シネマトグラフ

水上 遥

放課後

明け方の様な夕方

雪が少し残る駅

冷えた鉄柵

投げ渡された缶コーヒー

弱いけれど冷たい風

制服についた雪の粉

アルトで話しかける君の声

林檎の様な頬っぺた


空と雲が作ったどこまでも続くドーム

その果てにある別の場所

風が我が物顔で走っていく線路

片方が無い手袋

その手に持たれた本

気の早い一番星

誰かが作ってくれたマフラー


少し嫌いになったベルの音

自分勝手な電車のドア


向かい合わせの座席

曇り始める窓

線を描く紅い灯

白い雪原になった田園

見上げるぐらいの鉄柱の行列

窓に映る林檎


70㎝間を飛び交う物語

消えちゃいそうなクスクス


自分勝手な電車のドア

何度聞いても慣れない言葉

林檎を置いて行った電車


さっきよりもよく聞こえるガタンゴトン

曇った窓越しに映る茶色い瞳

流れていく果てしない白い地平線


空いている目の前の座席

空いている胸の真ん中


ポケットの中の冷えた缶コーヒー

ポケットの中の言葉

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