモフモフが気持ちいいので良し。


「ようこそ、ヘリック様のお屋敷へ」

「「えぇ………」」


あれ?もしかして勇者達が来ちゃった!?

……やっべ、俺は顔に子狼張り付けてるし隣からは「ドゥヘヘヘ……」とか聴こえるし……。

「では、ご案内致します」

執事の人の声が聞こえ足音と気配が遠ざかって行く。取り敢えず二匹を顔から剥がしミリーに声を掛ける。

「おい、ミリー?勇者達が来たぞ」

「むふふ………、ええ、そうみたいですね挨拶に行きましょう」

「いや、もう修正は無理だと思う」

頑張ってキリッとしようとしたミリーの顔が暗くなる。

「ど、どうしましょう……変な所を見られてしまいました………」

「これで掴みはバッチリだな」

「うう……そんな事の為にやったんじゃありません!」

「取り敢えず部屋に戻るか?」

「………もう少ししたら戻ります」

「それ戻らない奴だから」

「戻ります、絶対に戻りますから~!」

「……じゃあ俺ももう少し」

「コウタさんも戻りにくいじゃないんですか~

「ば、俺はちっげーよ!俺はただミリーが心配で心配で」

「私をダシに使って逃げようとしないで下さい!」

「え、何?ちょっとオレ言葉がワカラナイ」

そんなくだらない事を言い合っている俺達をフェイ達は呆れながら眺めていた。そのあとメイルとレックスの介入により二人で顔をだらしなくしながらモフって喧嘩は終わった。





「ヘリック様、勇者様が参られました」

「ありがとう」

「皆様もどうぞ」

「失礼します……」

俺が入り皆も入っていく、部屋の中には俺よりも少し上の男性と女性がいた。


「やぁ、ようこそ……僕がここの家の主のヘリック・ギルバルド」

「私がミミル・ランドールと申します」

「あ、はい。自分はタクトって言います、こっちがユミです。」

「ミスティでございます」

「うん、よろしくね」

「あの、ヘリックさんは王子でミミルさんは?」

「私はここの街の領主の娘なんです」

「そうだったんですか……」

「実はもう一人いる予定だったんですけどね」

そう言いながら苦笑するヘリックさんとミミルさん。

………もしかして、あの庭にいた人の事か………?

みんなもどうやらそう思ったらしく微妙な表情をしている中、黙っていた優実が聞く。

「もしかして庭にいた人ですか?」

「あぁ、会ったんだね。そうだよその男の人がもう一人なんだ」

「でも会ったのにまだ帰って来てないのはおかしいですね?」

優実がどうするか目線を送ってくる。

(どうする、言う?)

(もし違う人だったらあれだし言ったほうがいいな)


「庭で狼と遊んでましたよ」

「遊んでて忘れたのかな?」

「小さい女の子はドゥヘヘヘ……と笑いながら、男の人は小さい狼を二匹顔に張り付けて棒立ちしてました」

「………」

「わかりました………多分ですけど二人は恥ずかしくて帰って来ないんですね………」

「そうだね……ルーフェス、すまないけどーーー」







「はぁ、今までこんなに脚が重い時なんて無かったです………」

「そうだなー、戻りたくねぇな~」

「「はぁ………」」

「わふ?」「がふぅ~……」

「………」

部屋に戻っている時間ずっとこんな調子だ、フェイの視線が痛い………。

「コウタさん着きました………」

「あぁ……着いてしまった………」

ヘリック達のいる部屋にたどり着いた。だけどノックが出来ない、あんな姿を見られて普通の顔で入れないっ!

「やべぇ、腹が痛くなってきた……」

「うぅ、そんなこと言わないで下さい、こっちまで痛くなりますぅ………」

「………うぉん」

「「あっ………」」

二人して扉の前で腹を抱えているとフェイが我慢出来なかったのか扉を開けてしまった。

扉の先には若い男が一人女が二人(美少女)、

強キャラ臭がするおじさんがいた。

「ど、どうも」

「どうもじゃないわよ………」

「はは………」

ミミルが怒ってる今までに無いぐらい怒ってる、ヘリックも流石に庇いきれないらしい。

「コウタ……後で話す時間を作ってみるから別の部屋で待っててくれる?」

「お、おう……すまん」


大人しくしてよ………。

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