WAVE:05 スター・グラブ

 アクト・オブ・ゲーミングの二階。

 フロア全体に整然と並ぶ五十基近くのライナーピットは何度見ても壮観だ。

 都心の大型店ならまだしも、個人経営のゲーセンでこの数を揃えているとこはそうないだろう。おかげで、だいぶ窮屈だけど。

 美佳ねぇ店長曰く、先代おやの道楽、らしい。道楽でこの数を集めるとか、美佳みかねぇのとーちゃんって何者なんだろう?

 オレのそんな疑問をよそに、美佳ねぇはスタッフにテキパキと指示を出し、今日のバトロ大会の準備に勤しんでいる。

 ちなみに、今日は日曜日。学生でも参加しやすいようにこの日取りになった。

 週末の昼下がりは秋らしく少し肌寒い。天気は良いけど風がある。

 何となく、あの日――オレが宙埜そらのさんに恋した日の天気と似ている。あれから、まだ半年も経ってないけどひどく懐かしく感じる。

 オレが柄にもなく感傷に浸っていると、

 

「おはよう、皆!」


 バトロ大会の発起人、フロニキこと風狼田ふろだアキラさんがオレ達を見つけて声を掛けてきた。

 今日はいつもの巨大なアフロ(ヅラ)にグラサンではなく、プレーンなジャケパンスタイルだった。こうゆう普通の格好しているときのフロニキは、何だか特撮ヒーローの主人公みたいなルックスで、普通にカッコいい。


「あ、おはようございます。フロニキ」

「風狼田さん、おはようございますー」

「えーと、おはようございます……」


 後で合流する予定のヒナを除いた三人――オレ、透吾とうごいぬいで挨拶を返す。

 

「アレ、そっちの女の子は見かけない子だね?」


 乾に気付いたフロニキが言う。


「はじめまして。わたし、乾綾いぬいあやと言います。雨村あまむらクンと小瀬川こせがわクン、それに大庭おおばクンのクラスメイトです。普段は別のゲームセンターで遊んでますが、今日はこちらのゲーム大会に参加するため遠征してきました」


 何が、”クン”だ。猫かぶりやがって。フロニキー、そいつはオレのことを「面白い顔」とか言う、ヒドいヤツなんですよー。バトロでとっちめて下さい。


「イブキ君達の友達と言うことは、乾さんも相当ヤるクチなんだろうね。期待しているよ!」

「お手柔らかにお願いします」


 フロニキ相手に接待モードの笑顔で答える乾。外面のいいヤツめ。オレは思わずジト目で睨むが、向こうは気にも留めない。そうだな、お前はそうゆうヤツだな。


「ほうほう、キミたちがアッキーの可愛がっている次代を担う若者達ニュー・ジェネレーションズか!」


 そう言いながらフロニキの後ろからひょっこりと姿を見せたのは、デコレーションケーキみたいに装飾過多な白とピンクのワンピースを着た中学生ぐらいの女の子。大きな目をクリクリと動かして、オレ達三人を興味深そうに見つめている。結構、可愛い子だ。宙埜さんほどじゃないけど。

 でも、この子、どっかで見たことあるような……。


「あーーー!!! ひょ、ひょっとして、プロゲーマーの溝呂木歌子みぞろぎうたこさんですかーーー!!?」


 後ろの方から、聞き覚えのある素っ頓狂な叫び声が聞こえた。

 振り向くと、そこには、ヒナが顔を真っ赤にして立ち尽くしていた。


「おうよ、そうだぜ。チーム・ヴォルフィード所属のギア・ライナー溝呂木歌子ちゃん様とはあたしのことさ。親しみを込めて歌ちゃんプロって呼びねぇ!」


「う、歌ちゃんプロ、さん! リアルでお会い出来て感激っス!! お、おれ、大庭日向おおばひなたって言います!! あ、あなたの、だ、大ファンです!! サ、サ、サイン貰ってもいいですかっ!!?」


 あー、思い出した。あの無駄に特徴的な外見と喋り方は、オラクル・ギアのプロチーム・ヴォルフィードに所属する溝呂木歌子さんだ。確かフロニキとほぼ同時期にプロ入りした人で、愛らしい(合法ロリ)ルックスと強烈なキャラクターが受けたのか、アマ時代から地下アイドル的人気のある人だった。

 そういや、ヒナはこの人の大ファンだったな。感極まって今にも泣き出しそうな顔をしている。


「サイン? おっけーおっけー、幾らでもしてやんよ。キッズどもには優しくがアタシのモットーだかんな。で、どこにするボーイ?」


 キッズとかボーイとか言ってるけど、どう見ても溝呂木さんの方が年下に見えるぞ。フロニキや美佳ねぇと同年代なのにどうなってんだ。アラサー間近の筈だぞ。火の鳥の血でも飲みましたか?


「じゃあ、ここにお願いします!」


 言うが早いか、ヒナはいきなり羽織っていた秋物のブルーのコートを脱ぎすてると、その下の黒いチェックシャツまで脱ぎ始めた。

 こ、こいつ、憧れのプロの前でトチ狂ったか!? 何、いきなりストリップショーをおっぱじめてるんだ。誰も嬉しくねーぞ……って、乾! 満面の笑顔を浮かべながらスマホで撮影してんじゃねー!! 


「ひゃー、いい脱ぎっぷりだねぇ、ジャリボーイ! いろんな意味で将来が楽しみだよー」


 溝呂木プロは特に気にする様子もなく(むしろ嬉しそうだ)ヒナに催促されるまま、肌着がわりの無地Tにスラスラとサインする。

 ヒナよ、もう少しサインして貰うモノを考えろ。そのTシャツ、もう洗えないし、着れないぞ。


「ありがとうございます!! 超カンゲキです!!」

「ねぇ、大庭。悪いんだけど、そのTシャツたくしあげてくれない? おヘソとかお腹とか撮影したいんだけど……」

「ギャース!! 乾がセクハラしてくるー!! 伊吹いぶき、透吾、助けてー!!」

「いいわね、その反応。三人で仲良く脱いで、そのまま”致して”もいいのよ?」


 脱がねーし、”致さ”ねーよ! いい加減にしとけ。あと、ヒナもイチイチ泣き付いてくんな。乾の思うツボだぞ。ついでに、溝呂木プロは期待するような目をこっちに向けないで下さい!! そこもかしこもゾンビみたく腐りやがって。ゲーセン・オブ・ザ・デッドか?


「おーい、アッキー、お前も一緒に脱げよー」

「いや、俺は脱がないよ! 今日は結構涼しいからな!」


 フロニキは溝呂木さんのセクハラ的要求を全力で突っぱねる。溝呂木さんは「ケチー」とか「減るもんじゃねーだろー?」とか不満そうだけど、フロニキは笑顔でスルーしている。


「エントリー表にあったサプライズゲストって、溝呂木さんのことなんですね」

「そうだよ。彼女はノリはちょっと、いや、相当アレだけど、ライナーとしての腕は一流だからね。ヴォルフィードのエースは伊達じゃないよ? 今回のバトロ大会を俺と一緒に思いっ切り盛り上げてくれるから」


 オレの質問にフロニキが答える。

 それと、ほぼ同時だった。


「新作稼働直前にこんな場末のゲーセンに呼び出したのだから、相応の収穫は期待させて貰うぞ」


 やや平坦で冷たさを感じる男の声が聞こえてきたのは。

 声の主は四十台ぐらいの中年。メタルフレームの細い眼鏡と切れ長の目。細身の長身を包んだ白いスーツと同色のストローハットが印象に残る。


神余かなまりさん。お疲れ様です!」

「ああ、おつかれ」


 神余さん、と呼ばれた人物は小さく頷くとあたりを見回した。


「あの頃から何も変わっていないな、この店は。まるで時代から取り残されたようだ」


 感情を読ませないフラットな声と表情で神余さんが言う。


「そんなことはありませんよ。次代を担う期待の若手も沢山生まれてますよ」


 フロニキはオレの肩に手を置き、神余さんの方に向き直らせながら言う。


「アルバトロスのオラクル・ギア開発チームでプロデュースディレクターを担当する神余塵かなまりじんだ。私のことはかみPと呼ぶといい」


 自分を”神”とうそぶくこの人物。まぁ、名前に神の字があるから、問題はないんだろうけど……。

 生半可なハッキングをするまでもない。オラクル・ギアの生みの親である、アルバトロスの神余塵さんは超有名人だ。ほとんど天然ボケと言えるSNSでの発言とやり取りは、リアルでも健在だった。

 フロニキとは歳が離れてるけど、結構長い付き合いらしい。


「は、はじめまして。オレ……ぼくは、小瀬川伊吹こせがわいぶきと言います。神P、お会い出来て光栄です」

「うむ、この埃臭い片田舎のゲーセンで神と遭遇した幸運をじっくりと嚙み締めたまえ」

「……場末とか埃臭いとか好き勝手言ってくれるわねぇ。あと、ここ、別に田舎じゃないでしょ?」


 大会の準備が一通り終わったのだろう。美佳ねぇが声を掛けてきた。


「久しぶりだな、美佳ちゃん店長よ。店の経営の方はどうかな?」

「おかげさまで。今すぐ店を畳んで路頭に迷わない程度には儲かってるわよ」

「そうか、だったら問題はない。先代を見かけないが、ご壮健かな?」

「元気過ぎて困ってるところよ。店を娘に任せっ切りで、自分は日本中を飛び回ってでレトロゲームやらレア基盤やら探してるわ」


 随分と気安い雰囲気だ。美佳ねぇのとーちゃんと神余さんは知り合いみたいだし、昔からの知り合いなんだろう。個人経営のゲーセンであれだけのライナーピットを確保してるのと何か関係があるのかも。オレはゲームさえ遊べればいいので、そのへんの話にはあまり興味がないけど。


「神余さんは二人目のサプライズゲスト。大会の解説を頼んであるんだ。ちなみに、ミカは司会担当だ」

「新作の稼働は明日ですよ? プロデュースディレクターって暇なんですか?」

「まぁ、忙しいと言えば忙しいけど、あの人もアクト・オブ・ゲーミングとおやっさん――先代の店長にはいろいろと世話になっているからね。お願いしたら快諾してくれたよ」


 なるほど。大人達にもいろんな繋がりと事情があるんだな。


「参加者が集まってきたな」


 フロアを見回しながら神余さんが言う。

 そういや、だいぶ周囲が騒がしくなってきた。このフロアにこれだけの人数がいると結構蒸す。空調はきいてる筈だけど少し熱くなってきたな。

 何人ぐらいいるのかな? 大会の参加人数は四十越えだった筈だけど。

 オレはマスタード色のパーカーを脱いで、腰に巻く。ふう、これで、調度いい具合だ。

 ヒナと透吾が顔見知りの常連さん達に乾を紹介している。

 あと、休憩スペースで溝呂木さんが突発サイン会始めてるけど、アレはいいのか? スタッフさんの迷惑だろ。

 何か、中学生ぐらいの女の子が大はしゃぎで溝呂木さんに絡んでるな。それをなだめている女の子は友達かな?

 ヒナみたいなヤツを友達を持つと苦労するよなぁ。

 オレが見ず知らずの女子に共感を覚えていると、休憩スペースから見知った顔の男性がやってきた。


「やぁ、神余さん、久しぶりだね」


 アロハと眼鏡がトレードマークの宗像徹平むなかたてっぺいさんだ。軽く手をあげながら、神余さんに声をかける。宗像さんの職業はゲームライターだから、神余さんとも面識があるのだろう。


「ふん、一番過去の亡霊にとりつかれていそうな男が出てきたな」

「ははは、酷いなぁ、神余さん」

「酷いものか。お前からは過去に後ろ髪を引かれ続ける敗残者のスメルが漂っている」

「スメル? 風呂なら四日に一度は入ってるから大丈夫の筈ですよ」

「えんがちょ! バリアー!!」


 宗像さんの衝撃的な告白に神余さんが小学生みたいな発言を繰り出した。

 あ、美佳ねぇが微妙な表情で宗像さんのことを見てる。風呂は毎日入れとでも言いたげだ。うん、気持は分かる。


「さーて、積もる話はあるかもしれないが、大会の時間が近いぞ。皆、そろそろスタンバってこーか!」


 フロニキが周りの知人達に声を掛ける。

 さーて、オレもそろそろ気を引き締めてくか。

 ボディバックから端末を取り出して、今日のバトロ大会のエントリー表を確認する。そこには、シアンとカメラ・オブスクラの名前。

 結局、オレとシアンの対戦成績は五分のまま。今日のバトロ大会で決着を付けるしかない。

 まぁ、仮にオレがシアンに勝ち越した状態で今日を迎えても、この大会で勝利しなくちゃスッキリしないと思ったので、丁度いいや。

 オレはフロアを見回す。この中にシアンがいるのか。

 大会が終わったら挨拶出来るかな?

 向こうが嫌じゃなかったら、友軍フレンド登録して貰おうかな……。

 大会まで、まだ少し時間があるので、野試合も盛り上がっている。

 フロア中心の大型モニター。そこに対戦の様子が映し出されている。

 ギャラリーの人達がそれを観て歓声を上げている。

 懸念の新型プロフェシーはどうにか完成に漕ぎ着けた。

 てか、今日の深夜過ぎまで作業してたので若干眠かったけど、ゲームセンターの熱気でとっくに眠気なんか吹っ飛んでいる。

 やっぱり、いいな、この雰囲気。

 これを感じたくてゲーセンに足を運んでいるんだ。

 家庭用のゲームでも、バーチャルゲーセン的な対戦ロビーを実装したモノは幾らでもある。各種SNSを使ったプレイヤー同士のコミュニケーションも活発だ。

 でも、それだけじゃ足りないんだ。

 空気感とか、肌で感じる熱とか。いろいろな情報が圧倒的に不足している。リアルの解像度には遠く及ばない。

 オカルトじみた信仰だと笑いたいヤツは笑えばいいさ。

 誰に笑われようとも、オレはここで輝くだけだ。

 この場所で一番輝いて、その光と熱を宙埜さんに届けるんだ! 

 なーんてな。





『【奏甲託閃そうこうたくせんのオラクル・ギア】バトル・ロイヤルモード、STAGE:0 0 2 9ダブルオートゥエンティナイン【オペレーション・ワイズマンタワー】開始120秒前です』


 愛用のヘッドセットから聞き慣れたアナウンスが流れる。

 オレはコンソールのクレイドルに端末をセット。端末からデータを読み取らせ、電脳空間の戦場ステージにオレの愛機プロフェシーをスタンバイさせる。

 いや、違うな。

 シアンとの決着を付け、このバトロで生き残るために、そして、何よりも、オレが新作を遊び倒すために開発した新型のプロフェシー。

 プロフェシーS Gスターグラブ

 それがこいつの新しい名前だ。

 小型だった機体サイズは標準程度に。そのぶん装甲に厚みが増している。

 大型化した背部のスラスターユニットは紺色ネイビーだけど、全体のシンボルーカラーはオレンジ色のまま。バイザーのグリーンも変わらずだ。

 主力装備メインアームの「ハーヴェスターⅡ」もちゃんと新型プロフェシー用に調整済み。


<新型、完成させたのね>


 乾が通信で訊いてきた。


「プロフェシーSG、しっかり完成させたぜ。オレは自分の発言に責任を持つ男だからな」

<スターグラブ……星を掴む、か。グラブには「心を掴む」って意味もあったわね。小瀬川らしい、いい名前だと思う>


 意外な反応だな。てっきり心ない突っ込みが入るものかと思ったぜ。

 素直に褒められると何か照れる。まぁ、悪い気はしないけどさ。


<こっちは出来るだけのことはやっておいたからね。しっかりと結果を出しなさいよ>

「まかせとけって。オレとプロフェシーSGこ い つのカッコいいとこ、ガツンと見せてやる」

<伊吹、期待してるからねー?>

<おれには告白とかよく分かんねーけど、応援してっから頑張れよ! あと、新型カッコいいぞ!>

「おう、任せとけ! 三人ともありがとなっ!」

<ねぇ、小瀬川。あんたは、何があっても、あんたのままでいなさいよ?>


 ん、そりゃどうゆう意味だ乾。


 『【オペレーション・ワイズマンタワー】ショー・タイム。皆様のご武運をお祈りしております』


 おっと、ゲーム開始のアナウンスだ。


「プロフェシー・スターグラブ、ゴー・アヘッド!」

<マイケル・マイヤーズ! ライブスタートだっ!!>

<ウィッカーマン行くよー。死にたいのはどのギアかなー?>

<エル・ゾンビ、出るわよ! 臆せぬのならば掛かってきなさい!>


 オレ達四人は、思い思いの口上で出撃する。

 最初の頃はちょっと恥ずかしかったけど、今はこれをやらなと調子が出ない。

 サブモニターで素早く周囲を確認。全員バラバラのポイントに転送されたようだ。近くに友軍を示すブルーのマーカーは存在しない。

 出撃前の乾の言葉が気になったけど、今はゲームの方に集中しないと。

【オペレーション・ワイズマンタワー】は、侵略者の攻撃で壊滅した月の防衛基地跡が主舞台のステージだ。

 でも、プロフェシーSGが転送されたの、基地からだいぶ離れたポイントだった。何かの作業中に侵略者に襲われたのだろうか、すぐ近くで巨大な月面車が擱座していた。


<オラクル・ギア最新作、『奏甲託閃そうこうたくせんのオラクル・ギア・セカンドライド ジ・スター・ライト・ファンタズマ』稼働直前記念、超バトルロイヤル大会の始まりだぁぁぁっ!!! みんなあっ、とことんまではしゃいでけっっっ!!!>


 フロニキの雄叫びを引き金に、超バトロ大会の火蓋が切って落とされた。

 透吾、ヒナ、乾。お前ら皆やられんなよ!

 そして、プロフェシーSG、一緒に最後まで生き残ろうぜ!!

 さーて、まずはどうするかな。シアンを探す前に手頃な敵機相手に、プロフェシーSGの慣らしでもするか。一応、シングルモードで動きは確認したので問題外ないけど、対人戦はぶっつけ本番だ。念を入れるに越したことはない。

 

<若者たちがはしゃいでるね?>


 突然の通信。

 ヘッドセット越しの声は聞き覚えのあるものだった。

 この声は……宗像さんか!


<まったく、過去を置き去りにして未来に向かうのが子供の特権とでも言いたげだね>


 あれ、この人のギア、どこにいるんだ?

 メインモニターとサブモニターでチェックしてもそれらしいギアは見当たらない。


<かつてこの場所で何があったのか。それを顧みず無根拠に未来を希求するのなら、僕は過去の亡霊として何度でも蘇り、君達の前に立ち塞がるよ>


 亡霊って、ひょっとして、さっき神余さんに言われたこと気にしてる……?


<これは影だ。人々が忘れようとする夜の闇だ。深淵より浮かび上がる在りし日の幻影。後ろ髪を引かれ続けるもの。僕はそれを死霊館しりょうかんと呼ぶ!>


 口上がなげぇよ! あと、何言ってるかよく分からないし。日本語でお願いします。

 と、オレが心の中で突っ込んだ瞬間だ。

 目の前に突如、一機の黒いギアが現れたのは。

 大きく張り出した両肩から伸びる細長い腕。左腕装備レフトアームにクロー・アームを選んでいるのが渋い。でも、それ以上にオトコゴコロをくすぐるのが、腰から下のプロペラントタンクと一体化した巨大なスラスターユニットだ。

 足なんて飾りです、とでも言いたげなカスタム。こいつが宗像さんの愛機バディ・死霊館!

 ステルス機能で姿を隠していたのか。

 あの長い口上は、初期転送ポイントからこっちに接近するまでの時間稼ぎだな。やってくれるぜ!


「やることがセコいですよ、宗像さん!」

<何とでも言ってくれ。君のようなキラキラした若者と戦うんだ。これぐらいの準備は必要だ>


 死霊館がステージの表面スレスレをターボダッシュで高速移動。こちらに急接近してくる。

 右腕装備ライトアームのハンド・マシンガンで牽制してくるけど、こっちもターボを使って距離を取りながら回避。ハーヴェスターⅡの遠距離攻撃・衝撃斬波カッター・ウェイブ改め鎌斬裂波サイス・シーカーを連発して反撃だ。


<どこを狙っているんだい>


 死霊館は速度を維持したまま急上昇。鎌斬裂波のオレンジ色の衝撃波は、一瞬前まで目標の存在した空間を空しく通過する。

 死霊館は上昇頂点で急制動をかけると、プロフェシーへの突撃を再開。ハンド・マシンガンの連射による牽制も忘れていない。


「へー、さすが古参ライナー。やりますね。そうでなきゃ面白くない!」

<強がりは今のうちだよ。闇に溶け込め、過去からの廃棄者よ>


 死霊館が再度ステルスを発動。その姿を消す。

 別に強がってるワケじゃないですよ。本気で面白がってます!

 今日の本命はシアンだけど、オレは基本的に強い相手と戦うのが好きなんですよ。

 そして、宗像さんと相棒の死霊館は強い。プロフェシーSGの慣らしの相手として不足はない。それどころか、いきなりガチな勝負が楽しめそうだ!


「宗像さん、懐を貸して貰いますよ!」

<君が僕を踏み台に出来るだけの強い若者か今ここで見極めてあげよう!>


 姿を隠した死霊館はスラスターで光の軌跡を描きながらステージを縦横無尽に飛び回る。四方八方から飛んでくるハンド・マシンガンの弾をかわすのが面倒だ。ここ、身を隠せる遮蔽物も少ないし。


「ビュンビュン飛び回って忙しないですね。回遊魚ですか?」

<安い煽りだな。弱く見えるよ>


 宗像さんの言葉と同時だ。姿を隠した死霊館から、左腕装備のクロー・アームが撃ち出されたのは。

 うお、あぶねぇ! 

 とっさの判断でデュアルスティックを右へ傾ける。と同時にターボトリガーをクリック。右方向への急加速でクロー・アームをギリギリ回避。あ、代わりに近くで戦ってギアが流れ弾(流れ腕?)を食らったみたいだ。


<避けたか。新型は伊達ではないとゆうことだな>


 プロフェシーSGの代わりにクロー・アームを食らった可哀想なギアは、電流による追加ダメージと感電スタンによる行動制限の隙を突かれ、周囲の敵機エネミーから集中砲火を受ける。あー、あれは落ちたな。南無ー。バトロは非情なのだ。

 オレは死霊館がクロー・アームを巻き取る隙を見逃さない。ステルスで本体を隠していても、巻き取られるクロー・アームは見え見えだ。

 オレはデュアルスティックを前に倒しブーストトリガーをクリック。

 行こうぜ、プロフェシーSG。オレの新しい相棒。お前とオレとで一番デッカイ”星”を掴み行こう!! この戦いは、そのはじめの一歩だ。

 シンボルカラーオレンジ色の裂光を曳くプロフェシーSGが、クローアームを巻き取る死霊館に迫る。


「ガンポッド、当たれよっ!」


 オレは右スティックのトリガーをクリック。左右のスラスター部に追加した新兵装の有線式フォトン・ガンポッドを展開。

 二基二セット計四機のガンポッドが有線制御で死霊館めがけて光子弾を撃ち出す。


<悪くはないな。だが!>


 姿を隠したままの死霊館が脚部スラスターから青白い光を何度も吐き出す。連続ブーストを駆使した超回避で、ガンポッドの光子弾を全てかわし切ってみせた。

 どんだけ、機動性が高いんだよ。しかも、いつまでたってもブーストゲージ切れる気配がないし。

 本来は脚部に使うデータ量を、全て推力とペイロートにまわしたからこそ可能な芸当だ。地上戦を無視した潔いまでの空中突撃戦仕様。ピーキーなカスタムだけど、ライナーの宗像さんとしっかり"ハマ"っている。手強いなぁ、本当に。


<液体金属、結晶化を確認。射出する>


 宗像さんの言葉にあわせて、ステルス効果の切れた死霊館が、月の表面よりはるか高くに姿を現す。と、同時に胸部から青白く輝くクリスタルを発射。明後日の方向に撃ち出されたそれは一定距離まで進むと、そこで停止する。

 うわ、その武装はまさか……!


<反射角度計算終了。胸部フォトンランチャー発射。全てを烏有に帰す光の奔流に飲み込まれるといい!>


 停止したクリスタルに死霊館の胸部から発射された青白いビームが直撃。次の瞬間、それが幾条ものビームに枝分かれして戦場へ撒き散らされる。

 さながら、光の嵐、と言ったところだ。

 結晶拡散型メガ・フォトンランチャー。広域殲滅型の主力装備だ。アレ、初段のクリスタルがギアや障害物に当たると、そこで攻撃が中断になるので使い難いんだよなぁ。クセの強い武装をしっかり使いこなすあたりからも、宗像さんの技量の高さが伺い知れる。

 今の一撃で、プロフェシーSGのA F Cアンチフォトンコーティングが半分以上持ってかれた。あの数のビームはさすがにかわし切れない。

 ついでに、周囲のギアにも相当の被害を出している。今ので、何機か落ちたみたいだ。

 そういや、別ポイントに転送された三人は大丈夫かな……。

 死霊館はまたしてもステルスで姿を消して、スラスターから光の尾を曳きながら、ステージを変幻自在に高速移動。

 法則性のなさそうな動きだけど、人間のやることだ。どこかにパターンは存在する。

 そいつを見極めろ。

 スラスター出力の上がったプロフェシーSGなら、空中ダッシュを使った空間戦闘もイケるけど、わざわざ相手の土俵で戦うのも馬鹿げている。

 オレはターボを噴かしながら月の表面を移動。死霊館にガンポッドで牽制射撃を繰り返す。


<小瀬川くん、君はやる気があるのかな? さっきから死霊館に有効打を与えられていないじゃないか>

「ははは、先輩に花を持たせているだけですよ!」

<言ってくれるね!>


 別に舐めプしてるワケじゃないですよ。宗像さんが強いってだけの話です。

 死霊館は月面の戦場を見えない回遊魚のように超スピードで泳ぎ回る。スラスターの光から大体の位置を割り出して、鎌斬裂波とガンポッドで攻撃。相手の動きがある程度読めてきたので多少は当たるけど、決定打には足りない。

 あと、もうちょい!

 

<小瀬川、援護はいる?>


 唐突な通信は乾からだった。

 初期転送ポイントからこっちに移動してきたのか。


「乾、サンキューな。でも、オレ一人で大丈夫だ」

<強がらなくてもいいのよ? 今日のあんたの目的はあの悪趣味なギアじゃないでしょ>

「悪趣味ってお前、幾らなんでも失礼だろ。それに、結構カッコいいと思うぞ、宗像さんのギア」

<お嬢さんには理解出来ないセンスなのだよ小瀬川くん>

<あら、お気に触ったのならお詫びします。マグロみたいにせわしなく泳ぎ回るユニークなギア、とでもお呼びすれば良かったかしら? お刺身にしても食べられそうにないけど>


 乾、煽るなぁ。宗像さんが温かくなるぞ。

 銀色の甲冑を纏った西洋騎士風のギア、乾の愛機・エル・ゾンビが、アンチフォトンマントを翻して、主力装備の回転式突撃槍スパイラル・ランサーで死霊館に格闘攻撃を仕掛ける。ここ、一応月面ステージだけど重力は地上と変わらないし、マント系の装備も普通にたなびくだよなぁ。宇宙でのリアルな物理シュミレートは新作までお預けってことで。いや、新作も本当の意味でリアルなワケじゃないけど。

 

<すばしっこい上に姿まで消すなんて、厄介なギアね! しかも、あのクロー・アーム、腕が長い分、ダブルロックオンの範囲が広くて捌き難い>


 回転式突撃槍による格闘攻撃をことごとくかわされた乾が苛立たし気に言う。


「スタァ・ギアの攻略記事担当してた人だからな。一筋縄じゃいかねーよ」

<あら、そう言う割には余裕そうね?>

「攻略法は見えたから問題なし」

<そう。だったらいいわ。わたしは退くけど、あんな悪趣味なギアはさっさと片付けるのよ>

<おや、口の悪いお嬢さんにはお仕置きが必要みたいだね?>

<やだ、何そのセリフ。完全にヤバい人じゃない!>

<はははははははははっ!! 絶対に泣かすっっ!!!!>


 死霊館がエル・ゾンビに突撃する。ステルスが切れてるけどお構いなしだ。

 宗像さん完全に温まってるわ。意外と煽り耐性低い人なんだ。

 そういや、神余さんの言葉も結構気にしてたしなぁ……。


<これじゃ退こうにも退けないわね。穿て、ランサー・シュート!>


 回転式突撃槍の槍本体が持ち手と連結した発射機構から撃ち出される。遠距離攻撃版のランサー・シュートだ。

 死霊館は僅かに身を捩り発射された槍を回避。そのままエル・ゾンビにクロー・アームで格闘攻撃を仕掛けるが、エル・ゾンビは本体の装填リロードされた回転式突撃槍で死霊館を迎え撃とうとする。


<ひゃひゃはひゃひゃひゃっ、楽しそうなことやってるねっ! アタシも混ぜろやぁーっっ!!>


 やたらとハイテンションな声を上げながら乱入してきたのは、マッシブなプロポーションと深紅の塗装カラーリングが目を惹く重量級のギア。両腕で構えた巨大なハンマーが物々しい。


<その紅いギアはインフェルノ……。溝呂木嬢か!>

<その通り! 最強無敗の超★銀河級ライナー乙女、溝呂木歌子とはアタシのことさっ!! 宗像、アンタは相変わらず辛気臭そうな声をしてるねぇ!!>


 まさかのプロ乱入。何か、収拾付かなくなってきたぞ。


<すみません、溝呂木プロ。そこの黒くて特殊な趣味のギアはわたしの友人の獲物みたいなんです。よろしければ、ゆずってやって貰えませんか?>

<んー、別にいいよー。キッズにはサービスしてやらんとねー。代わりにユーがアタシの対戦相手ってことでオケ?>

<天下の溝呂木プロからわざわざ指名いただけるとは光栄の至りです。謹んでお受け致します。負ける気はありませんけど>

<ひゃっはー、チミ、本当に面白いね! しっかり楽しませてよっ!!! あと、アタシのことは歌ちゃんプロって呼びなっ!>

<ちょっと、小瀬川、この騒々しいプロはあたしが相手するから、あんたは、そこの何か黒くてカサカサしてるのさっさと潰してシアンのとこ行きなさいよ!>

「サンキュー、乾。そうさせて貰うわ!」

<後で豊島珈琲のケーキセットよ!>


 ……オレのダチは、揃いも揃ってたかりグセでもあるのか?

 エル・ゾンビとインフェルノは格闘攻撃を繰り出し合いながら、戦場を移動。

 そこに、数機の敵機が向かって行く。あれは、乱戦の予感だ。

 乾、やられんなよ。


<僕と小瀬川くんの戦いをケーキセットのだしにするだと? それが傲慢だと何故わからない! ついでに言うとこの死霊館はマグロでもなければGの付く害虫でもないぞ!!>


 あー、もう、めんどクセェ。そろそろキメるか!!


「ガンポッド展開! ランダムシュート、ゴー!!」


 背部スラスターから射出、展開したガンポッドが、あらかじめ設定しておいた数種類の攻撃パターンを繰り返す。

 あらぬ方向に撃ちまくられる光子弾を無視して死霊館はプロフェシーへと急接近。

 オレは気にすることなく武器のエネルギーが続く限りガンポッドを撃ちまくる。

 そのうちの幾つかが徐々に死霊館に命中し始める。


<む、これは!>


 宗像さんが焦りを見せ始める。

 ガンポッドの残弾ゲージがレッドゾーンになったところで、攻撃を鎌斬裂波に切り替えて、これも一見適当な感じにばら蒔いていく。ついでだ、左腕装備のドレッド・スパイカーTテラーも撃っとけ。当たればラッキーだ。ちなみに、特殊効果はヒットした相手の機動力+装甲値低下。ノーマルのドレッド・スパイカーより再装填チャージの時間が長いけど、そのぶん効果は強力なのでよし。 

 オレの攻撃は一見メチャクチャだけど、死霊館の被弾率は上がっている。

 死霊館は、少しずつ、でも確実に耐久値アーマーゲージを削り取られていく。

 死霊館の機動性は半端ない。狙って撃ってもかわされるだけ。速度とステルスのあわせ技で格闘戦を仕掛けるのも難しい。

 となれば。

 シューティングゲームの法則に、狙い撃ちする弾は動いていれば当たらない、ばら撒かれる弾は必要以上に動かなければ当たらない、ってのがある。本当はもっと細かい説明が必要なんだけど、今は省く。

 死霊館はその法則どおり、圧倒的な速度で、狙って撃ったオレの弾をことごとくかわし続けた。

 だから。

 オレは一見するとランダムに、その実、これまでの攻防から得た情報で予測した移動範囲に、先回りで弾をバラ撒いた。放っておいても向こうから当たるようにだ。

 直線コースで突っ込んでくる相手ならもっと簡単に攻略出来たけど、死霊館は好き勝手に飛び回っていたので、移動の癖を掴むまで結構時間がかかった。

 まぁ、最後は乾の煽りで温まったせいか、動きがだいぶ単調になったのでラクだったけど。

 結果的に乾はナイスなアシストをしてくれたワケだ。


<ぐ、機動性が急に下がった! 左腕装備の特殊効果か……?>


 お、いいね。ドレッド・スパイカーTが二発当たった。これでやりやすくなった。

 オレはプロフェシーSGを機動力の低下した死霊館へと最大加速で向かわせる。

 死霊館のトンチキ極まりない速さは厄介だけど、今の状態なら充分対応可能。残弾の回復したガンポッドで追撃しながら死霊館へ接近。向こうもハンド・マシンガンで応戦しようとするけど、動きにさっきまでのキレが感じられない。

 ステージの表面スレスレから上昇しようとした死霊館に、鎌斬裂波を数発お見舞い。程よく耐久値の減ったところでダブルロックオン。ターボの加速を乗せたまま、ハーヴェスターⅡの近接フルコンを叩き込んでやる。装甲値の下がった状態でコレはキツいだろ!


<僕は君達の影だ。君達が強い光を放ち続ける限り傍らに在り続ける。そのことを忘れるな。つーか、コレで終わりなの!?>


 ハーヴェスターⅡの猛ラッシュで残り耐久値を全て持っていかれた死霊館は、ライナーの宗像さんともども、バトルロイヤルからリタイヤした。

 何か、最後までよく分からないこと言ってたけど、まぁ、いっか。





 メインモニターには戦場の至るところで戦うギアの姿が映し出されている。

 オレはサブモニターを呼び出し近くの敵機を確認。あの名前がないかを確認する。

 ヒナと透吾はまだ落とされていないようだ。乾……それに、溝呂木プロも生き残っている。

 フロニキは確認するまでもないか。こんなところでやられるような人じゃないからな。

 他のサブモニターには、バトロ大会の解説を担当する神余さんと司会の美佳ねぇの姿が映し出されている。対戦に集中したいので、そっちの音声は切ってある。モニターにwの弾幕が大量に飛び交っているのは、神余さんがお馴染みの天然ボケを炸裂させたからだろうか。

 動画勢も楽しんでいるみたいだ。いいぜ、オレ達ライナーのバトルでもっと楽しんで熱くなってくれ。オレも限界まで燃えてみせるから。

 オレはサブモニターをさらに検索。そこに、探し求めた名前を見つける。

 ああ、やっぱり生き残っていたか。当然だよな。こうでなきゃ、ならねぇよ。

 オレはデュアルスティックを前に倒しブーストトリガーを押し込む。

 プロフェシーSGのスラスターがオレンジ色の光を解き放ち、アイツ――シアンとカメラ・オブスクラに向かって加速する。

 周囲の敵機がこちらに攻撃しようとするが、どのギアもプロフェシーSGに追い付くことが出来ない。

 それじゃあ、速さが足りないぜ。生まれ変わったプロフェシーとオレは、この虚構の宇宙そらを翔ける最速の星だ。

 メインモニターの中。決着を付けるべき運命の相手が間近まで迫る。

 おかしいな。敵機プロフェシーが接近してくるのに、カメラ・オブスクラは全く動こうとしない。

 ……何かの罠か?

 オレがそう疑問に思った、そのとき。

 

<ここでは、はじめましてだね。小瀬川くん>


『世界の関節が外れる音』ってヤツをオレは生まれて初めて聞いた気がする。

 ヘッドセットから聞こえる声。

 オレの心を掴んで離さない、まるで鈴がなるようなとても綺麗なあの声を、機械越しでも聴き間違える筈がない。

 オレはまた寝落ちして、夢だと理解している夢でも見ているのか。

 これは、一体どうゆうことなんだ、乾。説明してくれよ。

 どうして、ここにいるんだ。

 宙埜さん。



【To Be Continued……】

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