第8話 金縛りの話


 金縛り、私が聞いた中では体験した方が一番多い気がします。

 噂では、成長期によくあるとか、体は寝ていて脳だけが起きている状態だとか、仰向けで胸の上に手を置いて寝てるとなる、なんて聞きます。


 友人の話では目を開けたまま寝てたらなったそうです。目を開けたまま寝るなよ、見てる方がホラーだわと思いました。


 でも実際の視界に夢のような景色が混ざり込んで大変恐ろしかったらしいです。

 幽霊のような人影が見えて、隣にいる兄弟に助けを求めようにも動くことも声を出す事も出来ず、様子を見に来たお母さんは確実に友人を見ているのに、誰も気づいてくれなかったそうです。

 もどかしくて恐ろしかった事でしょうね。


 そして金縛りの経験は私にもあります。

 これも中学生の頃です。私は仰向けで寝れません。いつも横を向いて膝を曲げて寝ています。起きるまで同じような格好です。


 その日も普通に寝ていました。ベットの頭の方に窓があり季節は覚えていませんが、確かに鍵がかかっていました。


 大変気持ちよく寝ていた気がするのですが、窓からナニか入ってきたように感じた時、金縛りに遭いました。

 胎児のような格好で、曲げている肘も膝も伸ばすことが出来ません。

 少しは動かす事は出来るのに本当に縛られているようにそこから先に行けない、そんな感覚でした。その上目も開けられません。


 ナンダコレ! と思って少し抵抗してからコレが金縛りかぁと思いました。

 すると突然、金縛りが解けて目を開ける事が出来ました。

 そしてベットの足元のあたりに、人の頭ぐらいの大きさの赤い、丸いものが見えます。瞼越しに太陽を見たときのようなあれです。そして頭頂部には黒いものが見えました。まるでプチトマトの様な感じです。


 そして私は思いました。

「おのれ、人の眠りを妨げおって……蹴り入れちゃる!!」

 そしてちょうど足元にいる? ある? 幽霊らしきものに向かって曲げたままの足を伸ばして蹴ろうとしました。足を動かそうとしたその瞬間! また金縛りになりました。

 そして何故か目も閉じていました。

「くっそ〜やられた〜〜!」

 心の中でそう叫んでいると入ってきた時と同じように、ナニかが窓から出て行った気がしました。そしてそう感じた私は金縛りが解けたかも分からないまま眠りました。


 翌朝目覚めた私は両親や友人に話します。

「金縛りにあったんだよ!」

 しかし何故か笑われました。

「せっかく出てきてくれたんだから少しは怖がれ」

 なんて言われたりもしました。言われてみればそんな気もします。しかし、幽霊って蹴らるの嫌なんでしょうか? ダメージとかあるんでしょうか? 不思議です。まあこれも夢なんじゃない? で終わる話ですね。でも他の夢のように忘れないのは、何故でしょうか?



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