第17話 異世界召喚勇者でチートで…(以下略)…さらに後日談その1

※主な登場人物


石川瀬利亜  熱血男前ヒロイン。一人ノリツッコミが特技。


錦織光一  瀬利亜はんの婚約者。関西弁を操るイケメン。瀬利亜はんとの夫婦漫才が得意。


リディア・アルテア・サティスフィールド  瀬利亜はんの両親と瀬利亜はんの心友のゆるふわ超絶美女。魔法もすごいが、天然度もスゴイ。


サーヤ  エルフの魔法使いで超絶美女。


神那岐千早 瀬利亜はんラブの人形みたいなかわいい女の子。


綾小路遥 瀬利亜はんラブのかわいい系お嬢様。



 異世界クラス召喚…それは禁断の召喚技。その禁断の技術が活用された時、ある世界にとてつもない大きな影響を及ぼし、一人の少女が過酷な運命に遭遇することとなった。

 今夜はその顛末をお話ししよう。




 「みんな、寒いけど元気そうやね♪春休みまであとひと月やけど、気い抜き過ぎんようきいつけや♪」

 風流院高校二年雪組のホームルームが始まった。

 担任の光ちゃん…錦織先生がニコニコしながら出席を取る。

 隣に副担任で化学教師のアルさん…アルテア先生が同じようににっこり笑って立っている。

 光ちゃんも充分に背が高いのだが、二人並ぶと若干アルさんの方が背が高いのだ。


 出席も取り終わり、光ちゃんが伝達事項を伝え終えた時、『それ』は起こった。

 雪組の教室が突然地震のように大きく揺れ出したのだ!!


 「地震や!みんな、机の下に入るんや!」

 光ちゃんが緊急スイッチを押すと同時にみんなに指示をだす。


 「待って!これは地震ではないわ!!教室ごと『空間転移』が起きているわ!

 『召喚エネルギーが非常に強い』から、下手に抵抗すると教室が崩壊する恐れがあるわ。

 一旦転移した後、空間が安定したらもう一度教室を転移させた方が安全だわね!」

 アルさんが水晶球を覗きこみながら状況を把握している。


 そして、『結界魔法』を掛けて、クラスの全員と教室自体が大丈夫なように強化する。


 これは、もしかしてラノベで有名な『クラスごと勇者召喚』というやつか?!!


 間もなく、教室中が光に包まれた後、窓の外の景色が消えた。




 光が消えた後、外からの光で教室は元の明るさに戻った。

 どうやら屋外に教室ごと転移させられたようだ。


 とても幸いなことに『スーパーヒロインセンサー』には現時点で敵対的な相手は感知されていない。

 すぐにみんなが襲われることはないようだ。

 …もっとも、この教室に超A級モンスターバスター一二星のうち三人がいるのだから、魔王の一〇人や二〇人くらい襲ってきても楽勝で撃退できるのだが…。


 ともあれ、状況を把握するため、まず私が外に出ることにする。

 教室の扉を開けると、何十人かの農民風の人達と、一人の西洋風の巫女姿の若い女性が立っている。金髪巻き毛のセミロングの美少女系の女の子で素朴そうな顔をしている。


 「みなさん!!勇者召喚は成功しました!!これで私たちの村は救われます!!」

 私の姿を見ると、巫女の女性は村人たちに向かって叫んだ。

 村人たちは歓喜の涙を浮かべて喜んでいる。

 この人達に一体何があったのだろうか?


 まずは巫女の女性に事情を聞いてみることにしよう。


 「異世界からお越しの勇者の皆様!突然お呼びして申し訳ございません!!

 私たちの住んでいるカソノ村は今まさに滅亡の危機に瀕しているのです!!

 私たちの力ではもはやどうしようもありません!!皆様のお力でぜひこの村をお救い下さい!!」

 巫女さん、そして村人たちは私に懸命に頭を下げ、懇願する。

 どう見ても普通の村人にしか見えない。召喚しておいて邪悪な意図のもとに私たちを利用する…というラノベのような展開はどうやら免れたようだ。


 「村は一体どんな状態なのですか?まずは事情をお聞かせください。」

 私は巫女さんに優しく問いかけてみる。


 「実は皆様のお力をお借りして『村おこし』を成功させたいのです!!」

 「あほかーーい!!!!」

 約百メートル四方に巫女さんをはたいた私のハリセンの音が鳴り響いた。



~~☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆~~



 「みなさん。このカソノ村が村おこしに成功しないと、巫女のカトリーヌさんは失職し、教会は廃止。村も間もなく廃村になってしまうでしょう。

 みなさんの若いアイディアと情熱で村おこしを成功させましょう!!」

 アルさんがニコニコしながら頭にコブを作ったカトリーヌさんの傍で雪組のみんなに伝えている。

 村おこしのために『異世界クラス丸ごと召喚』するとはなんと壮大な無駄なのだろうと頭が痛くなりました。なお、カトリーヌさんの予定では私たちの世界に送還するには『村おこしに成功して、物資が揃ったら可能になる』ということだったそうだ。

 実際は『世界最高の魔法使い・大魔女リディア』ことアルさんがおられるので、無理にカトリーヌさんに送還してもらう必要はないのだが、このまま帰ってもカトリーヌさんはともかく、他の村人たちはかわいそうになったので、みんなでアイディアを出すことになったのだ。


 この段階でクラスの全員に『アルテア先生が魔法使い』とばれてしまいましたが、ほとんどの生徒がうすうすアルテア先生は『人間離れしたゆるふわ先生』という認識があったため、ほとんど騒ぎになりませんでした。


 「はい!!いいアイディアがあります!!」

 元気のいいフツメン男子の橋本君がびしっと手を挙げた。


 「ここは『メイド喫茶』しかないと思います!!」

 それ、文化祭でできなかったから橋本君が個人的にやりたいだけだよね?!!


 「はい!!もっといいアイディアがあります!!」

 ダイエットに成功してスリムになった木川さんが思い切り手を挙げた。


 「文化祭で大好評だった『各国民族衣装飲茶』で世界的な名所にしたらいいと思います!!」

 木川さん!文化祭の時は太っていて着れなかった民族衣装を着てみたいだけだよね??!!

 個人的には同情するし、着てもらうこと自体は問題ないけど、この村に合うかどうかは別問題だよね!!


 「はーい♪お二人ともありがとう♪ではでは、私たちが実演してみて、村人たちに見てもらいましょう。その上で村人たちに選んでもらえばいいと思います♪」

 アルさんの声にみんなは賛成しますが、果たしてうまくいくでしょうか?



 「このメイドさん、お持ち帰りしていいですか??!!」

 メイド姿のちーちゃん(千早ちゃん)を抱きしめてムニムニしながら私が叫ぶ。


 「瀬利亜はん、落ち着いて!!戻ったらいくらでも持ち帰ろうが、ムニムニされようがかまへんから先に実演しまひょ!」

 光ちゃんの声で私は何とか我を取り戻す!

 なお、メイド遥ちゃんもやはりお持ち帰りしたいくらいかわいいですが、よく考えなくても石川邸に入りびたりなので、こちらも『お持ち帰り済み』のようなものでした。


 なお、私は今回はスペインのフラメンコ風の衣装で、先ほどの木川さんはベトナムのアオザイを着こなしています。

 体の線がきれいに出るアオザイを着れて、ダイエット成功おめでとうございます!…と心から祝福したくなります。

 そしてアルさんは…フラを踊る時の衣装…反則です!!クラスの男性陣と村人たちの男性の視線をほぼ独占されております!!

 別に悔しいとかどうこうよりも『村にこんな巨乳は存在しない』ように見えるのです。

 実際の村おこしのモデルとして使えそうにないのですが…。

 

 それでも我々が実演したメイド喫茶と民族衣装風飲茶は大好評でそれぞれを村人がやってみることにしました。


 「こんなメイド喫茶があるか――!!!!」

 橋本君が絶望の叫びを上げています。


 そりゃあ、そうですよね…。


 過疎の…もとい、カソノ村には若い人があまりいなくて、お年寄りが多いのですから、かわいいメイドはカトリーヌさんを入れてほんの数人です。残りは…おばさま、おばあ様…実はこれはまだ許せるのです。おじさまやおじい様…何考えとんじゃい!!

 橋本君でなくても叫ぶわい!!


 それではと、今度は民族衣装飲茶をやったのですが…。


 やめろーー!!!マッスルなフラやフラメンコ風衣装なんぞ誰の需要ですか???!!

 さらに飲茶が見た目完全な『謎料理』と化しています…。

 肝心の味は……『ぎええええ!!!』……なんと!シードラゴンモードには『完全毒耐性』という素晴らしい作用があるのです!!飲茶どころか……毒になってるじゃん!!!


 アルさんと私以外が精神的に崩壊して、そもそもプランすら出てこなくなってしまいました。


 『村おこしは一日にしてならず』です!早くも勇者稼業が暗礁に乗り上げそうです。

 このままではいけません!!異世界召喚勇者の名にかけて、明日こそは村おこしへの道筋を付けねばなりません!!

 …ということで、『元気な私とアルさんの二人』で山の幸を使ったご馳走で英気を養うのでした。


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