続 キロと13匹の悪魔

@haidoroponnpu

第1話 主人を待つ悪魔 その1




キロは西へ西へと向かっていた。

西はインバース国だった。

かつての栄光が影もないカルデラ国と違い

インバース国は、商業や建築ともに文明が進んでいる。





カルデラ城のその後、

コスカ妃を亡くされた皇太子は、牢屋に牢獄された。

代わりに、コスカ妃に反逆した罪で幽閉されていた元カルデラ王が国を治めることになった。コスカ妃の自分を愛させる能力の呪縛から解放された人々はコスカ妃の圧政に反発しており、元カルデラ王がなんとか国を保っている状態であった。



皇太子は、コスカ妃が失踪した近くに落ちていた洋人形を抱えながら廃人のように生活しているという・・・

皇太子「君のわがままを許してしまった私の責任だ。私が君をもっと強く守ってあげられたならば、君を誰からも好かれ愛される王妃にしてあげただろうに・・・」

皇太子の涙が洋人形にぽたりぽたりを落ちていく。





キロの処遇について、

兵士長を含め、キロがコスカ妃に斬りつけた場面を目撃しているが、

兵士長はあの場にいたすべての兵士に口止めし、

公式にはコスカ妃は失踪したということになっている。

大きな理由としては、死体が発見されないためであるが、

コスカ妃を紛糾する声が根強く、これ以上事態を複雑にしないという体裁を保つ狙いもあった。

兵士「・・・本当にこれでよいのでしょうか」

兵士長「首の飛ばされた人間がよみがえって、妃を斬って、妃が洋人形に変わったなどと誰が信じるというのだね」

兵士「・・・ですね」




カルデラ城の大図書館の館長デルタは歴史をたどることを趣味としていた。

アーシェは彼を訪ねた。彼はアーシェの父が自殺ではなく、将軍の職を退いて孤児院を始めたことも知っていたし、デシベル王の時代に行われたたくさんの歴史の改ざんについても研究していた。




デルタ「ああ、そうだ。

魔女モールスは公式にはアーシェ様に討伐されてたとされているが、

それはデシベル王が民衆に対して都合よくでっち上げた作り話に過ぎない。

アーシェ様は遠征の帰路、失踪されたらしい。

その犯人探しの際に、魔女モールスの挙動を怪しんだ王が彼女の処刑を命じた。

魔女モールスは処刑される予定であったが、

実は、処刑の前日に牢から逃げ出したらしい。

彼女は西へ逃げていったという記録が残っていたよ。」



アーシェ「・・・」



デルタ「・・・とまあこんなところだろうか、年よりの長い話に付き合ってくれて本当にありがとう」

アーシェ「こちらこそ貴重なお話を聞かせていただきまして」


デルタ「君は、若いのに歴史にとても詳しいようだ。特に100年前の国々の様子の話などはとても興味深かった。まるで100年前に生きていた人間のようだね。」


アーシェ「まさか・・・そんなわけありませんよ。」


デルタ「また、いつでも来なさい。近頃はわしの話に耳を傾ける若者などめっきり減ってしまって、わしの話は長くてつまらないという始末、ははは」


アーシェはデルタさんの顔を前々から知っているような気がしていた。100年前の大図書館の館長とそっくりだった。まさか本人なのだろうか・・・

デルタ「どうしたのかね?」

アーシェ「・・・いえ別に」



モールスが生きていたのならば、悪魔の研究に対しての何かの資料が残っている可能性が高いだろう

アーシェの知っているモールスは姑息で悪魔の研究しか興味のない人間だった。





キロは西へ西へ向かっていた。





キロは13匹の悪魔の魔力を心臓に宿しているはずなのに心臓に過度の痛みは感じなかった。

キロ「不思議と胸が痛くない」

使い魔「心臓の痛みは、キロさんの黒歴史ですものね」

キロ「本当に死ぬところだったから・・本当に痛かったからー」




キロ「新天地で今度こそ、仕事を見つけて普通にに暮らすんだ。」

使い魔「叶うといいですね」

キロ「・・・このやり取り何度目だろ」








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