第5話 不気味な館
「……道に迷った」
雪乃さんたちとの出会いの感傷に浸っていたら、いつの間にか見知らぬ場所へと来ていた。
どうやら山道を適当に歩いてしまい、行きで来た道から大きく外れてしまったようだ。
「空も暗くなってきた。野宿用の道具なんてもってきてないし、早く帰らないとやばい」
だが焦ったっていいことはない。どんなときでも冷静に、が先生の教えだ。
「方向は合っていると思うし、とりあえずこのまま進もう」
立ち止まっていても何も始まらない。私は歩き始めた。
「……はあっ、……はあっ」
あれからどれだけの時間歩いたのだろうか。
一向にバス停までたどりつけない。
「流石にこれはやばい。どうしよう……」
焦ってもいいことはないと思っていても、焦らずにはいられなかった。
「……もしかしたら、ここで死ぬのかな」
私はそんなことを考えていた。
もう諦めていたそのとき、私は近くに明かりが灯っていることに気づいた。
「! もしかして、誰かいるのかな」
私はその明かりに近づいた。
すると、そこには大きな洋館が建っていた。
外観はかなり古びていて、不気味な雰囲気を漂わせている。一見人は住んでなさそうだが、明かりが灯っているということは誰か住んでいるのだろうか。
「と、とりあえず、今日は泊めてもらおう。後日改めてお礼をするとして」
私の体はもう疲れ果てていて、これ以上歩くことは不可能だった。
私は玄関にあるベルを鳴らした。
「すいませーん。誰かいませんかー」
声を大きくあげた。しばらくすると、二人組の女性が現れた。
「あら、あなたは……? もしかして、道に迷ったとか?」
「そ、そうなんです。もしよろしければ今晩泊めてくださいませんか?」
「ええ、大丈夫ですよ。さ、中へ入ってください」
私は女性に進められ、中に入っていった。
この館で、凶悪な殺人事件が起こるとも知らずに。
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