考える、俺。
押忍!!学です。今日はあまり漢っぽくないですね。正直に言って全く眠れません。
今、夜中の三時。昼も夕もご飯を食べていない。サラの手料理だが食べる気になれない。
気分転換に何か飲もうと思いダイニングに行く。
誰もいない。
テーブルにメモがあった。
『ガクさんへ。
お身体は大丈夫ですか?
スミスさんから話は聞きました。無理はしないでくださいね。お体が優れないようでしたら明日もお休みしても大丈夫ですからね。
お鍋にスープを用意しました。温めて飲んでください。少しでも体に栄養を補充してください。おやすみなさい。
俺の嫁のサラより』
俺は【アイテム収納アプリ】の中にイメージ操作で入れる。宝だ。
俺は椅子に座りサラを思い浮かべる。笑顔だな。俺の中に出てくるサラは全て、笑顔だ。
スマホを開き写メを見る。寝顔や寝起きの顔。仮面を被ったサラ。働くサラ。サラはいつも笑顔だ。
俺も笑顔になれるだろうか、サラのように笑顔に。
「サラは強いな~」
「……そんな事はないですよ」
「ウオォ!ビックリした!!サラか」
「驚かせてすいません」
「ごめん。大丈夫だよ」
本当にびっくりした。心臓止まるかと思った。
「サラ起きたんだ」
「いえ。ガクさんのお部屋から音が聞こえまして、それで」
「サラも起きてたの?」
「はい。眠れなくて」
「俺もだ」
「スープ温めますか?」
「お願いします」
「はい!」
サラは笑顔でやってくれた。温まったスープを一口飲む。口から喉、喉から胃へ、温まる。中からホカホカと温まる。美味しい。
「ううっぅぅぅぅ」
涙が流れてしまった。
「初めて私の料理を食べた時と一緒ですね」
「……グスン。そ、そうだね。懐かしい」
「もう、二週間ぐらい前ですね」
「あぁ、そうだな」
あれから二週間か。あっと言う間だったな。
「サラ」
「はい」
「俺は君が好きだ」
「私もガクさんが好きです」
「ありがとう。メチャクチャうれしいよ!」
「私も嬉しいです!」
サラの喜んでる顔がとてもかわいい。これでやっとお互いの気持ちを言葉にできた。これで俺も決心がついた。
「サラ」
「はい」
「待ってて欲しい」
「……え?」
「俺が強くなるまで待ってて欲しい」
「一緒に居られないのですか?」
「……そうだ」
「なぜですか!?」
「俺が弱いからだ。俺じゃ君を守れない。昨日、スミスさんに言われたんだ。サラを預けられるぐらいに強くなれと」
「そんな……」
「俺は、必ず強くなる。そして必ず迎えに行く。だからサラ待ってて欲しい。強くなって迎えに来たらサラ、俺と結婚しよう」
「……少し、考えさせてください」
「分かった。答えは急がないからゆっくり考えてほしい」
「はい。失礼します」
「…………ハァ~~~~」
こうなるよな。どう考えても。最悪嫌われてしまうかもな~。ショックだな~。
まぁ、たとえサラに嫌われても俺は強くならないといけない。サラの為に、夢の為に。
朝、サラは元気になっていた。と思うが、目に疲れが見える。俺が昨日、言った事を真剣に考えてくれたのだろう。
少しカラ元気なサラは見ていてちょっと複雑な気持ちになった。
「スミスさん。今日お時間ありますか?」
「ん?そうだな……。昼、いや、夕方には時間を作れるだろう。部屋に来い」
「ありがとうございます」
俺はサラと一緒に片付けをした。お互いに一言も喋らずに。無言。
本来なら俺がリードするんだろうが、三十六年も対人関係を築くことのなかった俺だ。今が精一杯の対人スキルをフルマックスで使い。ややオーバーしているくらいだ。これ以上は無理だ。
お店に向かう道中も俺とサラの会話はない。マーナとパッチちゃんには気を使わせてしまっている。本当に情けないな。俺は。
お店は相変わらずの大繁盛。出す料理がなくなり、店じまい。あまりの忙しさに頭が回らなかった。
帰る時も会話は無く、帰宅。晩ご飯の準備をし晩ご飯。
そして、スミスさんがいる部屋に向かう。一応言っておくが変な気持ちは全くないぞ!!
「俺です」
「入っていいぞ」
スミスさんの部屋に入る。何回か入ったことはあるが相変わらず豪華な部屋だ。俺の部屋の五倍は広い。ベッドがフカフカだろうな。ワインや酒が入ったケースがある。つまみ入りか。
「話は何だ」
「サラに俺の気持ちを伝えました」
「まぁ、朝からのお前たちを見て何となくだがわかっちゃいたがな。なんと言ったんだ?」
「俺が強くなるまで待って欲しいと。迎えに来たら結婚してほしいと」
「なんというか、我儘だな」
「……」
「そのうえ、相手が拒まないと分かっているから待ってほしいと伝えた分けだな」
「そ、それは……」
「お前は、何も分かっていないし。流されやすい」
「……」
「昨日、お前に見せた物はこの世界じゃ当り前な事だ。そこらへんで人が死ぬ。そんなのどこでも一緒だろう。お前はどれだけ平和ボケしているんだ?この世界をナメているとしか思えない」
三十六年の間に喧嘩を一度もやったことはない。近くで人が死んだなんて俺は経験したことがない。働いた事がない。運動をしたことがない。親のスネをかじり、悠々自適に遊んでいた。それが俺だ。
すれ違いから始まった崩壊を、俺は死んでから気が付いた。
俺は、今。また同じことを繰り返そうとしていたことに気が付いた。
「お前は、人の話を信じすぎる。人を信じすぎる。この世界は人を平気で食う奴らも毟り取る奴もいる」
「はい」
「お前は弱く。愚か者だ」
「……」
「同じ失敗を繰り返すだろうな、今のままでは」
「どうすればいいですか?」
「考えろ。考えて、考えて、考え続けろ。自分の事だけでなく……相手の事も」
「相手……」
「お前に抜けてるところは相手を考えていないところだ」
核心。ズバリ言い当てられた。俺がさっき気づいた事をこの人は俺よりも先に気が付いていたんだ。
俺は、自己中心的な男なのだと理解した。日本でも、この世界でも。俺は俺しか考えていないのか。
サラの事を考えていなかった。俺は本当に愚かなのかもしれないな。
「弱いのは何とかなる。だが愚かなところはお前自身が変えなくては話にならん」
「はい」
「ダメだな」
「え?」
「俺が今、何を考えているか考えたか?」
「……全く」
「今、考えてみろ。俺は何を考えているかを」
「……」
「常に考える事を意識しろ。考える事を止めるのは死んだ時だ。その事を肝に刻んでおけ。バカ者が」
「はい」
「ちなみに俺が考えていたことは、サラの子供の名前は何が良いか、だ」
「いろいろ台無しだ~~!!」
「俺の授業料は高い。これ以上は金をとるぞ。さっさと出てけ」
「はい。ありがとうございました」
「フン」
スミスさん。メチャクチャいい人説が俺の中の検索エンジンのトップに来ている。
俺は、一旦自分の部屋に戻って考えを整理する。
まず第一に俺が弱い事を自覚した。これはステータス面と知識面、経済力や伝手など。全てが弱い。
第二に俺はお人よし過ぎる。ごめんなさい。ポジティブな言い方をした。簡潔に言うとバカなんだな。
第三は自己中な事と他人を考えない事。スミスさんが言ってたのは、他人も考えるし、俺を騙す奴もいるから常に疑い、腹を探れって事だな。その為には力が必要ってことか。
散々だな。俺。良く今まで無事だったな。
スミスさんが俺を奴隷にしなかったのはマジで疑問に思えて来たな。
まず、ステータス面を強化するにあたって、俺はスキルのレベル上げをしなくてはならない。これは必須だろうな。
強くなるためにはどうするか。ダンジョンに行く事が最善なのかもしれない。これはまた、スミスさんに聞こう。俺、バカでごめんね。スミスさん!!
具体的なスキル構成を考えなくては。取得するだけなら制限は無い。これは嬉しい。だが取得したスキルを装備する上限は四つ。
今、つけているスキルは、・鑑定(少)・地図(少)・防御力上昇・素早さ上昇の四つだ。
スキルで分かっていることはスキルのレベルが二十を超えると(少)が付く。
(少)が付くと鑑定にしろ地図にしてもステータスの補正がかかる。
鑑定や地図は本来はステータスに何も影響がないと思っていたが、レベルを上げるとスキルの内容も上がるが、ステータスにも影響もあるとは。
今更だがスキルにはステータスを上げるスキルとスキルを発動するスキルがある。俺は半分ずつに分けたが、上がり具合によっては別の編成にしてしまうかもしれないな。
スキルはそんなとこか。
後は、俺が情弱であることこが問題になる。国の名前も統治してる人も知らない。やんなっちゃうな~~
冗談はさておき、情報はどこで仕入れるか。……ネットはこの世界には無い。となるとやっぱり本か。
本があるとこも探さないと。図書館とかあるのかな?
ダンジョンと図書館がある場所。それは……スミスさんに聞く。これ一択だな。
一と二はこれか、後はスミスさんに聞こう。怒らないかな?スミスさん。
問題は三か。俺はどうすればいいのだろうか。考えよう。
まずはサラを悩ませてる原因が俺で、俺はサラの事をもっと真剣に考えるべきだった。そして、自分だけで考えるんじゃなくて、サラと一緒によく話し合うべきだった。
俺が日本でやってしまった取り返しのつかない事をこっちでもまたやってしまう所だった。
サラが買い物から帰ってきたら、話し合おう。その前に謝らないとな。自分勝手な事をサラに押し付けて悩ませてしまった。
後、考える事はあるか?他の転生者のことかな?そっちは深く考えてなかった。一位を目指している転生者は何を求めているのか。まぁ、強さだよな。繋がりだったり。お金だったり。
地球の知識を使ってお金を稼ぐ……あ、俺、ロクな事覚えちゃいないや。
これから出来る事は朝のジョギングを追加して、こまめに鑑定スキルと地図スキルを使う。後は出来る限りの情報を聞く。だな。
下が騒がしくなってきた。サラ達が帰って来たか。緊張してきた。告白する時より緊張する。
ダイニングに行き、俺が目にしたのは傷だらけで所どころから血を流したマーナがみんなに囲まれながら手当を受けていた。
俺は、目の前の光景を漠然と見ているしかなかった。マスとスミスさんが指示し消毒や縫合もしていた。
何がなんだか。
そんな俺を目尻にマーナは重く口を開いた。
「ボス。すまない。……サラが……攫われた」
俺は目の前が真っ暗になった。
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