墓参り
「またあの人来てる・・・。」
ここは郊外にある霊園である。普段はひっそりとしていて誰も訪れるような場所ではないのだが、お盆には小さい子を連れた家族をよく見かける。
そんなどこにでもあるお墓でちょうど3年前、私が墓参りをしようとするとそこに花が供えられているのを見つけた。その時は場所をうっかり間違えたのか、気のいい人の物だろうと深く考えなかったが、次の年も花が供えられていた。それを見てさすがの私も不審に思った。そして去年、いつものように墓参りに来ると花を供えて立ち去る男を見た。呼び止めようと急いだがその時は見失ってしまった。
今年も墓参りに来ると去年見たのと同じ男が花を供えていた。今年こそは、と思いその男に声をかけた。
「あなたはなぜ人の墓に花を供えるのですか?」
「それが私の仕事だからです。」
「何ですって?」
「私は墓所振興協会の者です。近年の宗教観の変移により、墓参りに来る人が大幅に激減しまして。そこで我々墓所振興協会が代わりに墓参りをすることで少しでも墓所を華やかにするようにしております。しかしあなた様の親族の墓だとは知りませんでした。今後は我々が関与しないように致します。それでは・・・。」
そう言って男は立ち去って行った。しかし墓所振興協会なる組織があるとは知らなかった。私は個人的に、墓参りに人が来ない墓に花を供えていただけなのだが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます