18話 道中の勇者

「ここに勇者と聖女が来るというのは本当か?」

「ああ……三日後に来る」

「ククク……やっと例の計画を始められます………」

「やっとだ……やっと我らの成就が、がぁっ!」

「ザビ!」

「くそっ!敵襲か!?」

「あなた達は授業中に何をしてるのですか?」

「あ、あのライリー先生違うんです………」

「えっと、これは勇者様と聖女様にサインを貰う計画を……」




教室の一角で黒のコートにフードを目深に被りそれっぽい口調で話していた3バカはライリー先生に叱られていた。

「……アホか」

「でもコウタもやりそうだよねあんな格好」

「いや、しないだろ……しないよ多分……てか三日後に来るのか」

「ええ、だから私もヘリック様も大変なのよ」

「早く来るといいな」

「コウタも勇者とか聖女様達に会いたいの?」

「まぁ……ね」

どんな奴なのか、出来れば変な奴じゃないことを祈ろう………







ーーー俺達はとある村に訪れていた。

「タクト様、大丈夫ですか?」

「あぁ………大丈夫……かな」

「こんなのでバテてどうするのよ」

優実が夕食前に運動をしようという事で 剣で打ち合いをした、結果はぼろ負け……。

ここに来てから優実は凄かった普通なら半年の技を1週間で覚えたり等……ちなみに俺は3週間位掛かった、それでも充分に早いのだが……。

俺達は剣なんて握ったことなんて無い、なのにこんなに早く使いこなせるのは勇者として選ばれたからなのか?少なくても強さで言えば優実は俺よりも数段上にいる。


「ふぅ……無茶言うなよ、お前が強すぎるんだ」

「あんたも同じ勇者でしょ?なら頑張ればいけるわよ」

こいつは元の世界のドラマが観たいが為に寝る間も惜しんで訓練をしていた、その様子を偶々見た教会の騎士によるとその姿はまるで魔王の様だと………勇者が魔王に見られるって目茶苦茶だ……

「はい、治療が終わりましたよタクト様」

「ありがとう、ミスティ」

「いえ、ユミ様も何処か怪我をされていますか?」

「私は大丈夫よ、ありがとミスティ」

「なら良かったです」

見るも惚れ惚れするような笑顔を浮かべるミスティ。あれから旅を続けていく内に優実とミスティは同じ位の年だったらしくすぐに仲良くなった、いつまでも重い空気じゃ魔王を倒す前に精神が病む所だった。

二人が仲良く話してる所を眺めていると護衛の聖騎士のラウルさんが話しかけて来た。


「タクト様、お休みになられなくて大丈夫ですか?」

「ええ、まだ大丈夫ですよ。そろそろ街に着くんでしたっけ?」

「ええ、この村から1日程ですかね、リューベルという街に着きます。」

「リューベルですか……楽しみです」

「ええ、いい街ですからきっと気に入りますよ」

リューベル、何故かは判らないけど何かがある気がする、ただの勘だけど。



次の日、村から出てリューベルの街に向かう。整地された街道を進み歩いていると微かに寒気がした。

「タクト様、大丈夫ですか?」

「あぁ、なんか寒気がしてな」

「風邪でしょうか?」

「いや、どっちかと言うと悪寒かな?」

ミスティとそんな事を話していると前にフードを被った男がこちらをジッと視ていた。

その男は俺と優実を見るとフードを取った、男の顔を見た瞬間ラウルさんとミスティが驚きラウルさんが言った。


「なぜ、こんな所に魔族が!?」

あれが、魔族……、魔族の男は両手に籠手らしき物を付けてこちらを見ている。

「ふむ、今回の勇者は二人か……」

「皆様、お下がりください……自分が時間を稼ぐ内に街までお逃げください」

「そんな!ラウル!」

「ミスティ様!勇者様達をよろしくお願いします……」

「なに言ってるのよ、私達も殺るに決まってるじゃない」

「お前この世界に来てから言動がヤバイぞ………ラウルさん俺達もやりますよ」

「タクト様、ユミ様……ラウル、私もここに残ります」

「皆様………」

「話は終わったか?」

「ええ、後はあんたを潰すだけよ」

「む、むぅ……今代の勇者は随分過激なのだな……」

「なんかゴメン………」

「お前が謝る事では………まぁいい、行くぞ」

「!ミスティ様!」

「はい、エリアプロテクト!」

ミスティがみんなに防御を上げる魔法を掛ける。それと同時にラウルさんが大剣を持ち優実と一緒に魔族に駆け出す、俺も急いでその後を追う。

「フッ!」

魔族が優実に向かい右手を突き出す、ラウルさんが大剣を使いそれを防ぐ。

「ぐっ、重い……」

「はぁっ!」

優実がラウルさんの陰から魔族の目に向けて突きを放つ、容赦がない。

「むぅ!?」

首を傾けてそれを避けた魔族が顔色を変えて後ろに下がる、太股を見るとナイフが刺さっていた。どうやら突きは囮で太股にナイフを刺すことが目的だったらしい。

「くっ、勇者らしからぬ戦いだ……」

「目撃者がいなくなれば卑怯という事実も消えるわ」

見付からなければ犯罪じゃない理論を言いながら魔族に近づく、おいやめろ、ミスティとラウルさんが引いてるから。

優実のアシストをするためいつでも出れる準備をしとく。

「……外道」

「勝てば正義よ」

優実が魔族に向かう、魔族は太股の怪我のせいで動けないらしくカウンターで向かい打つ様だ。剣を左肩に振るのを魔族は左で受け流し右手で優実にボディーブローを放つ、優実は武器を持っていない左手で無理矢理防ぎながら太股に刺さったナイフを踏む。

「ぐぁぁぁ!」

魔族は血走った目で優実を睨み上げ左手に魔力を溜める。ーーーやばい行かなきゃ。

俺はそれを確認した瞬間、魔法を発動し魔族の後ろに転移する、みんなが驚く、魔族が後ろに振り向こうとする。その前に俺は魔族の左腕を切り飛ばす。

その流れで首を飛ばし仕留める、不思議と落ち着いていた。

ーーーこれが下級か………あれ?なんで下級ってわかったんだ?それに俺はなんで転移魔法なんて使えるんだ………

「タク凄いじゃない!」

「流石ですタクト様、ユミ様!」

「まぁまぁね、こんなんじゃ魔王なんて倒せないわ」

「そうですね、ただの魔族がこれだと魔王はどれ程の強さなのか………」

考えてる途中で優実達が話しかけて来た、正直助かった、あのまま考えてたら戻れなくなる気がした。ラウルさんをみると彼方も俺の事を見て何かを考えていた、きっと勘づいたのだろうさっきの事を街に着いたら相談してみよう。

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