例えば

例えば、僕らの間に新しい命を宿すことなんて

そんなに現実離れした話じゃなくなってきている

それは時間が確実に僕らを削っているということだ


生きるために命を燃やしていると感じることもあれば

死に向かって命を消耗していると感じることもあるが

本当のところは、ただ、無為に削られている


あの時に感じた「真実」ってやつを

今の僕も変わらず信じてやることで

何とか立ち位置を保とうとするけれど

辻褄がこんがらがってしまって

上手く抗うことすら酷く困難になってしまうよ


世の中の仕組みが今一つ噛みあっていないように

今宵もニュースキャスターは嘆くだろうけれど

そんな世界の消耗品として僕ら華々しくもがいてる



例えば、誰かの命が一つ消えたところで少しも揺るがない

地球の自転にとてつもない理不尽さを感じたりもするが

その気楽さと安心感が小さな身体を支えているんだ


今ここで感じた「真実」ってやつを

明日の僕が守り抜いてやることで

何とか今日の意味を保ち続けられるけれど

愛憎がこんがらがってしまって

上手く笑うことすら酷く困難になってしまうよ


世の中の流れは終末へと向かっているかのように

今宵もニュースキャスターは煽るだろうけれど

そんな世界に希望を抱いて僕ら苦々しく喘いでる



例えば、僕らの間に新しい命を宿すことができる

こんなに現実が暗鬱としていても少しの期待感によって

それは時代が確実に僕らを赦しているということだ

そして僕らも確実に時代を赦しているということだ

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