第10話 Happiness 幸福というもの 加筆修正有 2021.2.26/12.26

10.

" Sad Melody 悲しい調べ "


 倉本くんが主催した合コンに病欠の子が出て、急に頼まれて

数合わせのピンチヒッターで私はその合コンに参加した。


 勿論女子のほうの最年長。

 壁の花覚悟だったのに、たまたま隣になった笠原くんは、ずっと

私の側にいて動こうとしなかった。


 この人も数合わせで来たのかしら?もしかしてまさかの既婚者?


 そんな事を考えたりしながらチビチビとドリンクを飲んでいたら

倉本くんが寄って来てあれよあれよという間に倉本くんと山口さん

私と笠原くんというメンツで後日カラオケするという話がまとまった。


 倉本くんと笠原くんが何やらごにょごにょ小さな声音でしばらく

話していたかと思うと、倉本くんは元いた場所に移動し、山口さんの

いる場所に戻って行った。


 周りを見回すと少しずつカップルができて、1組2組と会場

にしてあった店から出て行った。


 カップルにならなかった人もそれぞれに遊んで帰るようで

女子同士で帰る人達もいた。



 最後に残されていた私達も帰ることに。


 帰りかけた私においしいコーヒーのお店に行きませんか、と笠原くんが

誘ってくれたのでふたりで行くことにした。


 本当においしいコーヒーでコーヒー大好き人間の私は幸せな気分に

なれたし、あまり主張しない性格の笠原くんといるとほっと寛げた。


 シャイではにかみ屋さんな笠原くんは私の目にとっても新鮮に映った。

 温かみがあって声のきれいな彼の話し方が好きだった。



10-2.



 その次に倉本くんや山口さん達と一緒に行ったカラオケも

すごく楽しかった。


 いろいろと、つい春先のことなのに思いが次々と私の頭の中を駆け巡る。



 どうせずっと独りでいたんだもの、結婚なんて考えずにいたら

もうしばら笠原くんの側にいられたかもしれない・・とか

少しの未練が自分を悲しくさせる。


 笠原くんは私のことを思ってあんなに早く結婚のことを考えて

くれたのかもしれないけれど、不安にさせてはいけないと

思ってプロポーズしてくれたんだと思うけど。


こんな結末が待っていたのなら、結婚なんか急いでしなくて

よかったのに。


 自分から引導を渡してしまったけれど、これから職場で他人

の振りでやり過ごすなんてことが出来るだろうか!



 笠原くんが他の誰かと付き合ったり、お見合いで結婚が決まったり

した時、私は耐えられるだろうか。


 どこをどうやって帰宅したのか部屋に着いたらほっとして、そしたら

抜け殻になって頭の中も心の中も空っぽになって、また私は独りぽっちに

なってしまったんだなぁ~って、改めて寂しさを実感したのだった。



 心の中が乾き過ぎたせいなの?

 涙の泉も乾いてしまったのか、心はひどく泣いているのに涙だけが

出てこなかった。


 なぁ~ンだ、涙出てこないじゃない。 ふんっ!!



 温かいお風呂に入って空っぽの心を抱えた身体を布団の中に

忍ばせてその夜、私は眠りに落ちていった。



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