霊関係の話⑧ お地蔵さんトコでバイトしてた娘の話

 私には一人娘がいます。私も男の生まれそこないなら、この娘も生まれそこないらしく、ほぼ男の子のような性質です。

 だいたいが、人間は何度も生まれ変わるうちに男だったり女だったりしているので、性差におけるナントカとか、カルマがどうとかの話は、私は信じません。

 宗教ではちょいちょい女はどうの、と言いますが、胡散臭いことこのうえない。


 私は前世までの何度かで男が続いていたらしく、現世で女の生活をするのが苦行状態ではありますが、娘はさいわい、バランス良く男女転生をしていたらしく、支障は感じていないようで、ホッとしております。


 この娘ですが、ちょっとした曰くがあります。


 その昔、姉がコックリさんをやったか何か、オカルト的なことで、私の産む子供は私の兄の一人で、私たち姉妹の他に母は流産してしまった子が二人いたそうで、その一人だ、という……なんだかややこしい話ですが。

 実際、母に確認を取ると「なぜ知ってるの!?」と驚かれたので事実なんでしょう。兄となるはずの水子が二人居るそうです。


 水子といえば、私は我が子がまだ腹の中にも居なかったある年のこと、京都のどこぞの寺へ迷い込んだのですね。なにをしに京都まで行ったのだったか忘れましたが、たぶん墓参りだったと思います。驚異的な方向音痴なもので、その時も恐らくは迷子でその寺へたどり着いたものでしょう。


 で、この迷い込んだお寺。境内は広く、観光寺らしく、綺麗に掃除も行き届いていて、水子の供養塔がたくさん並んでいたのを覚えています。

 これも小説のワンシーンで流用させてもらいましたが、その水子の供養塔の周囲には本当に沢山の風車が供えられていて、煩いくらいにガラガラ、ガラガラと鳴り響いていました。

 微笑ましく、けど風のない蒸し暑い夏の日でしたので、とにかく喉が渇いて仕方なかったんですね。で、水子たちにお参りをしまして、自販機でジュースでもと思ったものの、そんなものはなくで、申し訳なく思いながら帰ったものでした。

 暑いのは同じ、お供えくらい盛っておけ、みたいな催促だったかも知れませんね、あのガラガラは。(笑


 我が娘に話を戻しますが、この子は、お地蔵さんの元で同じような境遇の水子たちの子守をしていたんだそうで、今では子供があんまり好きじゃないようです。

 うるさいし、面倒だし、疲れるとかいう理由で、自身は一人っ子で子供と接する機会もなかったくせにうんざりした様子でいつもそう言っています。


 私がこの子を身ごもる前の話ですが、願掛けをしていました。何を願ったかも忘れていますが、願いを掛けて千日目ですか、満願成就のその夜のことです。


 ふと、夜中に目を覚ましました。寝苦しかったものか、私は横向けになっていたようで、視界に壁が映りました。で、その壁には、曼荼羅図の形で、多くの顔が浮かんでいたんです。ぐるりと円を描く曼荼羅状態の人の顔。獣も混ざっていたような気がしますが、動転していたのではっきりとは覚えていません。

「うわー! うわー! うわー! うわー!」

 声にならない悲鳴を上げつつ、咄嗟に体をねじり、上を見ました。


 天井一杯に人の顔。


「うわー! うわー! うわー! うわー!」

 動転したまま、また横を向くと、そこには変わらず顔面曼荼羅。

「うわー! うわー! うわー! うわー!」

 慌てて上を向くと、天井いっぱいに満面の笑顔。


 記憶はそれで途切れ、上向いたり横向いたりのうちに眠ってしまったようでした。次に目覚めた時には朝です。曼荼羅も巨大な顔面も消えていました。

 後からよくよく考えてみると、その笑顔は赤ん坊のもので、どうやらその時に懐妊したようで、お騒がせな兄が挨拶代わりに出てきたというところだったようです。曼荼羅の真ん中は、お地蔵様だったような気もしています。


 そういうわけで、お地蔵様のお墨付きをもって生まれた我が娘は、傍に居るだけで霊の気配が掻き消えるほどには強い存在のようです。


 私は心霊番組が嫌いで、普段は鈍っているアンテナが鋭くなるのか、感じたくもない霊気が肌を刺してザワザワするんですね。このザワザワは心地悪くて苦手なのですが、娘が居ると、不思議とホラーを見てアンテナが尖っても、霊の気配を感じないのです。

 居ないってことはないだろうから、恐らくはこちらが苦手とする類の、害意のあるタイプが近寄れないのだろうと思っています。さすがお地蔵さんの元でアルバイトしてただけあるな、といつも感心しきりです。


 ホラー映画とか心霊番組とかは、本当に嫌いです。あの音楽。あの演出。


 脅かされればフツーに怖いんです。そこへワラワラとホンマモンが寄ってたかって集まってきて、体感温度がスーッと下がったら効果倍増。マジでやめて、と思いませんか。

 彼らの多くは自在に動ける存在です。好き勝手にあちこちをうろついていて、何か珍しい事でもあれば、ワラワラと、という感じに集まってくるのです。

 だから興味本位にコックリさんなどしてはならないし、面白半分に考えることさえ本来ならタブーなんです。ワラワラと集まってくる中には、良くないのだって混ざってますから。


 霊感がある、こっちの存在を感知出来てやがるぜコイツー、とでも勘付かれたら、何を要求されたって仕方ない。

 鈍感野郎ばかりだから彼らは諦めているだけなのです。

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