◆9
ノムー、イフリー、ウンディー、シルキ。
これがこの世界、人間界にある大陸の名前。
一番大きく広い大陸はノムー、首都はドメイライト。
三階層の大きな街で繁栄は人間界1と言っても過言ではない。貴族や王族もこのドメイライトを好み暮らしている。
勿論他の大陸にも貴族、王族は存在するが数は圧倒的にノムー...ドメイライトが多い。
それもそうだ。人間界で人工が一番多い街こそがドメイライトなのだから。
ドメイライト騎士団本部もある。
次に大きな大陸はイフリー、首都はデザリア。
砂漠があり、平均気温も高いイフリー大陸にあるデザリア。闘技場があり、闘技大会を主催した際に参加者を余す事なくデザリアで受け入れる為か、宿屋の数は多い。砂漠を見に来る観光客や鉱山で仕事をするクラフター達も多く集まるので宿屋は常に忙しそうにしているとか。
デザリア軍がある。.....正確にはデザリア騎士団だが騎士とは思えない制服から軍と呼ばれている。
ノムーとの仲はあまり良くはないがそれは王族や貴族、騎士の話で、民間人等は争うどころか助け合おうと言い、食料や鉱石等を取引している。
次に大きな大陸はウンディー。ノムーとイフリーに挟まれる形で存在する大陸で、ここは王国等ではない。仕切る者...王や女王がいない大陸で、おいしい水が沢山とれる大陸。ノムーもイフリーもウンディー大陸を欲しがっているが迂闊に手を出せない理由がある。それは冒険者の存在。
冒険者と呼ばれている者が好み集まり暮らす大陸がウンディーで、首都はバリアリバル。
ウンディーもノムー、イフリーと物資等の取引をしている。
そして最後はシルキ大陸。
このシルキだけは謎が多い。
サムライやニンジャ、ブショーと呼ばれる騎士なのか冒険者なのか解らない存在が住む大陸。他国とはあまり関わりはないがこのシルキも物資取引はしている。
この4つの大陸が人間界で人が住む大陸。
名前もなく、住んでいる者もいない大陸が人間界の中心に存在している。地図では確かに存在しているが騎士や冒険者もその大陸には行こうとしない。
小さな大陸...と言うより島の様な感じだ。下手をすれば無数に存在する孤島より小さな大陸。何があるのかもわからないし、この大陸の事を考えても不思議とすぐどうでもよくなってしまう。
今ワタシが生活している大陸はノムー。ドメイライト騎士団の寮で生活している騎士だ。その裏ではペレイデス モルフォ ギルドマスター マカオン。これもワタシだ。
マカオンは あげは蝶 の別の呼び名で、ヒロではない別の存在としてペレイデスモルフォで活動すると決めた日に名乗る事を決めた名。
ペレイデスモルフォの目的はドメイライト王国への復讐。
ドメイライトとデザリアが数十年前戦争をし、ノムー大陸にあったワタシの故郷...白黒の蝶が生息している小さな村が戦争に巻き込まれ消えた。
ドメイライト王は、騎士は、自分達が守るべき大陸に住む者を、ワタシの村を見捨てるだけではなく、その村を戦場に選び、村人達には何も言わず殺し合いを始めたのだ。
戦争の中必死に逃げた村人達へ1人の騎士が仮設村を提供してくれた。
大人達は感謝し、そこで暮らし始める。どこの誰かも知らない人間に餌を与えられて、その人間に媚売りすがり付く大人達が嫌いだった。
次の戦場は~と話していた騎士の会話を盗み聞きし、村にはもう騎士達は居ないと知り、当時子供だったワタシと他数名の子供で仮設村を抜け出し、住んでいた村へ向かった。
そこにはもうワタシの知る村は無かった。
鼻を刺す臭い、嫌な煙と崩れた風景だけが残っていた。
涙も出ない中で見つけたのは蝶が生息していた痕跡。
白黒の蝶ではなく、その姿を見る事が出来れば幸せになれる。と言われていたアゲハ蝶...マカオン。
ブルートパーズの様に綺麗な水色蝶...ペレイデスモルフォ。
幸運幸福を運ぶ水色蝶が今力なく地面へ落ち、その命を終わらせた。
見た者は幸せになれる蝶...。
この日、仮設村にいた村人達が消えた。
残されたのは村を抜け出していたワタシ達数十名だけだった。
騎士団が生き残った村人達を素材に、人工的に 魔結晶を作り出しその力を使ってデザリアとの戦争に勝利した。
勝利を喜ぶドメイライト。
ワタシ達もドメイライトの人間なのに。
ワタシ達も同じ人間なのに。
人間が人間を殺し、人間が人間を使い人間を殺す。
そして喜ぶ。
狂ってる。
こんな事で得た幸せは幸せではない。
見た者は幸せになれる蝶?ワタシは確かに見た。死ぬ寸前まで翅を広げ飛ぼうとしていたペレイデスモルフォを。でも、幸せにはなれなかった。
それどころか、更に奪われ不幸になった。
子供だったワタシはこの時、殻を破り捨て蝶になる事を決めた。
綺麗に舞い翔ぶ蝶ではなく、平和と呼ばれる今を否定し、壊す為の蝶に。
ドメイライト騎士団にヒロとして入団し騎士の動きを調べ、ペレイデスモルフォのマスター マカオンとして騎士団と王族を狙っていた。
心に余裕なんて言葉は無かった...必要無かった。
恨むだけでは何も変わらない。
言うだけでは何も始まらない。
少しの行動でやった気になって腐るなら、やれる事を全て全力でやって腐りたい。
騎士に入り、ギルドを作り、騎士を、国を、ワタシから全てを奪った奴等を、平和を、消してやる。
こうしてワタシは復讐する事だけにしがみつき生きた。
誰の声も届かない、自分の声も届かない
そんなある日、ワタシの心に何かが生まれた。
復讐した後に何が残るのか?
今の平和はとても喜べるモノではない。しかし、安心し心から笑顔になっている人間も存在する、その人間は事実を知らないだけだが...ワタシがやろうとしている事...つまり今の平和を壊す事でワタシと同じ気持ちになる人間が生まれるのではないか?
今の平和はワタシが喜び求める平和ではない。ワタシがこの平和を破壊してワタシは達成感に喜ぶのだろうか?
他の人間達はワタシを恨み憎むだろう。そしてまた完成した平和は破壊され、それでまた恨み泣く者が生まれ...その繰り返しではないのか?
そう考え始めたのはドメイライト騎士団 上層部騎士レイラ隊の小隊長として加入してからだ。
必死に平和を、今の世界をより良く、守ろうとするレイラ隊だったが、ワタシ以外は氷島ウィカルムでモンスターと戦闘し、死んだ。
ワタシは孤島で出会った牙獣または幻獣モンスター、フェンリルと共にレイラ隊を全滅させた凶悪モンスター 氷結の女帝ウィカルムと戦闘し、足掻く事も許されずに負けた。
自分の終わりを覚悟したワタシをフェンリルが必死に繋ぎ助けてくれた。なぜあの時助けてくれたのか...それは今でもハッキリわからない。でもワタシを助けてくれたフェンリルはどこか...ワタシに似たモノを感じた。今の現実を否定し恨み憎んでいるが、未来を捨てる事が出来ない。そんな眼を持っていた。
子供のフェンリルだったが驚いた事に炎属性と氷属性を扱う事ができ、水面を凍らせる程の氷属性ブレスを吐き、瀕死のワタシを背に乗せ孤島からノムーの本大陸へ渡ったらしい。
らしい、と言うのはワタシとフェンリルを保護してくれた騎士から聞いた話だからだ。
騎士の話によれば、ワタシを背負ったフェンリルが砂浜に上陸したシーンをたまたま発見し、その時組まれていた隊でフェンリルを討伐しようとした。しかし背には同じドメイライト騎士団のマークを持つ瀕死の騎士、フェンリルも同じく瀕死状態で水面にはフェンリルが通って来たであろう氷路が浮かんでいた。フェンリルが気を失なうと氷路は溶け消え、騎士達はワタシとフェンリルを急ぎ一番近くの村だったポルアー村まで運び手当てをしてくれた。
意識を取り戻したワタシは何よりも先に、騎士団へ孤島での事を報告し、すぐに多くの調査隊が孤島へ向かった。
ワタシはフェンリルへ助けてもらったお礼を言おうと村人にその姿を説明するも、村人は皆首を傾げ「子犬ならいる」と言った。
ワタシはその子犬を見てみたいと言い、村人達が案内してくれた広場にいたのは白銀の毛を持つ小さな、フェンリルだった。
ワタシの姿を見た瞬間フェンリルは「クゥ!」と高く可愛らしい声をあげ駆け寄りワタシの周りを1周回り、尻尾を忙しそうに振り、座った。
その行動とその姿、瞳を見てワタシは涙が溢れた。
止めようとしても溢れ、流れる涙。
群れの中に家族もいただろう。その群れが氷結の女帝を前に散った。家族や仲間を失ったにも関わらず、関係ない人間のワタシや他の騎士達の命を、未来を繋いだ。
ワタシ1人では繋げなかった未来を、この子が...。
「ごめんね、ワタシに力があればあなたの家族も...ううん、ワタシはあなたの家族を殺そうとした。それなのに」
ワタシは崩れ落ち、そう言うと子犬のフェンリルはワン、と吠えワタシの手に噛みついた。
謝るな、泣くな、下を見るな。と言う様に何度も噛みつき、顔をあげたワタシの頬に流れる涙を舐め「クゥ」と鳴きワタシの前に座った。
未来を捨てていない綺麗な瞳がワタシの中にある氷を少し溶かした。
やっぱり許せない。
許しちゃイケナイ。
でも、未来まで壊す様な事はしちゃイケナイ。それをすればワタシから全てを奪った騎士と同じになってしまう。
自分の不幸を他人にも...これは違う。
レイラ隊が、フェンリルが繋いでくれた未来と命を、ワタシは必死に生きなきゃイケナイ。
今の現実が許せないから壊す。ではなく、今の現実をもっと良い現実に、みんなが笑って暮らせる様な世界に変えればいいんだ。
まずは今の騎士団をもっといい騎士団に変えるんだ。
誰かが変えてくれるのを待つんじゃない。ワタシが行動するんだ。結果を出して、王族や騎士達にではなく、この世界に暮らす人々から信頼してもらえる様になって、騎士団長の席にワタシが。
「あなたも一緒に来てくれる?」
「クゥ!」
この日ワタシの中で白と黒が混ざり始めた。
騎士として世界を変えたいワタシとギルドとして世界を壊すではなく、世界を見たいワタシ。
この日から数日後、氷島ウィカルムに生存者は存在しなかったと聞かされた。
騎士と冒険者が氷島ウィカルムの権利をかて争いが始まりそうだったが、騎士は...ノムーはあっさり氷島ウィカルムをウンディーの領土として認めると言った。勿論、危険なモンスターも存在している事を伝えた上で、ウンディーを仕切っていたユニオンが氷島ウィカルムをウンディーの領土と宣言し、同時に立ち入り禁止マップに指定した。
25歳になったワタシはドメイライト騎士団 上層部隊隊長の話を断り、ドメイライト騎士団 隊長ヒロとして自分の隊を持つ事になった。
上層部の隊長になれば騎士団長...ワタシから全てを奪ったフィリグリーの駒になってしまう。そうなれば民間人と交流する機会は大幅に減る。
ワタシが欲しいのは王や団長が喜ぶ結果ではなく、人々が安心して笑い、暮らせる世界。
人々が今何に悩み、何に不安を持っているのかを知るには隊長の席が一番動きやすく、ワタシの理想を現実にする為、一歩一歩進みやすい立場だった。
若い騎士もワタシの隊に入隊し最初は周辺の警備や軽い討伐任務、街の警備等をしてドメイライトに住む人々と交流を深めていた。
ギルドには上層部騎士の動きを教え、ギルドからはドメイライト周辺で起こった事件等を集めさせていた。
ワタシの行動に不満を持つギルドメンバーも徐々に出てきたが、ワタシの変化を少し喜んでくれるメンバーもそこには居た。
騎士とギルドのバランスをギリギリ保ち安心していたワタシへ、騎士団長から命令が下った。
◆
「準備終わりましたよ隊長」
「あ、うん。ありがとう」
ワタシに声をかけて来た騎士はワタシの隊....ヒロ隊の小隊長ヒガシン。
今ワタシ達は騎士団長から下された任務でポルアー村に来ている。
団長から下された任務はポルアー村周辺にポップした大型甲殻虫モンスターを討伐し、魔結晶がドロップした場合直ちに届ける討伐系任務。
甲殻虫と言われても正直ピンと来ない。しかし大型となればターゲットは絞られる。
この辺りに生息している大型の虫モンスターは巨大ムカデ型モンスター センチペンドラか巨大蜘蛛型モンスター ビネガロのどちらかだろう。センチペンドラ...ムカデは魔結晶を持っているのか怪しいが、ビネガロ...蜘蛛は魔結晶持ちである確率が高い。
勿論理由もある。
センチペンドラはD+のモンスターだがビネガロはC+、D+から魔結晶をドロップしたとの情報は聞いた事ないがC+から魔結晶をドロップした話は何度か耳にした。
まぁどちらも討伐すればいい話だが問題はこの虫モンスターが夜行性である事だ。
虫系モンスターは糸や毒、麻痺などの状態異常...デバフ系を持つ個体がほとんどで暗い夜に戦闘するのは難しい。しかし夜行性という点に救われているのも事実だ。村の人々は夜平原に出ないので戦闘中村人にターゲットが向く事はまずない。
「隊長どうしたんですか?テントもう完璧ですよ」
ヒガシンは個性的な髪型を整えつつワタシにそう言った。
ポルアー村を拠点にするが宿屋に泊まるワケにはいかない。観光客や旅人が騎士のせいで宿泊出来ない等あってはならない。
村の外れにキャンプをさせてもらい、任務期間ワタシ達はこのテントで宿泊する。
村長さんが宿屋を提供してくれたが、気持ちだけありがたく受け取り断らせてもらった。
数十名の騎士がテント内でフォンを操作しワタシを待っていた。
「お待たせ、みんな任務内容とマップデータは見たかな?」
ワタシの質問に各々の返事を確認し、ワタシはフォンを取り出しモンスター図鑑データを全員へ送った。
「今送ったモンスターデータが今回のターゲットね。ムカデと蜘蛛かな。夜行性だから今日の夕方、この村の近くを深夜まで軽く探索して...明日は朝は範囲を広げて周辺の警備も兼ねた探索、夕方から探索した範囲でモンスターを探す。今日両方見つけて倒しちゃえば今日で終わりだから、頑張ろう!」
今からこの辺りのマップを歩き、夕方歩いた範囲を探索するのは効率が悪い。
明日から時間を多めにとり朝から広い範囲をゆっくり探索し、そこで怪しいエリアと思ったエリアを夕方~深夜まで探索した方がいい。
今日は夕方まで休憩かな。
「ポルアー村ってドメイライトと違って...みんなが助け合ってる感じですね」
ヒガシンはマップを見つつ言った。ドメイライトでも助け合う人々は存在するが、全員がそうではなく、人も多い為その助け合いが人混みに隠れ見えない場合もある。
「そうだね、ドメイライトと比べるのも違うけど...質素な生活だからこそ助け合って質素を素朴に変えているのかな?」
「質素を素朴に...贅沢をしない生活を自然のまま送るって事ですか?」
「うん。変な見栄や飾りもせず村人みんなが自分達の生活を自然と楽しんでいる様な...」
ワタシが住んでいた村も同じだった。
質素だったけど素朴で温かくて、みんなが助け合って毎日楽しく暮らしていた。
何か事件が起これば村全体で解決して、祝い事があれば村全体で祝って、あの時はその一体感が妙に貧乏臭くて嫌いだったけど...こういうのが本当の平和や幸せなんじゃないかな。
「あ、隊長聞きました?ってか知ってます?」
クゥのお皿へミルクを注いでいたワタシはヒガシンの質問に「何を?」と返した。○○の話知ってますか?と聞いてくれれば早いのだが会話のキャッチボールをするにはこのペースが丁度いい。
「俺はまだ見た事ないんですが、最近街...ドメイライトの街で、自分は冒険者だ!って言って街の人に仕事は無いか聞いて回ってる人がいるとか」
ドメイライトで冒険者?と言うより、ノムー大陸で冒険者?
ノムー大陸には騎士団が存在するし、ドメイライトには騎士団本部もある。冒険者にお金を払って依頼する人はほぼ居ない気がするけど...、
「その冒険者さんはお金...報酬に見合った働きをするの?」
報酬を受け取り、報酬以下の働きならば止めさせなければトラブルの種になりかねない。それに冒険者と名乗っているならば最悪力で押し切るのではないか?
「それが報酬以上の働きをするらしいんですよ。と言っても受ける依頼は物探しやお使い系なんですけどね。依頼をしつつ平原でモンスターを倒して、ドロした素材を売って生活してるらしいです」
「へぇー」
冒険者...の真似事か。
ちゃんと依頼をこなしているなら言う事もないし、平原のモンスターを討伐してくれるのは騎士としてありがたい。
ドメイライトに住んでいるなら最初に騎士になる事を考えると思うけど...冒険者への憧れがあるのかな?何にせよ悪い感じじゃないなら放置していても問題ない。
冒険者...か。
騎士としてではなく、冒険者として街の人や他の大陸の人とも交流する事が出来る職。
安定した給料は無いけど上級冒険者なら上級騎士と変わらない程稼げるらしいし、危険度は騎士も冒険者も変わらない。自由があると言う点では冒険者の方が楽だけど、上級冒険者にならなければ稼げるお金も少ない職。
ドメイライトで冒険者って発想は正直驚いた。
冒険者の話を聞き、ワタシはギルドへ連絡を入れた。
するとすぐに返事が返ってくる。
こっちは別に何も変わってないよ、任務中だろ?こっちの心配より自分達の心配をしなよ。あ、ギルド倉庫に繋がる機会があったら中にある剣を受け取っといてよ!爆破鱗粉と剣の合成に成功したからさ。
と、リョウからの返事。
変わりない様子で安心したワタシは返事を送り、明日にでもギルド倉庫からその剣をフォンポーチに移動させる事に。
爆破する鱗粉はS2ランクの蝶型モンスター サディキプリスの翅に付着している鱗粉。討伐するのは難しく、存在もレアなモンスターだがサディキプリスが通った場所にはその鱗粉が残り、採取する事で入手できる。しかし爆破する鱗粉なので採取も難しく扱うのも同じく難しい。競売に出ている鱗粉を買い、スミスではなくアルケミストに依頼し、鱗粉と剣を合成してもらった。
蝶という点で選んだだけではなく、爆破...氷属性なのに炎が効かないモンスター に大いに有効な特殊属性なので、爆破はワタシにとって絶対必要な
とにかくその剣は明日取り出すとして、今日は夕方まで村人達と交流する事に。
ワタシとクゥを見て「あの時の騎士さんだ!」と子供達が駆け寄ってくる。
クゥがワタシを助けてくれたあの日、ポルアー村で治療してもらいワタシの今がある。
クゥは子供達と走り回り、ワタシも自然と笑顔が溢れる。
村の人達と交流していると空は赤く染まり始め、ワタシ達は装備を整え平原へ出た。
しかし残念ながら今日はターゲットとエンカウントする事は出来ず、ナイトウルフを討伐しドロップした素材は村へ、食材はワタシ達が頂く事にした。
明日、朝から行動する事はみんなに伝えてあった為か、テントへ戻るとすぐに全員眠りについた。
ワタシも休もうとした時、フォンに1通のメッセージが届く。
相手は騎士団長フィリグリーだ。
キュッと眉を寄せメッセージを開いてみると「ドメイライト周辺でデザリア軍を発見したとの報告が入った。デザリア軍を発見した場合は私に報告を入れ、接触せず任務を遂行せよ。デザリア軍の狙いは今君達が狙っているモンスターの魔結晶。デザリアよりも先にモンスターを討伐する様、よろしく頼む」との内容に眼を見開いた。
デザリア軍も魔結晶を狙う理由...魔結晶をマテリアに生成し武器に装着するか、魔結晶を素材に武器を生産する狙いか。
どっちにしろデザリアに渡すワケにはいかない。
いや、ドメイライトにもだ。
自分がドロップした場合はそのままギルド倉庫へ入れよう。
誰もドロップ出来ずに終わる事を願い、ワタシも眠る事にした。
「おやすみクゥ」
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