第19話 あるモンスターバスターの日記  (ドクターフランケンの憂鬱 前篇)

※1 第1話の約半年前の話になります。


※2 主な登場人物


石川瀬利亜  熱血男前ヒロイン。一人ノリツッコミが特技。


錦織光一  瀬利亜はんの婚約者。関西弁を操るイケメン。瀬利亜はんとの夫婦漫才が得意。


リディア・アルテア・サティスフィールド  瀬利亜はんの両親と瀬利亜はんの心友のゆるふわ超絶美女。魔法もすごいが、天然度もスゴイ。


神那岐千早 瀬利亜はんラブの人形みたいなかわいい女の子。


綾小路遥 瀬利亜はんラブのかわいい系お嬢様。


ドクターフランケン 悪の天才科学者。秘密結社幹部


ミーナ  ドクターフランケンの助手ロボット。


レディマント(羽生麗華) 秘密結社幹部で瀬利亜たちの同級生



◎月X日 『わしはわしを追放した学会に復讐するんじゃ!!』(BYドクターフランケン)

 …とても困ったおじさんが『敵?秘密結社』にいるのです。


 「はーっはっはっはーー!!シードラゴンマスク!ここであったが百年目だ!!

 今度こそ貴様をギタギタにしてくれるわ!!」

 敵対している秘密結社スーパーモンスターズの幹部・ドクターフランケンが叫んでいる。

 フランケンという名前から『縫い目の付いた凶悪な青白い顔の大男』を想像されるかもしれないが、実物は小太りの眼鏡の外人のおっさんだ。

 『フランケンシュタインの怪物』を制作した『フランケンシュタイン博士』の子孫なのだそうで、当然見た目はただの人間なのです。


 「いいか?シードラゴンマスク!月の出ている夜ばかりでないことを思い知るがよい!」

 …えーと、それって『逃げる時のセリフ』だよね…。


 「あのう、ドクター?今回はたまたま梅雨の合間の晴天の休日にキャンプ場で鉢合わせしただけだから、そんなに尖がらなくてもいいと思うの。わざわざこちらから何かしようとは思わないし。

 モンスターバスターの『討伐対象』は原則『現行犯』だし、そうでない場合は『何十人と虐殺したような飛び切り危険な凶悪犯』だから。

 変なものを作っては作戦を失敗させているドクターフランケンや妖精型助手ロボのミーナちゃん、結局犯罪行為が目撃されていない『レディマント』こと麗華ちゃんは『討伐対象外』だから。安心してキャンプをお楽しみください。」


 私の言葉に『何度かメカとともに粉砕』してあげたドクターフランケンは引き下がらないように必死だった表情を緩め、妖精型助手ロボ・ミーナちゃんは明らかにほっとしたような表情だ。

 同じく立て巻ロール髪のツン系のお嬢様風の敵幹部『レディマント』…は今は非番なので私たちと同じ雪組在籍の女子高生羽生麗華はしょうれいかちゃんだ。

 ミーナちゃんと同じくほっとした顔をした後、はっと気づいて目を吊り上げる。

 「いい?学校やここだから『とりあえず休戦』にしてあげるのよ!わかっているわよね!」

 …という感じなんですが、根は悪い子ではないようです。


 ちなみにこちらは私と光ちゃん、アルさん、ちーちゃん、遥ちゃんの五人だ。

 ちーちゃんと遥ちゃんは最初かなり気にしていたが、私とアルさんが平然とした顔をしているのを見て、すぐに気にしないことにしたようだ。


 「そろそろお昼になるから、バーベキューの用意をしましょうか。

ちーちゃんと遥ちゃんは炭火を用意をしてくれる? 

 光ちゃんとアルさんはオードブルやサラダをお願いね。

 私は今捕まえたイノシシと鱒を解体してたべられるようにするから。」


 「ちょっと待って?!!瀬利亜さん!イノシシ解体てなに?」

 私たちと別れようとしていた麗華ちゃんが私が取り出したイノシシを見て仰天して声を上げる。


 「ああ、この地方ではちょっと気の毒だけどイノシシは害獣扱いなの。

 本当は自然林なら餌が豊富にあるから、熊やイノシシも人里まで降りる必要がないのだけれど、今は多くが杉やヒノキなんかの人工林だからね。

 人と野生動物がもう少し共存できるように日本の森林も早く自然のものに戻すように…。」

 「…なんか、大切なことを言っているようにも聞こえるけれど、今は論点はそこじゃないでしょ!!なんで、さりげなくイノシシを捕まえているわけ?」


 「可能なら現地調達するのが兵糧の基本だわ。」

 「……言いながらきれいに捌いて血抜きをしているのね…わかったわ…もうどこから何を突っ込めばいいかわからないからいいことにします…。」

 麗華ちゃんが肩を落として二人と共にすごすごと去っていく。



 そして、私たちが準備を整えていざ、肉を焼きはじめようとした時、なぜかドクター、ミーナちゃん、麗華ちゃんの姿があった。


 「どうしたの?もしかして一緒にバーベキューをしたいの?」

 アルさんがにっこり笑って三人を見る。

 「正直お肉も野菜も『現地調達』したから余裕は十分あるわ。一緒に食べてもらっても大丈夫よ♪」

 私も自家製のたれの準備をしながら返事をする。


 「…そ、そこまで言われるなら、一緒に食べてあげても…かまわないわ!」

 お肉の山に目が釘付けになりながら麗華ちゃんが返事をする。


 「レディマント!!罠だ!これは我々を貶めるための罠だ!!それにひっかかるんじゃない!!」

 ドクターがやはりお肉とオードブルを物欲しそうに見つめながら口に出す。


 「いやあ、携帯用冷蔵庫と冷凍庫が故障してまして、素材がこの暑さで全部いかれてたんですよ。皆さんがおられて、本当に助かります。」

 ミーナちゃんが背中の羽根をはばたかせながら済まなそうに頭を下げる。

 ミーナちゃんは人間の半分くらいのサイズの助手ロボットなのだが、背中の羽根はダミーで、反重力システムで宙に浮いているそうだ。


 「レディマント!ミーナ!お前たち、『悪の秘密結社幹部』の誇りはどこへ行ったのだ!」


 「ええと…今はクラスメートの羽生麗華はしょうれいかだから、誇りは懐に仕舞ってます…。」

 「ええと…人間(ロボット?)生きててナンボですので、今回は仕方ないかと…。食べなければ生きていけませんので…。」

 「くうう!お前たち!そんなことでは!!」


 「……ええと、ドクター…思い切り肉を頬張りながらコメントされても説得力が皆無だわ…。食べるのなら、ぐちぐち言わないで喜んで食べてちょうだい。」

 「ドクター、その通りだわ…もぐもぐ…この霜降り牛肉おいしいわ♪」

 「全くですよドクター…はむはむ、中華スープがいい味してますね♪」

 私の注意に麗華ちゃんとミーナちゃんがうなずく。

 ええと…麗華ちゃんもミーナちゃんも完全になじんでしまっているんですが…まあ、いいんですけど…。




 「はっはっはっはっは、今度はブラックシードラゴンマスクを開発に成功したのだ!!

 本物と同じスピードと闘気展開能力!そしてパワーは二倍、装甲強度は人間の比ではない!

 今度こそはギタギタにしてくれるわ!!」

 「食事中に何を言ってるの?!ご飯を食べる時楽しく話すのならわかるけど、それ、どんな嫌がらせなの?!」

 「そうよ、ドクター!この前メカシードラゴンマスクが一撃で粉砕されたばかりじゃない!!

 ご飯がまずくなるような話はやめてちょうだい!!」

 ドクターのKY発言に私と麗華ちゃんが文句を言う。

 ミーナちゃんはモノも言わずに夢中になってお肉をぱくついている。

 ミーナちゃん、体が小さい割にどこに入るかというくらい食べてますね…。




 お腹も充分膨らんだ後、しばしティータイムを楽しみ、川遊びをすることにしました。

 渓流なのでみんなで水着をわいわい言いながら着ています。

 私はオレンジ色のビキニを着て、他のみんなはワンピースだ。

 アルさんがビキニでないのは残念…いやいや、ビキニだったら光ちゃんが鼻血を出して行動不能になりそうだ。


 「忘れた!水着を忘れた!!」

 少し離れたところで麗華ちゃんの声が聞こえる。

 残念そうに叫ぶ麗華ちゃんに私は近寄っていく。


 「この緑のビキニウェアを貸そうか?」

 「あなたのビキニじゃ胸がスカスカになるから、無理!」

 「そうやね…、遥はんのワンピースなら、ほぼ行ける思うんや♪」


 確かに光ちゃんの言う通り、遥ちゃんのワンピで何とかなった!

 さすがは女性のスリーサイズを『透視する男』だけのことはある!


 しばし、麗華ちゃん、ミーナちゃんも込みで水遊びに興じることになりました。

 光ちゃんは…種々のビーチボールやらボートやら水の上で遊ぶおもちゃを出してくれています。

 さすがはエンターテイナーです!


 「はーっはっはっはっは!!このスーパーメカキラーホエールの性能実験を行うのだ!!海を行く最強の殺伐マシーンの威力を……わーー!!!大きすぎて川にはまって動けん!!」


 「瀬利亜はん…あのおっさん何とかした方がいいんちゃう?」

 「……えーと、放っておきましょう。麗華ちゃんとミーナちゃんも完全に呆れているし、緊急時には私とアルさんで実力行使するから大丈夫。」


 こんな調子で私たちのキャンプは無事にすむのでしょうか?


 後半へ続く!

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