◇130
前髪を束ね上げ、トレードマークのヤシの木ヘアーを作り、彼女は眉を寄せた。
ウンディー大陸の【バリアリバル】に残っていた皇位持ちの情報屋【キューレ】はフォンとタブレを忙しそうに使う。
フォンは1人1つまで。
タブレは1ギルド1つまで。
しかしキューレはフォンを数個、そしてギルド無所属でありながらタブレを1つ所有している。皇位の称号を持つ優秀な情報屋だからこそタブレの所有も許されている。フォンは通常の冒険者が扱うモノと同じタイプが1つ、他はポーチや図鑑などの機能はないキューレ専用のフォンか複数。
誰かの情報やマップ、モンスターデータ、装備データ等々...色々と管理し、まとめる作業もするキューレには必要なアイテム。まとめた情報───商品になる情報はまた別のフォンに収納される。
一般的な冒険者が持つタイプのフォンには重要な情報は入れていない。彼女が情報屋として使うフォンやタブレは彼女の魔力でしかロックを解除出来ない仕様なので、盗んだ所で何の意味もない。
それらのキューレ専用フォンやタブレを器用に撫で、情報...現状をスマートにまとめる作業を続けていた。
開かれたままのドアを数回のノックし、部屋へ訪れた女性が声をかける。
「キューレ、状況は?」
キューレが現在居る場所はバリアリバルのユニオン本部であり、ウンディー大陸の女王が城として利用している建物の一室。訪ねて来たのはウンディー大陸のトップ君臨する女王様であり、ギルド【マルチェ】所属の冒険者でもある【セツカ】。
両親はノムー大陸のトップに君臨している王と女王。彼女はエミリオと出会い、ノムー大陸を出て冒険者として生活の後にウンディー大陸の女王となった。
「セッカか。状況は───」
現在の状況。
それは純妖精、猫人族、そして人間の三種族が絡む今この地界で起こっている問題、と言ってもまだ全大陸を巻き込む様な大規模な問題ではない。この段階で手を打ち、被害を最小限に抑えるのがセツカの狙いであり、手を貸す事を選んだ冒険者達はセツカへの忠誠や正義感ではなく、個人的な事情や、想いがある。勿論中には忠誠心や正義感で動いている者も存在するが、例えばここに居るキューレ。彼女は純妖精の情報と関係しているであろう犯罪者ギルド【レッドキャップ】の情報、そして【黄金の魔結晶】と呼ばれるモノの情報が欲しくて今回手を貸している。
キューレはフォンの1つをセツカへ渡した。
「今はそんな感じじゃの」
セツカの細く綺麗な指先がフォンを撫でる。
①人間側(ウンディー大陸)では目立った事は今のところ起きてはいない。
②猫人族側はレッドキャップのリョウ、フィリグリー、パメラがシケット付近に現れるも、撃退する事に成功。パメラと呼ばれるメンバーは女性で少女。その他の詳細は不明。
③猫人族側からフェアリーパンプキンのワタポが世界樹の空間魔術を通り、純妖精側へ向かった。他の者は残り、リピナは猫人族と何やら行動している様子(今回の件とはそれほど関係ない)。
④純妖精側は不明。
「なるほど....レッドキャップはやはり絡んでいましたね」
「じゃの。まぁわかっとった事じゃし、今更驚く事ではないじゃろ」
「ですね。しかしこの分だと純妖精側にもレッドキャップの誰かが....いえ、こちら側にも」
「うむ。それは警戒すべき事じゃの。その辺りは女王様の一声でよろしく頼むのじゃ」
キューレは疲れた様子で言い、セツカからフォンを受けとる。すると別のフォンが小さく鳴った。
「んむ?次は何じゃ?」
また新しい情報が届いたか?とキューレは嬉しそうに、しかしどこか疲れた様子で別のフォン───冒険者達が持っているタイプのフォンを手に取り、届いたメッセージを開く。このフォンに届くメッセージはキューレがフレンド登録した者。客ではなく冒険者として認めている、または面白そうだと思った人物からという事になる。
〈いよーう!@90ちゃん、おひさ。おひさで早速悪いんだけども、前話してた “黒髪黒眼の女と左手に縄状の模様を持つ少女” の情報を売ってくれロン。後払いで!〉
「....このバカ、今まで何しとったんじゃ!」
キューレはフォンをぶん投げそうになるも、必死に堪え、フォンを耳へあてた。
メッセージを送ってきたフレンドの冒険者へ通話を飛ばす。
相手は───、
『あっぽっぽい!』
「誰がアホじゃ!お前は今まで何処で何をしとったんじゃバカ魔女!」
青髪の魔女エミリオ。
◆
お前、人間ではないな?
この
装備品やアクセサリー、そして雰囲気から見て、雑魚妖精ではない。
「悪妖精のお偉いさん?」
先程の悪妖精へ指示を出せる立場である事は間違いない。しかしこの悪妖精は───フェリアの方向から現れた。
「お前は何者だ?人間とは違う雰囲気を持っている事くらい一目でわかる」
「私が何者で、なぜここに居るのか....聞きたいなら先に私の質問に答えてほしいわね」
「先に質問したのは俺だ。が、時間もかかるだろうし、まぁいい」
─── 時間もかかる?何の話かわからないが、こちらの質問に耳を向けてくれるならば都合がいい。
「あなたは悪妖精?それとも純妖精?」
フェリア方向から来たのはなぜだ。それを聞きたいが質問の内容で私が純妖精に詳しい事に不信感を持たれれば、半妖精だという事がバレてしまう。幸い、私は悪妖精と戦ったばかりで彼等(彼女等)も今はあの男に恐れている。強引に発言すると怒るタイプの悪妖精なのか、もしくは...悪妖精のリーダーなのか。
「それをお前が聞いてどうする?」
「....それを答えとして受け取るわ」
悪妖精で間違いない。
純妖精達は悪妖精呼ばわりされると否定し、怒る。この落ち着きは悪妖精としての自覚、または純妖精達にそう言われた者の反応と答えだ。
「あなたは何を、?」
次の質問をクチにしようとした時、悪妖精の声が冷たく揺れる。
「お前らは中へ入れ」
お前ら、とは私と戦闘した悪妖精達の事だろう。逃げる様に遺跡の中へ消え、私の前に立つ悪妖精はゆっくり剣を抜いた。使い込まれた、しかし古臭さは感じない剣が無色光を纏う。
───いきなり剣術か。
数メートルの距離を一瞬で駆け抜け、重い一撃が私の剣から腕へ抜ける。突進系にしては重すぎる衝撃。
「ッ....、」
歯噛みするも受けきれず、弾き飛ばされる様に、無様なノックバック。身体を捻りなんとか倒れる事だけを回避するも体勢は最悪....追撃に対応できない。
しかし悪妖精からの追撃は無かった。その場で剣術使用の対価とも言えるディレイが悪妖精の追撃を阻止してくれたのか、一撃で私を斬れると思ったのか....恐らく後者だろう。悪妖精の男は少し笑い、ディレイから解放されるとすぐに次の剣術を使う。
パリィはきっと同じ結果になる...ガードは危険、ならばこちらも剣術で迎え撃つ。
プンちゃんやワタポ、エミリオも他の冒険者も、自分だけの剣術を持っている者が多く存在している。自分のスタイルに合った剣術となれば、やはり定番の剣術ではなく、自分で考え産み出すしかない。
私も自分で産み出した剣術がある。その1つがこの八連撃剣術 メローリ シュティルツ。
悪妖精の剣術と私の剣術が遺跡の外で激しくぶつかり合った。
◆
妖精の魔法薬を届けたワタシは呼吸を整えていた。必死に走ったの久しぶり....薬はドライアド達に渡し、別の薬と調合し、プンちゃへ。
「この薬は外部の傷にも内部の傷にも凄く効果がある。あと数分で間違いなく目覚めるわ」
ドライアドの1人がワタシへそう言い、一杯のお水を。
「ありがとうございます」
プンちゃを診てくれている事、不安な顔をしていたワタシを安心させてくれた事、そしてお水のお礼を言い、まだ走る心を落ち着かせる様に流す。
プンちゃは外部にも内部にも傷が酷く、治癒術と再生術を使い、なんとか命を繋いだらしい。正直、ワタシはそこまでの状況だった事さえ言われなければわからなかった。ドラゴンの一撃はワタシ達の想像を遥かに越える、恐ろしいモノだった。
「もう大丈夫だから、あなたも少し休みなさい」
お水をくれたドライアドとは違うドライアドがワタシへ優しく言ってくれた。シケットから....正確にはバリアリバルに居た時からワタシの中で緊張が張り詰めていたのか、ワタシはドライアドの言葉に安心し、少し休ませてもらう事に。
数分だけ眼を閉じ休んでいると、ワタシは名前を呼ばれ、身体を揺らされる。
「....?」
「ワタポ!起きてよ!」
「....プンちゃ!?もう平気なの!?」
凄いなんてものじゃない。確かにドライアドは数分で目覚めると言ったけど...本当に数分で目覚めて、元気そうな表情で行動するなんて思わなかった。
「もう平気みたい!話は聞いたよ、ありがとう」
「凄いね妖精の魔法薬って」
「魔法薬の話より、ひぃちゃんは!?」
「遺跡前で別行動になったけど、まだ戻ってないの!?」
「うん....ワタポ、遺跡まで案内して」
ついさっきまで眠っていたプンちゃはいつも通りのプンちゃに。本当に妖精の魔法薬は凄い効果を持っている。あのモンスターはリポップにどれだけかかるのかな...。
そんな事を考えつつ、ワタシはプンちゃへ返事をし、2人でフェリア遺跡───ひぃちゃがいる場所まで向かう事に。
ひぃちゃがまだ戻ってない事に今さらながら、ワタシの胸に不安感が漂い始めた。
「急ごう、ワタポ」
プンちゃも同じ様に不安そうな表情をしていた。
◆
神経を焼き斬る様な激痛と視界が一気に狭くなる恐怖。
今私は激痛と恐怖に声も出せない状況に陥っていた。
「今の剣術は中々だった」
悪妖精は私へ言うも、言葉は耳に届かない。
八連撃剣術 メローリ シュティルツ が悪妖精の剣術と衝突した時、悪妖精は翅、エアリアルを発動させていた。
悪妖精は私の剣術を受け止めつつ器用に翅を使い、散らばる微粒子が棘に変わり私を突き刺す。痛みで退くと剣術はファンブルしてしまう。それだけは避ける様に私は必死に剣術を続け様とした。しかし、微粒子に気をとられた私は悪妖精の剣術への反応と対応が遅れ、今現在の状況───右腕が斬り落とされ、痛みに膝を付く状況になってしまっていた。
小刻みに揺れる視界の中で、私の右腕が見える。
熱湯の様に熱い血液が溢れ出る。神経が焼き斬られた様に傷口が熱く、その傷口から徐々に感覚が麻痺する。
力の入らない足、溢れ出る血液を必死に止めようとする左腕。傷口付近を強く、強く掴むも血は全く止まらない。
酷く飛び散った自分の血液。
数十秒前までここにあった腕が、地面に転がっている。
「どこの誰なのか知らないが、森に足を踏み入れた事を後悔して、死ね」
死ね、死ぬ?私が?
悪...
───ッ。
首へ迫る剣撃を私はギリギリで回避した。どう動けば回避できるのか、何をすれば回避できるのか、そんな事を一切考えず、ただ動いた。
「翅!?....エアリアル」
悪妖精は自分の攻撃が回避された事の驚きよりも、私の背にある薄桃色の翅───エアリアルに驚き、眼を見開く。
私は
もうどうなってもいい、バリアリバルの...人間達や他の種族、そして眼の前コイツにも、どう思われてもいい。
私は
「まだ死ねないとか、死にたくないとか、そんな事を今思ったワケじゃない」
私は悪妖精へそう言い、自分の腕を拾い、元々あった位置へ拾った腕を運ぶ。
「お前ら
そこまで言い、言葉を切り詠唱。斬り落とされた腕を治癒術ではなく “再生術” を使い繋ぎ合わせる。再生術は切断された身体などの破片───今の状況ならば腕を斬り落とされても、その腕があり、まだ傷が治っていない状況の場合は再生する事が出来る。治癒術の上位術が再生術。蘇生術は再生術の上位であり、治癒系の最高ランクの術。私には蘇生術は使えないが、今無くなった腕がここにあるならば、再生可能と言うワケだ。
細胞組織が繋がる感覚、指先が私の命令に反応し、動いたのを確認し再生術を破棄、自分が持つディアのひとつ【デュアルリジェネ】を発動させる。
複数の効果を持つ1つのディアは非常に珍しく、ヒール、リカバリを同時に行えて、詠唱も不要、ディア発動中に剣術や魔術、エアリアルも使える有能な性能を持つ私のディア【デュアルリジェネ】。
エアリアルはジャンル的に魔術。魔術中に別の魔術は使えない。しかし剣術やディアは使える。
「お前達に殺されるのはゴメンだ。だからお前達が私を殺そうとするなら...私はお前達を殺す」
繋がった───再生した右腕は完全に動く。痛みはまだあるものの、今さらこんな痛み気にもならない。
「劣化妖精が調子に乗るなよ」
男は剣を構え、翅を破裂させ、剣術の速度をブーストさせる様にエアリアルを使った。
でもこれは...、
「さっき見たやり方ね」
足下にあるパールホワイトの剣を蹴り上げ、掴むと同時に私は剣術を使う。
迎撃する、相殺する、そんな甘い考えだったから腕を斬られる結果に繋がった。こんな相手、死んでも構わない....いや、コイツを殺して私が───翅を喰う。
純妖精は翅───エアリアル発動状態で殺せばその翅は残ったままの死体が完成する。
【ミステリア ナイト】は微妖精を捕食するモンスター。
【森の女帝 ニンフ】コイツは純妖精もニンフもモンスターも関係なしに、妖精種ならば捕食する。そしてこの世界に存在する“女帝”の名を持つモンスター達の元....それはその種族の誰かだ。
女帝ニンフは大昔、
同族を喰う理由は簡単───
「どこの誰なのか知らないけど、私を殺そうとした事を後悔して、死になさい」
───同種族には出来ない事、同種族を越えた力が欲しいから。
◆
『誰がアホじゃ!お前は今まで何処で何をしとったんじゃバカ魔女!』
と、皇位情報屋───とにかく凄い情報屋のキューレさんがわたしへ通話を繋いだ一発目の発言がコレだ。
ダプネにまでその咆哮は届き、驚き笑いを浮かべるダプネを横に、わたしはキューレへ応答する。
「んやさ、まぁ色々あったんだよ。怒るなってば」
『その色々は終わったんか?』
「んー、まぁ終わったと言えば終わって、次の事を始めるのにキューレから情報を買おうかなって」
自分の力はどのレベルで、どのレベルまでは自由に使えて、どのレベルから危険ゾーンなのか。それを知りたくなるのは魔女だからではなく、生き物だからだ。
そしてそんな時に、虫ムシ魔女が魔結晶を狙い求め地界に来ていると聞けば、もう無視出来ない。虫だけに。
エンジェリアに魔結晶が渡れば最悪な事にしか使わない。
わたしはアイツの子供、同じ考え───魔結晶をゲットして使えるなら、ムカつくヤツをぶっ殺すくらいの事は考えているだろう。
ダプネがいなくてもわたしは魔女を殺すつもりだったし、今のわたし、魔女の力が覚醒した状態の自分でどこまで魔女と戦えるのか知りたい。
覚醒した魔女力を完全に自分のモノに出来ればエンジェリアを殺す事も可能なのか....害虫駆除をすれば少なからず色々と見えてくるだろう。
『情報を売るのはよいが、その前に別の情報プレゼントしてやるから、よーーく聞け』
む?珍しいな!お金大好きキューレちゃんが見返りなしに商品....情報を無料配布するとは。
『純妖精が猫人族を狙い、それを裏で操っとったのがレッドキャップ、今ひぃたろとプンプンが妖精側へ、ワタポや他の者が猫側へ、そしてウチらは人間側で、面倒が起こらぬ様に動いとる』
「....は?」
『猫側はなんとかなって、人間側は純妖精とレッドキャップを警戒しとる。ウチがみた所、後は妖精側を黙らせればレッドキャップの狙い、つまり妖精の浄血は手に入らぬじゃろな』
それを操作しているのがレッドキャップで....いつものやり方かよ。くそ赤帽子。
『わかるか?世界樹を隠しておった猫人族へ剣が向いとるが、事実、世界樹を殺したのは人間じゃ。そうなれば妖精の剣は人間にも向く。猫を攻撃してからその事を妖精が知れば、妖精の剣は人間へ、猫の剣は妖精へ、そして人間の剣は妖精へ向き、レッドキャップは高みの見物じゃの』
「ハロルドやプー、ワタポは今どこに?猫は大丈夫なら妖精を黙らせればいいってどやって?」
『妖精側はひぃたろとプンプンに任せるしかないが....連絡が入らんのじゃ。何かあったんか、忙しいのか、そこはわからんのじゃ』
「ほー。....情報サンキュー、とりあえず色々整理してから考えてみるわい」
そう言ってわたしは一方的に通話を終わらせた。
空間魔法に入っていた約1ヶ月で外は凄い事になってんのな。
「何があった?」
ダプネはわたしの表情を見て、ただ事ではない。と読み取り話を聞くスタイルへ。
魔女だけど....コイツは大丈夫だろう。
「んやね、なんか───」
一通りの事をわたしはダプネへ話、ダプネは何も言わず黙る。
正直こんな話を突然聞かされてもワケわかんないし、わたしも似た様な感じ...何が何だか。と言う言葉だけが頭の中を浮遊している状態。
「純妖精って結構頭いいよな....変な話だけど、純妖精の中にわたし達みたいな考えを持つヤツがいたら今の状況はおいしいよな?」
「ん?どゆこと?」
わたし達みたいな考え?今の状況がおいしい?
ダプネの言っている事が全然わからない。しかし純妖精は....頭が良さそう。
「魔女だけど今の魔女がうざい、だからわたし達が魔女界を奪う。純妖精にもこんな考えを持つヤツがいたら相当ヤバイ事を起こせると思う」
「...?ヤバイ事って?」
「純妖精が純妖精を制圧する?みたいな事。そうすれば好戦的な純妖精だけの純妖精世界が作れて、猫だけじゃなく人間や他種族への攻撃もおっ始めるかもな。噂じゃ今の妖精女王は頼りないとか聞くし、純妖精達は女帝持ちだ」
「なにその情報通!怖いわー。それに女帝ってなんだよ」
キューレとは違った情報通なのか、ダプネの情報力がキューレ並みに怖く思えてしまった。こっそりわたしにサーチャーをくっつけたりしてないだろうな?と思いつつ、新たなワード “女帝” とらやが気になりはじめる。
「お前なんも知らないんだな。女帝ってのは───」
【女帝】
S3ランクに指定されているモンスターで地界と外界に存在している。女帝は元々はわたし達や人間達、他の種族の者と同じで、モンスターではない。
同種族のマナや魔力、能力を喰い漁って、同種族を越える力を手に入れた者が、モンスター化してしまう現象。
不思議とこのモンスター化は女性しかならないため、女帝と呼ばれる様になったらしい。
共食いした馬鹿の完成形が笑えないモンスターでした。って事か。
「で?」
女帝について聞いたが、それがどうした。としか思えなかったわたしはダプネの言葉を待った。
「頼りない女王様を脅して女王の封印を解かせればどうなる?その後女王様を殺して、女帝がある程度暴れたら、その女帝も殺す。そうすれば新しい王や女王、種族のトップが生まれないか?」
「...なるほど、使えない女王とその女王にベッタリなヤツを女帝に殺される。女帝を解放したのは女王だし女王側の考えを持ったヤツも裏切られた~みたいな考えになっても不思議じゃないね」
「だろ?その女帝を討伐して、ついてこい!とでも言えば後は簡単だろ」
確かにそれは出来る。
反女王勢が女王を捕まえて女帝を解放させて、女帝を暴れさせればみんな死を覚悟する。だってS3で元々同種族なんだ。結界マテリアもシカトして街の中に入ってくるだろうし。
そんなヤバイ女帝を討伐、または封印し、人々を守った英雄になれば耳を向けなかったヤツも耳を向ける。
ここで「女王が猫や人間を殺すために女帝を復活させた!女王を苦しめた猫を、人間を許すなー!」みたいなイケメン的セリフをぶん投げれば完璧だろな。
別のやり方なら女王が猫や人間側につきたいから同種族が邪魔になり、女帝に同種族を喰わせようとした!でもいいし、女王を悪者にしてもしなくても、簡単にその種族を支配できるワケか。
純妖精って元々外界の....わたしやプンプンと同じで、地界の者から見れば外来種だ。
地界を制圧して外界へ攻め、外界も制圧しよう!と考えを持っても不思議じゃない。
それに純妖精はプライドが高い。人間ごときと一緒にするな~魔女の分際で~とか絶対思ってるタイプだ。
レッドキャップの連中はそれも予想して、純妖精にちょっかい出したんだろうな。
純妖精がどうなろうが、森の外が1人でも出てくれりゃ血は奪える。そんな考え....いや、アイツらはもっとエグい考えをしてそうだ。
女帝が暴れ始めたら純妖精よりも先に女帝を討伐して “人間が純妖精を助けた” の形を作れば純妖精ってゆー駒を手に入れる事が出来る。
これはもう猫人族や人間ではなく、純妖精をどうにかしなきゃダメだな。
「...おいエミリオ、無視するなし」
「んあ?聞いてなかった、なに?」
「純妖精側に行くならわたしも行く」
「なんで?何企んでる?」
「別に人間とか純妖精とかどうでもいいけど、森にはニーズヘッグがいる。そいつの腹の中にある “黒曜樹の樹宝” が欲しい」
ニーズヘッグ....たしか、ローレル...月桂樹を食べたドラゴンだったハズ。
「黒曜樹の樹宝って何かいいもんなの?」
「わたしやエミリオみたいな魔法剣士には最高の武器素材になる」
「なぬ!?それわたしも欲しい!」
「いいんじゃね?早い者勝ちでしょ」
ダプネから武器素材は貰って...あと1つが謎だけとも、そんな素敵武器の素材を持つドラゴンがニーズヘッグだったとは。ここは何としてもこのエミリオ様がその素材をゲットしたい。でも1人じゃ100%勝てないし....。
「おっけー、一緒にいこうぜダプネ」
ダプネよりも先にゲット、と言っても多分ドロップだろうからフォン様に願いを込めて、倒そうではないな。S2の食いしん坊ドラゴン【ニーズヘッグ】とやらを。
「エミリオとわたしの他にも仲間がほしい所だな....まぁとりあえず地界事情にはエミリオの方が詳しいし、任せますわ、マスターエミリオ」
マスターエミリオ....まるでギルドマスターの様な素敵な響き。
「しゃーない。この マスターエミリオ様 に任せなさい!」
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