第12話
おはよう………。おはようございます。ご主人様。
蒼太が目を覚ますと目の前にシャルティの顔があった。 超ドアップだ。
「おはよう。シャルティ?」蒼太は驚きながらもシャルティに言葉を返し、昨晩のことを思い出した。
◆
◇
◆
宿の人には出ていったときは俺だけの一人だったため、3人になって帰ってきた時には驚かれたが、事情を話すと余計驚かれたが納得はしたようで部屋を用意してくれた。
「こんな素敵な服を買ってくださりありがとうございます。」
シャルティは俺の目の前で申し訳なさそうだが嬉しそうな表情をして俺に向かってお辞儀をした。
か、可愛い……。服をきちんとした物に着替え、風呂に入って髪をとかし埃を落としたシャルティは埃を被っていた頃から輝いていた美貌が格段にましていた。
だめだ、ダメだ。シャルティがお礼をしてくれてるんだし何か言わないと!
「全然かまわないよ。これから俺と一緒に旅をして母親と会うんだろ?その時にみすぼらしい格好をさせてたら怒られちまうからな!」
シャルティに見とれていて、とっさに言ったにしては良かったんじゃないかな、見てたことバレてないよな?
「ありがとうございます!ご主人様!」
シャルティはそう言って俺の目の前で座り込み泣き出してしまった。
泣いている姿も可愛い…。
待てよ。今シャルティなんて言った?
「いま、なんて言った?シャルティ」
「ありがとうございます、ご主人様ですが…」シャルティは少しだけ泣き止んだが鼻声のまま俺の言葉に答えてくれた。
や、やっぱりご主人様か…。この部屋にいるのは俺とシャルティと白の三人だけだし白はご主人様っぽくないよな。なら俺か?
《ドウシテコウナッタですか?》
突然メフィアが入り込んできた。
(久しぶりだなー。とは言っても1日くらいしかたってないけどな。そして、俺のココロを読むな!)
メフィアに心を勝手に読まれて少し腹が立った。でもそういやメフィアは俺の魂の同位体なんだよな。なら心を読まれるのは仕方ないのか?それでも嫌だな‼
こんなまわりからみたら一人芝居をしているようにしか見えない俺の姿をシャルティが少し呆気に取られたような呆けた顔をして見ているのに気がついた。
「ご主人様って、俺の事か?」
焦って話を戻したが、変に思われてるだろうなー。ハァ
「はい!ソータ様のことです。」
シャルティは花が咲いたような笑顔を浮かべていた。
「そんな顔をされたら止められないな。俺の事をご主人様って呼んでも良いよ」俺は半ば諦めの気持ちを含んでご主人様と呼ばれることを認めた。
「なあ、シャルティはなんで母親とはぐれちゃったんだ?まぁ、思い出したくないとかなら、無理に思い出す必要はないからな」俺はシャルティの話を聞いてからずっと気になっていたことをシャルティに尋ねてみた。
「………。ご主人様になら言っても良いですかね…。」
そう言ってシャルティは過去の思い出を話始めてくれた。
「私の父は帝国騎士団の団長を務めていた人で剣術腕が立ち、皇族からの信頼も厚く、国中の人からも尊敬を集めてたと母から聞いています。そして、母は隔絶した美貌を持ち、全ての武芸に秀でていました。二人とも私の誇りでした。………
父は私が3歳の時に死んでしまいました。騎士団の新兵研修を下級冒険者用の
新兵たちは勿論のことS級冒険者以上の力を持ってたと言われている父でさえも敵わない相手です。しかし、父は逃げ惑う新兵達を部下の騎士に纏めさせて逃がし自分だけで殿を務め上げ生死不明となりました。後日、捜索隊が
そして、この事件にはある噂がありました、それは美しい母を帝国の宰相が狙い、邪魔だった父を消すために仕組んだ罠だったのではなかという物でした。
その時は知りませんでしたが宰相は母に言い寄っていたようです。
母は悲しみにくれていましたが私に愛情を目一杯注いで育ててくれました。
そして、私が5歳になった誕生日の翌日母も姿を消しました。私が寝ている間に母が居た跡が全て消えてしまっていたんです。私は母を探して帝都を歩き回りました。そのとちゅうで奴隷商人に捕まり現状に至ります……。」
シャルティはぽつりぽつりとゆっくりながら確かな声で俺に自身の過去を語ってくれた。こんなにも外に感情を出さなかったのはこんなにも地球の日本では考えられないことがあったからなのか……。
シャルティが一番の笑顔をしてくれるのは母親と再会した時になるのだろうか、なら俺もシャルティの心からの笑顔を見てみたいと思った。
そうして、俺は眠りについた。
◆
◇
◆
さて、今までシャルティの顔が近くて気恥ずかしく気付いていなかったが、俺のベッドの中になぜ白がいるんだ?昨日は違うベッドでシャルティと一緒に寝てもらったはずなんだがなぁ⁉
俺は白を起こしに掛かった。
手始めに、少しだけ離れた所から白の名前を呼んで起こしてみる。これで起きたら寝起きの良さ検定1級だ。
「おーい!シロ起きろー」
むにゃ、むにゃ
ダメだ、シロは1級ではなかったようだ。
次は2級の起こしかたに掛かる。顔を少し近づけて先程より大きな声で名前を呼んでみる。
「オーイ!シロ!オキロ!」
むにゃ むにゃ むにゃ
ダメださっきより良く眠ってやがる。
気を取り直して3級いってみよー!
耳元で大きな声で叫んでやる。
「じぃーろー!おぎぃろぉー!」
ダメだ声が割れてしまった。
むにゃ ぐー ぐー
さらに寝入ってしまった。
俺の声は子守唄か!
次は4級を試してみるかここからは物理的な起こしかたになるからやりたくはなかったんだがこうも手強ければ仕方ないな。
頭を軽く叩きながら
「オキロー!シロ!」
ぐー むにゃ む(ry
次は5級を試して(ry
次は6級をた(ry
次は7級(ry
ハァ ハァッ
これで起きなかったら俺はシロを起こせない!創造魔法で起床魔法を創ろう。
・
・
・
白専用 起床魔法
龍族の持つ特別な感覚器官に働きかけ起床を促す電磁波を放出する
なにか凄そうな魔法が出来た。名前が白専用というところが気になるが何よりもまずは使ってみるべきだろうな!
《破滅級独創魔法
ばっ!バサバサッ
魔法を使った瞬間に白が起き直立不動の状態でこっちを見ていた。
流石は破滅級の魔法だな、あれだけやっても起きなかった白が速効で起きたぞ。
今日はシャルティと白を冒険者に登録しようも思う。 身元を証明出来た方が地球でもこの世界でも楽だろうからな。
冒険者ギルドは昨日俺が行った時よりも時間帯が違うこともあってか人が多く受付にも長い行列ができていた。蒼太達も仕方なく列に並んだ。
「なんで、こんなに混んでるんだ?」
「そんなことも知らずに来たのかい?
知らないなら、教えてあげるよ!
昨日、この王都の近くのダンジョンで大規模な崩落があったからだよ。」
蒼太は辺りに聞こえない位の声で独り言のように呟いただけなのだが列の前に並んでいた少年には聞こえていたようだった。
その少年は少し赤みのかかったピンクっぽい金髪に透き通るような碧をした眼を持ち整った顔立ちをしていた。
「しかもそれがまた、ただの崩落では無かったんだ。噂によるとそこには魔人がいて、最近召還された勇者達のレベルアップに役立ったらしいんだよ。
しかも!それだけではないんだ、崩落した跡地にはミスリル鉱石が沢山あったらしいんだよ。ミスリルといえば魔道具にも使われるのに発掘量の少ない価値の高い稀少金属なんだよ。
そして、そのダンジョンの入場が禁止されていたんだけど、ついさっき解除されたんだよ。今ならミスリル鉱石がまだ残っているかもしれないと思ってみんなダンジョンに行こうとしているのさ。もし残っていて見つけてしまえば一攫千金も夢ではないからね。」
少年は自分にはまるで関係のないと言うような顔をしていた。
ほー、昨日ダンジョンで大規模な崩落があったんだなー ダレガヤッタンダローナー。
「そうなのか、それにしてはお前は全く興味が無さそうだな。」蒼太は少年の様子を見て思ったことを口にした。
「仕方ないじゃないか、ミスリル鉱石を見つけて手に入れられる金などこの僕からしたらはした金額なんだよ。」
少年はこう言った後に、少しだけ微笑みながら静かに
ヴァルドレット皇国の皇太子である、この僕
カシア・シン・ヴァルドレットにとってはね。
と言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます